アウトローの仕事

後編: アウトローの生活
 僕はかつてアウトローで生きていた。
 アウトローの暮らしは厳しい。が、刹那的には最高に楽しい。楽しいほうの写真がいくつか残っている。厳しいほうの写真は...あまり、いやぜんぜん残ってない。写真をとってる場合ではないからだ。新聞記事の切抜きとして残っているくらいだ。
 僕がアウトローの世界に足を踏み入れたのはひょんなことからだった。夜の六本木には不良外人が多いのは皆さんご存知だと思う。こいつらは夜な夜な酒場でトラブルを起こしているのだ。店のオーナーとしては頭の痛い問題だ。警察に頼んでもトラブルを処理することは出来ても未然に防ぐことは出来ない。そこで彼等を排除する人間が必要となる訳だ。私はとある機会からその格闘技の経験と体躯、そして英語力を買われてその筋にスカウトされた。日本人で上記三つの条件を揃えることが出来る人間は意外と少ないのである。そして、僕はあまり深く考えることなく、ある日を境にアウトローの世界の扉を開けてしまったのである。
「何かあったら解決しなければならない」そういう思いで夜の街を眺めるとまた違った風景にみえてくる。昨日までは自分とは無関係だった街のチンピラや不良外人などが急に近しい存在になってくる。また、自分自身が格闘技の訓練をしていると、街の酔客の中にも相当に強いやつがいるのではないかと想像を膨らましてしまうものだ。はじめてそのクラブに出向いたときには、最悪の事態を想定してファウルカップや防弾防刃ベストを着用して出かけた。いろいろと悪い噂を聞いていたからだ。ある種、決死の覚悟で出かけていったような気がする。
 実際やってみると、トラブルバスターの仕事も通常で言えばそんなに出動の回数は多くない。客層の悪いので有名なG.P.(仮名、ここは都内でも有数の不良外人のたまり場である。外資系企業の外人などはいなくて、兵隊とか不法入国者ばかりが集まってくる。)などでもないかぎり毎日誰かが暴れ回るというものではない。ただし、自分自身はいつトラブルが起きるかと身構えていて、余裕のない険しい表情をしていたのだろうと思う。
 そんなある日の深夜のこと、5-6人の若い男が集団で、まさに肩で風を切って店内に入ってきた。僕は最初から目を付けていて近くでマークしていた。しばらくすると案の定、ほかのグループともみ合いが始まり、僕はすぐにリーダー格とおぼしき男を後ろから片手で羽交い締めにして持ち上げ、そのまま店内を横切って外へ出ると、表に放りだした。僕に放り投げられた男は冷たい地面をころころと転がっていった。男が起き上がってみると、その放り出された男はある有名なアイドルグループの一人だったのである。彼は逆上して僕に挑みかかってきた。
「俺を誰だと思ってるんだ!俺はT(グループ名)のT.Y.だ!」といって目を剥いて凄んでくる。しかし、アイドループの名前を語ってもあまり怖くはないな。暴力団の「○○組だ!」と言うならともかく。僕は涼しい顔で「ここは楽しく遊ぶところだ。芸能人もカタギも関係ない。楽しく遊べないなら出ていってもらう。」と言った。彼は遠巻きに睨んでいたが、何を言っても通用しないと観念したか、今度は店のマネージャーのほうに直談判にいった。マネージャーは、店のなかでは二度と揉め事を起こさないという約束で再入店させた。僕の役割は放り出すことで、それに関しては治外法権だ。ただし、その後、そいつをどう処理するのかは僕の興味ではない。なにかあったら、今度はもっと遠くまで投げ飛ばすだけだ。
店内ですれ違うとTYは僕と目を合わさないようにしていた。この件はこれで一件落着と思っていたら、事件は思わぬ展開になっていったのである。つづく。

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アウトローの生活

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