コネで適当に決まった就職がその後の生き方を変えた その4

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異動、そしてまた異動

先輩たちと冗談をいいながら仕事をできるようになった。いつものようにコピー用紙の段ボールを抱えて運んでいると、バイヤーさんたちが手助けしてくれるようになった。面白い上司をいじって雑談できるようになった。そして気付けば、お茶出しの制度は廃止されていた。入社1年経つころには、確実に自分の居場所ができたと実感できるようになっていた。本社勤務になって9カ月のころだった。
そのころ、ガソリンスタンドを統括している部署で、事務の女性がふたり退職するという噂が出ていた。ひとりは私の同期の入社1年の女性だったけど、もうひとりはベテランでかなり仕事ができると評判の女性だったから、人づてに聞いて、他部署ながら、ああ、大変だなーと思っていた。火の粉?が突然私に降りかかってきた。私がその部署に異動することになった。ふたり辞めるのに、補充は私ひとり??
よく分からないぞと思いながらも辞令は辞令。正式に辞令が発表されて、掲示板に張り出されたときには、今までの部署のひとたちに「行っちゃうのー!?」と残念がってもらえて、そんなこと言ってもらえるくらい成長してたんだなあとうれしかった。
異動した先の業務は、ガソリンスタンドの売り上げの処理や伝票整理など、「私の仕事」というのがあった。忙しいのは五十日で、他の日は比較的のんびり、たまに暇過ぎる日もあるくらいだった。1カ月単位での仕事だったので、最初の1カ月は先輩に教わりながらこなして、2カ月目は自分でやりながら分からないところを先輩に聞いてこなして、3カ月目に入ってやっと新しい職場や仕事にも慣れてきたころだった。ちなみにこちらの部署も最初はお茶出しの業務があったが、私が異動してすぐになぜか廃止された。
今度は経理の出納係の女性の退職の噂が流れてきた。おまけに、入ったばかりの新入社員も辞めるらしい。出納係の人が辞めるなんて、大変だなーと、他部署のことだけど気にしていたら、また火の粉?が私に降りかかってきた。新しい部署でまだ3カ月しか経っていないのに、今度は経理へ。しかも、かなーり重要ポストの出納係にされてしまった。
出納係がなぜ重要かというと、単に現金(小切手を含む)を扱うからというだけなのだが、現金を扱うからこそ誰でもいいというわけではないようだった。コネで入社した私だから、素性が分かっていて信用できると思われたのかもしれない。
簿記も持ってない、経理ってどんな仕事をするのかも分からないまま、出納係の引き継ぎをすることになった。期間は2週間。マニュアルも作ってくれていたが、メモを取りながら、とにかく必死に仕事を覚えた。2週間で、聞ける人がいなくなってしまうのだから。
出納係のいちばんの業務は、交通費などの清算をしに来る人へ現金を渡すこと。出金伝票と領収書のチェックをして、きちんと書けていれば伝票を預かって現金を渡す。書き方が違うなど、不備があった場合は指摘して修正してきてもらわなくてはいけない。イヤな思いをさせないように指摘して、気持ちよく修正してきてもらうというのは、なかなか高度なコミュニケーション能力を必要とする。前任者はとても人当たりが柔らかい人で、本社の人たちみんな一目置いているような女性だった。果たして、私に勤まるのか?
入社していきなり経理だったら、厳しかったかもしれないが、なにしろホームセンター事業部もガソリンスタンドの事業部も渡り歩いた私だったので、他の部署の人たちの人柄などをなんとなく把握していた。それが功を奏した。出納係としての仕事を通して接する以前に交流があったのだから、信頼関係が築けている。だから、不備などの指摘もあまり抵抗なくできた。
2週間の引き継ぎが終わって、ひとりで任されるようになってしばらくは仕事をこなすので必死だった。でも、仕事に慣れてくると、前任者からそのまま引き継いだ机の中が、非常に非効率だと思い始めた。これとこれが関連があるのに、どうして別の引き出しに入っているんだろう? というようなことを多々感じるようになった。前任者は、机の中は上司も把握しているから移動させないでと言っていたけど、それは違うんじゃない? そしてあれこれと、効率的に業務ができるように変えていったら、なんか時間的に余裕ができてしまった。忙しい時期もあるけれど、そうでない時期は定時まで時間が余ってしまったりする。
自分は時間を持て余しているのに、隣のベテランの女性の先輩がやたら忙しそうなときがあったりする。あるとき、先輩に「何か手伝うことないですか?」と聞いてみたら、その先輩は「そんなこと言ってくれたの、酒井さんが初めて!」とものすごくびっくりしていた。え? 暇だから、忙しい人を手伝って当たり前なのでは? 私が経理に配属されるまでは、そういう感覚を持つ人がいなかったらしい。伝票入力など、誰にでもできる仕事なんてみんなで協力すればいいのにと、私なんかは思うのだけど。
先輩に言わせると、前任者はいつも忙しそうでほぼ毎日残業していたそうだ。私は月末は締めなくてはいけなかったから残業もあったけれど、それ以外は定時に帰れていた。人の手伝いをこなしても、定時に帰れていた。私には、残業ができる理由が分からなかった。同じ業務内容のはずなのに、人によって違ってくるんだなあと感じた。
私が所属した3カ所目の部署の経理も、最初はお茶出し制度あった。私が異動してしばらくするとなくなった。これは今でも私の中で謎。「お茶出しなんてやめよう!」と、声高く主張したことなどないはずなのに、無言の圧力をかけていたのか? まあ、自分が飲みたいというタイミングで飲むのが、いちばんだと思うけど。ちなみに、私はよく先輩に「紅茶でいい?」と聞かれて入れてもらっていたっけ。自分で入れろよ、私。
仕事をすることに慣れてきた私は、いよいよ貯まってきたお金の使い道を考えるようになっていった。

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コネで適当に決まった就職がその後の生き方を変えた その5

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