白い机


少女時代、白い机にあこがれていた妻は、両親にせがんで真っ白い机を買ってもらった。決して裕福ではないことを感じながらも、生まれて初めて強烈なおねだりをした。

願いはかなった。夢心地で眩しく光る机を眺めた。

しかし、実際に使い始めると、白い机は汚れがつきやすく埃が浮き立った。傷があちこちにできて目立ち、すぐに傷だらけになった。

妻は想定とはずいぶん違うと思いつつも不満を口に出さず、高校を卒業するまで大切に使い続けた。

「白い机を買ったらあかん。必ず後悔するから」

妻と出合った頃にこの話を聞いてから、想定外のことが重なりうまくいかなかったときには、

「白い机のようだ」

と、僕は茶化した。

嫁の衝動買いを制するときにも、

「白い机になる」

常套句としてよく使う。

「モノは大切に使わなあかんから、無理して『これ!』っていう一点ものを買うと、それがはずれたときにたいへん。安いものでいいから、いろいろと品を変えられるもののほうがいい。わたしは子供の頃にこのことを勉強したんやよ」

妻は言う。

今では白い机は屋外に出されている。四半世紀を経て今もなお園芸用品の物置として大切に使われている。

著者の松本 晃一さんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。