雑誌のアートディレクションって何するの?

よく、「雑誌のアートディレクションって何するの?」
「本をデザインって、本のどこをデザインしてるの?」と聞かれるので、
少しお話してみたいと思います。

雑誌のアートディレクションと一口に言っても、それが果たして
何系の雑誌かによって、デザインもディレクションも変わってきます。
普通アートディレクターというと、大御所のおじさまだったり、
有名な事務所などがあり、それぞれの編集長との関わりによっても変わります。
なので、これはあくまでも私自身の場合です。

基本的にアートディレクターというのは、その本や雑誌のビジュアルを
すべてコントロールする人
のことを言います。

私がアートディレクションとデザインをしていたのは、
もう何年も前に終わってしまいましたが『QRANK』という日本映画雑誌でした。




この話の最後の方で書きましたが、独立してすぐ声をかけて頂いた仕事です。
アシスタント経験はありましたが、自分ではアートディレクションの経験が
ないまま、いきなり最初の撮影がオダギリジョーさんで、
ど緊張したことを覚えてます。
経験ないと言っても、現場に立ったらもう「プロ」ですから、
どぎまぎしててもしょうがないので、デキるふりをしました(笑)。

『QRANK』では、私は撮影にはほとんど立ち会い、
その後デザインへの落とし込みまでをひとりでやっていました。
雑誌丸ごと一冊を一人に任せるというのは、なかなかリスキーなはずですが、
信用して頂いてたんだと思います。
体力的には隔月だったので、相当きつかったですが、
そこは若さで乗り切りました。
白目は何度むいたかわかりませんが。

では実際にどういう風にディレクションしていたのか?
いくつかエピソードをお話してみたいと思います。

例えば「映画音楽」特集の号では、特集ページすべてに
音楽が聴こえてくるようなビジュアルにしたいと考えました。
全ての出演者(俳優、ミュージシャン)に、音符と遊んでいるようなポーズ、
表情を取ってもらい、背景にすべて同じトーンで別色の大判色紙を使い、
ビジュアルを作り込んでいきました。

出来上がりはこんなかんじ↓

ただこれは、自分の中では「出来上がりイメージ」があったものの、
それは誰にも見えてないわけなので、出て貰う方々に説明するのが
とってもむずかしかったです。
木村カエラさんの他に、ハナレグミさん、竹中直人さんなどもいたのですが、
現場での会話はこんなかんじでした。

あのー、音符がこう、指の間を舞っているかんじのイメージにしたいので、その音符と遊んでいるかんじのポーズで写真を撮りたいんですが・・・
竹中直人さん
ふーん・・・あのさ、マスクってつけたままでもいい?


竹中直人さんは結局マスクを付けたまま登場w
面白かったのでそのまま採用w

イメージが作りこみ系であればあるほど、やって頂く方に伝えるのが難しいです。
でもこの号はお陰でとても統一感のある、楽しい特集ページに出来たので
今でもとても気に入っています。

撮影は、特集、俳優さんの雰囲気に合わせてまずビジュアルを考え、
それに合うカメラマンを選び、ヘアメイク、スタイリングにも指示を出します。
カメラマンとロケハンをし、仕上がりのページ組みも意識しながら、
ビジュアルを作ります(雑誌全体としてのデザインや写真のバランスも
考えています)。

特集が「夢」で、柴咲コウさんをフィーチャーした際は、
夢の棲む場所、遊園地を貸し切り、女友達(男友達ではないところがポイント)と
遊びに来ているという設定で、1日かけて写真を撮りおろしました。
普段はインタビュアーも撮影からコミュニケーションを取るのですが、
リアルに追求したかったので、あえてすべての男性スタッフを遠ざけ、
女性カメラマンと私と柴咲さん3人だけで撮影をしました。
些細な事だと思うかもしれませんが、女性といるのか、男性といるのか、
どんな話をしながら撮っているのかなど、細かいことが俳優さんの表情に
現れるので、写真の出来をとても左右するからです。
このときはどうしても「女子といる雰囲気」の彼女の写真が欲しかったのです。
お陰で、のんびりした、ふんわりとスパイスの効いた素敵な写真が撮れました。

出来はこちら↓


柴咲さんはものすごく可愛くて、思っていたよりずっと
小さくて素敵なひとでした。女の私でも目が会うとドキドキしてしまう
眼力を持っていました。また私は内心ド緊張していたのですが、
やはり現場ではなんでもないフリをしていました。
しかしバレていたのかもしれません・・・
この表紙の写真は遊園地内の物置小屋で撮ったのですが
(なぜわざわざ物置小屋かは聞かないでください。
いい雰囲気の小屋だったのです!)
私もカメラマンさんも、これは表紙だ、と思って撮影していて、
ポラを見ていい出来だったのでウキウキしていたら

柴崎コウさん
いいの、撮れたのね?

とにっこり聞いてくれたので、やはりソワソワしていたのが
伝わってしまったのかなぁと思います。

過去の映画の「同窓会」を開いたこともありました。
「アイデン&ティティ」という日本映画なのですが、メンバーが濃いので、
それに負けない(?)突飛な設定の写真にしたいと考え、
秋葉原を1日かけてまわり、いろいろ迷った結果、
最終的にメイド美容室にしました(笑)。
しかも麻生久美子さんにメイド服まで着て頂き、
出演者の髪を洗って貰いました(笑)。
お陰で、恍惚とした出演者の面白い写真が撮れました。
撮られている出演者の方に楽しんで頂くことは非常に大切だなと思いました。

写真に出ますからね↓

特集としての統一感、ページをめくる度に物語があるかどうか、
読者に新鮮な驚き、感動を与えられるか・・・そんなことを意識しながら、
写真を選び、並びを決め、デザインをしていきます。
全くゼロのところからビジュアルを作り込み、
最終的に読者の手元に届くところまで意識しながらビジュアルを作り込む、
それがアートディレクション&デザインの仕事です。

アートディレクションをやっていて、とても面白かったことがあります。
絵や写真、小説などには、どうしてもその作者自身が投影されます。
闇を抱えている人、ひたすら純粋な人、情熱的な人・・・すべて作品に現れてしまうものです。面白いことに、アートディレクションでもそれが出てしまうのです。

自分では特に考えてないのですが、出来上がった雑誌を見ると、
「あぁ、これはどうしようもなく私だ」と思うときが何度もありました。
私のデザインをよく知っている人たちや友達は、やっぱり「トミーっぽい」と
口を揃えて言うのでした。不思議なかんじです。

実は、『QRANK』は以前大御所の男性アートディレクターさんがいたのですが、途中から女性ディレクターに変えようということで、私に変わったのです。
なので、編集部は変わってないし、出演している俳優さん達も変わってないんです。なのに、全く別の本のようです。写真も、同じカメラマンさんにお願いしたこともあるのに、これまた全く別のイメージです。不思議です。
興味ある方はググってみて下さい。

『QRANK』は合計2年くらいやらせて頂きましたが、すごく楽しかったです。
本当に人生の中でも貴重な体験をさせて貰えたと思います。
あのとき、あの年齢で、あのタイミングだったからこそ出来たと思っています。

今は関係者の方々に感謝の気持ちでいっぱいです。



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