住所不定無職の旅人なのに結婚することが出来た話。③(完)ご両親の寛容さは偉大だ

前話: 住所不定無職の旅人なのに結婚することが出来た話。②いきなりの究極の選択

一時帰国


1年ぶりに日本に帰ってきたが、友人からは早速

「ずいぶん早い帰還だな」と冷やかされた。


しかし、そんなことよりまず彼女の両親へのご挨拶だ。

だが、着ていく服がない。


スーツなどは処分して持ち合わせておらず、今ある服は旅用のTシャツとぺらぺらの綿パンツだけだ。

靴もサンダルしかない。


一応黒でコーディネートしようと思い、黒い帽子に黒いTシャツ、黒い面パンツに黒のサンダルで決めてみた。



ご両親との初対面はむちゃくちゃ


お土産だけはと大きいお茶菓子を持って、彼女のご実家への向かう。


彼女は自分の両親に旅の途中だから今はたまたま服が持ち合わせてないと事前に伝えてくれたため、対して何も言われなかった。


ご両親にご挨拶をして、日帰りのつもりで来たにも関わらず、彼女は突然

「名古屋のおばあちゃんにもご挨拶にいかなくてはいけない」と言い始めた。


仕方なく、格安の夜行バスチケットをネットで探して、気付いたらすでに3泊もしていた。


・・・あれ?


Tシャツもパンツも替えを持ってきていない俺は3日目についに彼女の母から

「あんたたち、すっぱい!」と言われる始末。


「あんた」ではなく、気を使って「あんたたち」って言ってくれたところに優しさを感じる。


そしてお父さんので使ってないのがあるからと新しいTシャツとパンツを頂いた。


これはひどい。



その後4日目に名古屋まで夜行バスで移動し、彼女の祖母へのご挨拶を済ませるといよいよ入籍することとなった。


しかし、そもそも俺も彼女も旅に出る時住民票を抜いていたので、そろって住所不定無職の状態だ。



これで入籍って可能なのだろうか?



住所を入れると自動的に住民税と健康保険料の支払い義務が発生するので住所はいれたくない。

住民票を入れることなく新しい戸籍だけ作る等できるのだろうか?



彼女の実家がある田舎の市役所では前例がないため、かなり調べてくれた結果、、、可能だった。



素直に驚いた。



そして入籍。

証人欄には互いの友人が名を記入してくれた。


入籍後の夜、彼女のご実家で食事会をすることとなり、彼女のお兄さん夫妻も来て一緒に食事をするが、

「何もんだろうこいつ」

という吹き出しが頭の上に見えるような表情だった。



その後式は挙げず、カメラが趣味という友人の父親に頼み、和装姿で写真撮影会を函館で行い、そのまますぐに旅に再出発した。


今度は始めから二人旅として南北アメリカ大陸縦断に向かった。


新婚旅行?なのか新生活?なのかわからないが、それまでと同様一緒の旅生活に戻ったのだ。



結局その後丸1年旅を続け、南北アメリカ、ヨーロッパ、アフリカを旅して、心から旅への思いが満足したので予定より早く旅を切り上げ日本に帰国したのだった。



どうしてあの時結婚したのだろう?

まさかのタイミングで。



住所不定無職の旅人で収入0円生活なのに、どうして結婚できたのだろう?

きっと以下の全てだろう。


①互いの気持ち。

②互いの行動力。

③彼女の押し。

④一人で生きることへの寂しさ。

⑤昔頂いたK松先輩からの助言。

⑥彼女の両親の寛容さ。


いつか彼女からの視点でも書いてもらいたいなと思っている。



彼女はいつも

「誰と結婚しても一緒だったと思う。自分以外の人と合わせる努力が必要なのは。だから別にあの時結婚してなくても人生対して変わりないわよ」と話す。


出会いも結婚もタイミングだとは言うけど、自分的にはまさかのタイミングだった。

だが、こうやって振り返ってみるとやはり巡り合わせがあったのだろう。


今は2児の父。


自分の娘が住所不定無職の男を連れてきたらどんな気持ちになるかわからないが、とりあえずTシャツとパンツはプレゼントしようと思う。




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