出張整体師はみた! 社長さんと愛人さん

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社長と愛人・・・
甘美な響きのするこういった関係のお客様も
中にはいらっしゃします。

I社長がそうでございました。
お呼びいただくのは、三十歳代前半の美人の
パートナーさんのお部屋でございました。
社長さんは50歳代位の恰幅がよく、豪快でよく笑う
いかにも大物然としていながらもフランクな方でした。
施術後に満足いただいたあまり
「おー気持ちよかった。先生にだったら抱かれてもいいや。」
といった困った冗談をおっしゃって、小生の苦笑いと
パートナーさんの呆れ顔を楽しむ、シャレの効いた方でも
いらっしゃいます。
この社長には気に入っていただいて、とても良くして下さいました。
そのお二人にも印象深い出来事がございました。

その日ものようにお呼びいただいての施術でございました。
マンション入り口前にて送迎車の中で待機している秘書の方と
お互いに会釈をし、お部屋に伺いました。
今回は女性が先にとの事で、いつも通りお受けいただきました。
何時も通り無事に終了し、社長さんの番となりました。
パートナーの女性は、傍らにある座椅子に腰掛けて
こちらの世間話に加わったり、TVを御覧になられておりました。
ここまでは、いつも通りの普通の風景だったのですが、
少し時間が経った辺りで女性の方の口数が明らかに減って、
食い入るようにTV画面に見入っていらっしゃいます。
その内容は・・・・

ドキュメントタッチの物で、愛人生活の果てに別れた後、
産まれて引き取った子供と共に、これでもかというほどの
不運に翻弄されながらも、必死に生きている・・・
といった内容の物です。
社長さんは
「TV〇×のニュースの時間だろ。そっちに変えろよ。」
とおっしゃいました。
しかし、普段は素直にお聞きになる女性も今回は

「これ観てるから!」
と言って取り合いません。
さすがの社長さんも今回ばかりはこれ以上押さずに、
いつの間にか狸寝入りを決め込みました。

冷凍室のように凍りついた空気で静まり返った室内に、
相変わらず壮絶なドキュメントの音声が妙に響き渡っております。
聞こえていない体でいる関係ない小生まで
冷や汗とも脂汗ともつかないものが吹き出してきます。

残り数分を残して、体勢を変えていただいたときです。
小生は、もうすぐこの空気から解放されると思っておりましたが、
社長さんが思い出したように。
「□〇(近隣の地名)にうまいケーキみつけてなぁ。
そうだ先生にも食べてもらおう。」
と言って秘書の方に携帯電話で今すぐ買ってくるように
命令されました。
普段もお土産に色々いただいたり、出していただいたり
した事も少なくないのですが、今回はあまりにも唐突でございました。
一連のやりとりを普段はお優しいパートナーの女性が、
それまでに見たことのない冷ややかな目線で眺めていらっしゃいます。

固辞して一刻も早く撤収したいのが正直な気持ちでしたが、
このままの空気のままお二人になるのは何としても
避けたいであろう社長の目の奥からの訴えを振り切れるほど
冷徹にはなれませんでした。

秘書の方がケーキを届けて下さるより、施術終了の方が
早かったのですが、帰るわけにもいかずに荷まとめを
していました。社長はなんとか場をつなごうと届く
ケーキがいかにおいしいかを力説していらっしゃいます。
施術終了から10分ほどで、秘書の方がケーキを届けて
くださいました。

「(これでやっと帰れる)」

と安堵したのもつかの間、社長は秘書の方に
「なにしてんだ。皿とフォーク出さないと食べられないだろ!」

と、その場で食べる準備を指示していらっしゃいます。
今回はお土産ではなかったようです。いつもなら
言われるまでもなくご自分が細々と動かれる女性も今回は
失笑にも近い薄ら笑いを浮かべて御覧になっていらっしゃいます。

「ケーキには紅茶だろ!」
と紅茶まで入れていただいて、伸ばしに伸ばして
結局40分少々でお暇させていただきました。
社長さんは、まだ帰らないでほしそうでしたが、
さすがにこれ以上はもう協力しようがございません。
帰り際の社長さんの困ったような、何かを訴える目が
印象的でした。

その後、どういう展開があったのか・・・

想像するのはやめておきました。

ここという場面では女性は手強い。
方々からよく聞かれる事を、改めて勉強させていただきました。

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