~リストラの舞台裏~ 「私はこれで、部下を辞めさせました」 2

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ある秋の日。典型的サラリーマンのわたしは、上司からの命で会議室にいた。


会議が始まると、どうも普段のくだけた話し方をしない上司。

しかし、なかなか本題に入る様子はなく、当り障りのない話題をぽつり、

ぽつりと口にするだけ。どこか余所行きなその態度に、

集まった仲間たちが訝しく思い始めたときだった。

「最近、受注が減っているのはわかっているよな。現場を預けているオマエたちには、釈迦に説法みたいなもんだけど。それでな、ウチの特に若手たちが、過去と比較して仕事をしていないという話になった」
なんの話かと思えば、役員たちからまた嫌味を言われたらしい。当時は、

受注生産型の業務構造だった。それは会社ができた20年前からの慣習であり、

そのこと自体になんの疑問も持っていない。受注をしなければ、業務が発生しない

ことなど、酒を飲めば酔いが回ると同じくらいに理解していたのだ。

しかもその一ヶ月ほど前から、役員に命じられ、社内で大量生産していた

ミスプリントの副産物である裏紙を集め、4分の1に裁断した後、

数十枚をまとめて糊付けをし作成する、自家製メモ帳の量産業務を

仰せつかっていた。

つまりそれくらい、仕事の絶対量が不足していたのだ。またその話かと

うんざりした気分でいると、上司の口から信じられない

言葉が搾り出されるのを聞いた。


「ウチから50人。退職をさせることになった。リストラだ」


耳を疑った、というありきたりな表現をする気はない。たった4文字の言葉。

意識的にでもなければ、聞き間違えるほうが難しかった。

確かに彼は、リストラと言ったのだ。

続いて、明日に役員から具体的な方法のレクチャーがあることを告げられる。

早朝に会議室へ向かうことを命じられ、その場は解散となった。

リストラの具体的な方法のレクチャー。

「正しいリストラの仕方」というようなガイドブックでも配られるのだろうか。

煮え切らない気持ちのまま、翌日を迎えることになった。

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