ハイドさんには女が沢山いた。
globeのねーちゃんみたいな銀髪やらエステシャンやら。
全部遊びらしい。今思えば一人に依存するのが怖かったのだと思う。
多分、捨てられるということはもう絶対に嫌なのだ。
ナナオはいつの間にか彼のポールポジションをとる。
が、浮気は止まらない。
ラブレターがしょっちゅうドアに挟まってる。
ハイド「うお!エステシャンなんだよこれ。6000円のハンドクリームとかドアノブにブル下げてんじゃねえよ。な?ナナオ。こいつバカだぜ。おっかね~よ。」
ハイド「ナナオ、女なんてみんなバカだぜ。自分のことしか考えてない。ナナオはいーな。何も知らないから。」
ハイド「お前、オレを裏切ったら許さねえからな。」
ハイド「お前、オレの店でバイトしろ。」
ハイド「ほれ!お前の為にオニギリ作ってやったぞ!お前、から揚げ入ってんだぞwww喰えwww」
自分は浮気ばっかりするくせに。私を束縛する。
押入れに古臭い手紙隠し持ってるの知ってるぞ。
柄にもなくハイドが書いたラブレター。
箇条書きで質問が20個ぐらい書いてある。
好きな場所はどこ?
好きな食べ物は何?
好きな色は?
その質問に綺麗な女の字で
「好きな場所はハイド君の居る場所」
な~~~んて書いてあるやつ!
でも私は泣かないしヒステリーもしない。泣いたら他と一緒になって捨てられちゃう。
浮気なんてすればいい。古い女を何時までも思ってればいーじゃん。
絶対嫌だ。絶対。ずっと隣にいる。
ナナオも調理師学校に行く。ナナオもハイドみたいになる。
が、調理師の修行は想像を絶する激しさだった。。。
ハイド「しごかれてんな~ 笑 俺もよくフライパンで殴られたわ。そんなのに負けてんじゃねーぞ。オタマで殴り返せ」
ハイド「皿投げられたら軌道を読んで避けろよ 笑 そのうち怒られなくなるよ。皿は落としたら足の上に乗せて衝撃を抑えれば割れねえからよ。怒られるのが仕事なんだよ。負けるな」
ハイド「お前が悪くないなら俺がぶん殴りに行ってやるからよ。言えよ。負けんなよ。」
色々な女の陰は1年ぐらいしたら居なくなった。
ナナオはハイドの唯一の女だ。
そんなある日、仕事帰りにハイドの家に行った。
電気が付いてる。
ピンポンしても出てこない。
ムカついたからドアをドンドンしてやった。
不機嫌に窓から顔を出してハイドは言った
ハイド「帰れ」
ナナオ「。。。。うん」
翌日もキツイ仕事を終わらせてハイドの家に行った。
もう窓から顔も出してくれない。
とぼとぼ帰る。
3日目、ドアをドンドン叩いて泣いてやった。
ナナオ「なんで開けてくれないの??なんでよおおおお!!!」
ハイドが不機嫌に出てきた。
ハイド「うるせええ!こっちこい!おらぁ!」
駐車場に連れてかれた。
ハイド「もう終わりだ。うちにも来るな。」
ナナオ「なんでよおおお~~!なんでそうなんの??」
びーびー泣きつく私の肩をドンって押された。
ジャリの上に尻もちをついた。
立ち上がれない。
ジャリの上に突っ伏して泣いた。
人生最大級に人の前で泣いた。
ハイド「お前と俺は違うんだよ。全部。一緒にするな。」
ナナオ「ヤダヤダヤダ。だって好きなんだもん」
ハイド「今だからそう言ってられんだよ。3年してみろ!お前はオレが必要じゃなくなる。」
必要じゃ無くなるんだよ!
と怒鳴ってハイドが泣いた。
初めて泣いた。
腰が抜けた。
立てない。
ハイドは去って行った。「もう来んなよ」と小声で言った。
捨てられた。
今夜はジャリの上で寝るのか
ジャリの上で一晩過ごす勇気が無いのでフラフラしながら2時間ぐらいかけて家に戻った。
突然だ。。。思った。
でもシグナルは出てたんだろうな。
きっと彼の大嫌いな自分のことしか考えてない女にいつの間にかになってしまったのかな?なんでハイドは泣いたんだろう?
意味が分からない。
なんでアンタが泣くんだよ。
依存なんて言葉を当時は知らない。
幼稚な私は彼と自分を完全にリンクしていた。
そして自分の感情をコントロールする術を知らない。
泣くしか出来ない。ずーーーっと泣いていた。
仕事中も芋を剥きながら涙がポタポタ落ちた。
通勤の電車の中でも泣いてた。寝る間も惜しんで泣いてた。
気の強い私があまりにも憔悴してるもので先輩達は優しかった。
体重がどんどん減った。7kg落ちた。
ただでさえ体力ねえのに痩せこけてんじゃねえぞ!とサロンの後も持たれ
中にプラプラと持ち上げられたりした。
業務用サラミでケツを叩かれたりした。
包丁を研ぐ棒でケツを突かれたり。
霧吹きで知らぬまにケツをビショビショにされたりした。
その度、ふざけんなよwwwwなんでケツ集中攻撃なんだよwと笑っていた。
みんな私のケツがよっぽど好きだったんだろう。
でも涙は数時間置きに込み上げて、また泣きだす。
あんまりしつこく泣いてるもんで、ゴミ箱に入れられ蓋を〆られ
そこで泣いてろこのスカポンタン!と怒られた。
ナナオ19歳
ハイドと別れた後何人かとSEXしたりした。
したら好きになれるのかと思った。なれやしない。
名前も顔も思い出せない。
一人はちゃんと付き合った。別れて親友になった。まだ親友である。
親友になる彼が現れるまで2年間の暗黒史を刻む。
防御線を張らない一方的恋に破れた。
9999のダメージを受け、HPは0になる。
危うく自殺でもしようかと思った。
ミサコ「おい!お前マジやべーよ!!どうしちゃったんだよ!」
ナナオ「ナナオもう死にたいよ~。死にたい。え~んえ~~ん。」
ミサコ「お前なんでそんなに泣いてんだよ!お前の泣いてるとこなんか見たことねえよ!オレが一緒に住んでやっからよ!な?死ぬなよ!!!!」
ナナオ「ひーーほひーーーほ。ズベベベベ。みさ~~~こ~~~~」
仕事は続けなきゃ、頑張らなきゃ彼にもう一度会えない気がした。
が7kgダウンの私は体力が無く、ぶっ倒れる。
気が付いたら地下鉄の救護室で寝てた。
病院に行った。ストレスだと言われた。
子宮がぶっ壊れた。生理が半年止まる。
半年後恐ろしい量の出血をした。止めどない出血に恐怖を覚えた。
今も無理をすると同じ症状が出る。なので体調管理は大事だ。
仕事を辞めた。
何にも無い自分に気が付く。
自分が無い。
別れて2年後、ハイドの店に会いに行った。
彼は笑顔で出てきた。
ハイド「ナナオ、幾つになった?」
ナナオ「21歳だよ。もうすぐ22だよ。」
ハイド「あはは。わっけ~な。オレなんかもう30だよ。おっさんだよ。頑張れよ。負けるなよ。」
ナナオ「うん。」
数年後、
一度ハイドを見かけた。
相変わらず赤いカリブに乗ってた。
助手席には地味な女が座ってた。
あの綺麗な字の女の人かな。 と思った。
なので地味な女は大っ嫌いです。
オシマイ☆


