先生が「詩を書こう!」と言ったから ②

前話: 先生が「詩を書こう!」と言ったから ①
小学生3年生の僕が給食や昼休みのドッチボール以外に夢中だったことは、その当時の担任、オオツキ先生が提案してくれた「詩を書くこと」でした。

家に帰る前の10分間で課題に挑み、次の日には優秀者の発表。


シンプルなライフサイクルは、子供を魅了するルールとしては、十分だったかもしれません。他の同級生も、しばらくすれば、もう文句も言わず、黙々と書いていたものです。

そして自己愛が強く、あらゆる意味で「やらしい」ことばかり考えていた僕は、何とか先生に自分の詩を選んでもらうため、いくつか作戦を練りました。

僕の作戦

心の中の僕①
とにかく長文を書いて、一生懸命さをアピールする(努力・真面目作戦)
心の中の僕②
一人の友達を深彫りして、仲の良さを伝える(具体性・一点集中作戦)
心の中の僕③
その日あった喧嘩や諍いの一部始終を詳細に書いて、オトナに惨状を訴える(正義・ジャーナリズム作戦)
心の中の僕④
多少の嘘も交えながら、笑いをとる(コント・漫才作戦)

…など、日々読み上げられる同級生の詩を聞きながら、先生に選ばれる傾向を探りつつ詩を書き続けていました。


先生が好きな話のオチは何か。

先生が好きなフレーズはどんなものか。

先生はどんな「ショウガクセイ」が好きか。



常にニヤニヤしている10歳児。・・・不気味なもんです。
しかし、その甲斐あってか、何度か自分の詩が読み上げてもらえました。




「え・・・あれ、もしかして、これ、僕の・・・?」(ニヤニヤ)
「やめてよー!先生」(やめないで)
「ちょっとー!やだなー!はずかしーなー!」(白々しい)




演技も半分に、本当に嬉しかったのを覚えています。

自分の狙い通りのポイントでオトナが誉めてくれる!
これ以上の気持ちよさは、当時の僕にはなかったと思います。偉そうに言えば、子供ながらにオオツキ先生の琴線をつかんだ気でいたのかもしれません。

オトナはチョロい


結局のところ、当時の僕はオトナをなめていたのでしょう。特に教育実習を終えたばかりのオオツキ先生に対しては。

常に一生懸命で、感情豊か。休み時間に楽しく遊ぶ時も、大きな声で叱る時も、他の先生より全ての所作がおおげさでした。

その上、他のクラスではやらない「詩を書く」ということも提案してくれる。
何か大きなものに挑戦しようとしている。

そんなことが伝わってくるオオツキ先生が、僕は好きでした。


そして、僕の「やらしさ」は、オオツキ先生に好かれるショウガクセイを演じることに終始していったのです。






そのことが、少しだけほろ苦い思い出に繋がります。


続く。

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