不思議な朝

とても不思議な朝だった。
ちょっと長くなるけど、せっかくなので。
今朝早く、公園で後輩にギターを教えていると、お世辞にもきれいとは言えない服とチューハイの空き缶の入ったスーパーのビニール袋を持ったじいさんが話しかけてきた。
最初ちょっと警戒したけど、そのじいさんが言う事がつくづく魅力的なのでどんどん話に引き込まれてしまった。
じいさん:ちょっと弾いてみせてみろ
後輩:いや、今日初めてなんで、、無理です
じいさん:何を言っとるか、元から上手なものなんて期待しとらんわ。うまい演奏聴きたかったらレコード聴くわ。下手が努力することに魅力があるんや。それを聴きにきたんや。
僕:(なるほど)
後輩:じゃあちょっとだけ。(知ってるコードをひとつだけ鳴らしつづける)
じいさん:ええやないか(ご機嫌な様子)。ギターを弾く人は四畳半の家で孤独を音にするんや、だからギターはええんや。トランペットじゃそうはいかん。ギターが恋人なんや。女なんや。
僕:(たしかにそうかも。)
じいさん:ええか、東京は砂漠や。東京砂漠。こんな砂漠は一人では生きられへん。この砂漠で生きていくのは大変や。でもな、お前らみたいなんもおると思うと嬉しい。こういう公園はオアシスや、ピースや。人前でギターはなかなかよう弾かんもんや。何か弾いてくれ言われたら、お客さん楽しませないといかんからな。家でひいとるだけのやつはずるいやつや。
僕:(東京砂漠?なんなんだこのじいさん、、?)
じいさん:ええか、おまえら人のまねごとはすんな。自分でええと思うものを追求しろ。とことん追求しろ。それが時代ってもんや。3年ぐらいそうやって追求すれば、誰かがお前を認めるときがくるかもしれん。
僕:(ちょっと心をうたれる。。)
じいさん:わしもな、今68歳や。70歳まであと2年。これからどうやって生きようか、考えとるんや。。。
見た目ホームレスっぽい格好をしてるのに(笑)言葉のひとつひとつが的確で重みがあって、ユーモラスで、なんだか尊敬の念を抱いてしまった。そのあとじいさんは、それじゃあ、と言って握手をすると、去って行ったんだけど、しばらくするとホットの缶コーヒーを持って戻ってきた。
じいさん:おまえらの演奏に金を払わんとな、金も払わんやつにろくなやつはおらん
といって僕たちに一本ずつ缶コーヒーを手渡してくれた。ジョージアのエメラルドマウンテンだった。
じいさん:おれはこの青い色がおれは好きなんだ。この色は君たちだ、透き通っていて清々しい!ほらこれも青だ!(袋に入った氷結チューハイを見せてくる)
僕と後輩:い、いただきます!
それからじいさんは僕らの隣に腰掛け、自分が戦争最後の歳の1945年の春に生まれたこと、北海道にある某有名企業に就職し、当時はバシッとスーツを着て仕事をしていたこと、奥さんはミス三越だったが先立たれたということ(実際どうか知らないけどじいさんは確かに長身だし昔はかなりのイケメンだったっぽい)、さだまさしがいかに素晴らしいか、中野のブロードウェイの立ち飲み屋が下品だから嫌いだという愚痴(立って酒を飲むことが気に入らないらしい)など諸々語り続けた。
喋る度に飛び散る唾液と若干臭いが気になったものの(笑)僕たちは結局1時間ぐらいそのじいさんと話して最後は握手をして別れた。
たまにはギター片手に街にでるのもいいもんですよ。

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