大事な事はすべてパチスロから教わった(第10回ラスト)人に与え続ければいつかは返ってくる

前話: 大事な事はすべてパチスロから教わった(第9回)打たなければ負ける事は無い

僕が師匠と一緒にスロットを始めてから、はや2年が経った。

僕は、そろそろパチプロは引退しようと思っていた。

その理由は2つある。

1つは、やりたい事を見つけた事だ。

ある程度、お金も貯まり、やりたい事が出来るほどの資金が出来た。
“地元を離れ、自分のやりたい事をやろう"
と最近、思うようになったからだ。

別にパチプロをしている事が嫌になったわけじゃない。
毎日師匠と一緒に面白おかしくパチプロをすることはむしろ楽しい。

がしかし、僕は一生パチプロでいる事は考えられなかった。
今の年齢だと、他の同級生に比べれば、収入は多い方かもしれない。

しかし、僕が40歳、50歳になった時に、
おそらく周りの同級生に抜かれるはずだ。

パチプロをやっている以上、
僕がこれ以上収入が増える事はないが、
サラリーマンとして働いている人達は、
年齢とともに給料もあがっていく。

"今のままでずっとパチスロをやり続ける"
という選択肢は僕にはなかった。

やりたい事を見つけた。

これが最大の理由だ。



2つ目は、物理的な問題だ。

パチンコ店内はとにかくうるさい。

たくさんのパチンコ台やスロット台があり、
そのどれもが大音量に設定されている。

あれだけ大きな音量を毎日浴び続けて、
僕の耳が限界を迎えていたのである。

最近片方の耳が異常を訴えてきた。

ずっと耳鳴りがやまないのだ。

医者にも行ったが、毎日大きい音を聴き過ぎだそうだ。
そして、僕は鼓膜がもともと強くないらしく、
もうパチンコは辞めろと言われてしまった。

さらに、パチンコ店内は空気が悪い。
タバコの煙が充満しているからだ。

自分が昔吸っていた時は特に何とも思わなかったが、
最近健康に気を使うようになり、タバコを辞めた。

そのせいで、タバコが充満している環境に
いづらくなってしまったのだ。

師匠は鼓膜も強いし、タバコも吸う。

だから、全然苦でもなんでもないらしいが。

これが2つ目の理由だ。


だから、僕はパチプロを辞めようと思ったのだ。

師匠にその意向を伝えた時、師匠は何も言わずにただ、頷いた。

そして、僕は地元を離れる準備を進めた。

もちろん、もうスロットには行かなかった。

その間、何度か師匠の実家に電話をしたが、
何度かけても師匠は留守だった。

師匠はちょっと変わったところがあり、
この時代に携帯を持っていないのだ。

だから、いつも師匠に連絡をとるときは実家にかけるしかないのだ。


そして、師匠と結局連絡がつかないまま、出発の日を迎えた。

思えば師匠にはあまり恩返しが出来なかった…

地位も名誉も金もない、ただのニートだった僕に、
師匠がなぜ声をかけてくれたのかは、今でもわからなかった。

それでも、師匠はいつもどんな時も僕に協力してくれた。

だから、最後ぐらい師匠に別れを告げたかったのだが、
しょうがなかった。

どうしても師匠に一言お礼が言いたかったので、
僕は師匠の自宅まで行った。

師匠は留守だった…

いつも僕らが拠点にしていたパチンコ店にも行ってみたが、
師匠の姿はなかった。

もうどうしようもなかったので、僕は出発することにした。

一度自宅に帰り、荷物をとって、最寄り駅まで向かった。


その途中


急に携帯電話が鳴った。


師匠の実家からの着信だった。


川田君
今どこにいる?
久しぶり!駅に向かってるけど?
川田君
わかった。じゃあちょっと駅で待ってて!
了解!


すぐに電話が切れた。

いきなりなので、びっくりしたが、
最後に師匠と会えることが僕は嬉しかった。


そして、駅に着いてしばらくすると、師匠がやってきた。

川田君
いやぁ、ごめんごめん。
ちょっと手間取ってさ!
何してたの?
川田君
んーまぁちょっとね(笑)
ふーん。まぁいいけど(笑)

とにかく最後に会えて良かったよ!
ありがとう!
川田君
おいおい、別に最後じゃないだろ(笑)

また三田君が地元に帰ってきた時にでも会えるさ!
そうだった(笑)

別に同じ日本だしね(笑)
川田君
そうそう!

向こうにいっても頑張ってや!
ありがとう!

2年間お世話になりました。
川田君
いいよいいよ!
俺も楽しかったし。

じゃあ今日で三田君は川田塾卒業だな!

おめでとう!!
ありがとう!

