ウィン・ロッキー・ウィン



映画「ロッキー」が僕にとってサクセスストーリーの原点となっている。

二十歳前後にロッキー、ロッキー2・3・4まで欠かさずに映画館に通いつめた僕は、完結編といわれたロッキー5はもちろんのこと、ロッキー・ザ・ファイナルの試写会のチケットを知人から手に入れると、当然のようにすべてを投げ出して会場へと急いだ。

プアーホワイトの象徴であったロッキー・バルボア。人見知りが激しいその恋人、エイドリアン。二人は決して平坦ではない道を屈折しながらも互いにないものを相手に与えつつ泣けるような人生を切り拓いていく。

僕はこのフィクションに熱くなる。しかし、

「『エイドリアン!』と叫ばないで」

現実主義者の妻は嘆く。


「わたしは一度もその映画を観たことはない」


それでもなお僕はロッキーに感情移入する。そして、定番のグレーのスウェットに着替えると、にわかに腕立て伏せを始めたり、生卵を飲み干したりする。フィラデルフィア美術館のロッキー・ステップを駆け上がるシーンを家の中でどたばたと騒ぎ立てて再現する。

エイドリアンが過労から余病を併発しつつも出産し、ようやく昏睡状態から覚醒したとき、ロッキーにささやき鼓舞したように、後ろ向きな気持ちに陥った僕を妻が奮起させる光景を独り想像して熱くなる。

「勝って。ロッキー、勝って」(Win, Rocky, Win)

僕は、夢中になるとほかのものが見えなくなる。映画に感化されたバーチャルな生活は日毎にエスカレートする。それは疲れ果てるか飽きるまで毎日続く。

ロッキー・ザ・ファイナルのリバイバルを、ファイナルに続くロッキー・ザ・ファイナル2を密やかに僕は今また待ち望んでいる。

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