卒業か。

ちょっと寂しいけど今まで本当にありがとう!
川田君
はいはい、もう分かったから、そろそろ行きなよ(笑)
そうだね!
そろそろ行くよ!

川田君も元気でね!

バイバイ!!
川田君
おう、そっちこそ元気で!

バイバイ!!


そう言って僕らは別れた。

別れ際に川田君が1通の手紙をくれた。

『電車の中ででもいいから読んでくれ』
だそうだ。



電車に乗った僕は、その手紙を開いた。

----------------------------------手紙ココカラ----------------------------------

三田君へ

あれは2年前ぐらいだったかなぁ、
三田君と行動を共にするようになったのは。

あの頃は俺はとにかく孤独で、友達が欲しかったんだよ。

ほら、パチスロとかって結構孤独じゃない?

そりゃあパチンコ店には店員さんもいてお客さんもいて、
常連さんとかもいるけど、それと友達って違うでしょ?

だから高校時代の同級生だった三田君に声をかけたんだよ。

三田君はニートだったでしょ?
しかも当時はやりたい事もなかった。

だから俺にとっては好都合だったんだよ。
仕事をしている人は、パチプロなんかできないからね。

それが三田君を弟子にした理由。

三田君は俺が何で優しくしてくれるか、
いつも疑問そうにしていたけど、
俺も三田君から得るものはたくさんあったんだよ。

だから、別に疑問に思わなくても良かったんだけど(笑)

正直、三田君が最初にパチプロ辞めるって言い出した時は、
ショックだった。

俺にとって三田君と過ごした2年間はとにかく楽しかったんだ。

それまで自分一人で戦ってきたんだけど、
やっぱりパートナーがいると強くなれるってのは本当みたい。

実際、俺も三田君と行動するようになって、収入が増えたしね。

だから、三田君には本当は辞めて欲しくなかった。

でも、最初に俺が三田君を弟子にとったときから、覚悟はしてたんだ。

もし三田君がこれから先、何かやりたい事を見つけた時は、
応援してやろうって。

それでも、なかなかすぐに大人の対応がとれなくて、
しばらく三田君からの連絡を無視してたんだよ。ごめん。

でもやっぱり最後ぐらいはちゃんと笑顔で
見送ってやらないといけないと思ったんだ。

ふがいない師匠をお許し下さい。

最後に、三田君に伝えておきたいことがあるので、書いておきます。

恐らくこれが、師匠として、最後の教えになると思います。

よく覚えておいてね!

俺が伝えたい事は2つある。


まず1つ目

僕は三田君にたくさんの知識やテクニックを教えたと思う。
その中には、スロット以外でも使えるような知識がたくさんあったと思う。

それを今後の人生にも生かして欲しい。

物事というのは、すべて単体で考えてはいけない

すべては繋がっている


物事を点でしか見れない人は、優秀な人間にはなれない。

逆に、物事を点ではなく線としてとらえる事が出来る人は、
大きく羽ばたいていくだろう。

目の前にある事だけにとらわれてはいけない。
そうではなく、もっと客観的に大きい視野を持って物事を見て欲しい。

今はわからなくてもいずれ三田君も分かるようになると思う。
むしろ三田君には、それだけの知識とテクニックが備わっているはずだ。

後は、三田君の意識次第だ。


そして、2つ目

俺が三田君に優しくしている要因にもなっているけど。

自分の持っている知識やテクニックはどんどん人に教えろ
ということ。

実は俺も最初、師匠の元でスロットを教わっていた時は、
教わった知識は絶対に人に教えないようにしていた。

だって、教えたらみんな勝てるようになってしまうだろ?
そしたら面白くないじゃないか。

でもある時、気づいたんだ。

一人でやるより、協力者がいた方が効率がいいなぁって。

実際、俺は三田君と行動するようになって利益がかなり増えた。
かと言って、労働力が増えたわけでもない。

むしろデータ収集は分担できるようになったし、
分析についても二人で話合うことが出来るようになった。

人はやっぱり一人で戦うよりみんなで戦う方が
より強くなれると思った。

漫画ワンピースだってそうだろ?

一人一人役割分担があって、得意なことが違う。
戦いが得意なやつもいれば、頭がいいやつもいる。

それぞれが、それぞれの欠点を補いあって、
麦わら海賊団という強い組織が成り立っている。

ルフィ一人の力では到底できないような事も、
みんなで協力すれば達成することが出来る。

世界政府のような大きな力にだって立ち向かうことが出来るんだ。

だからこれから困った時は、ワンピースを思い出せばいい。

困ったなら誰かに協力してもらえばいい。

自分が持っている知識やテクニックを自分から教えてあげれば、
相手も協力してくれる。

だから、俺から教わった知識は、また誰かに教えてやって欲しい。

そうすれば三田君は今まで以上にすごい人物になれるはずだ。

俺の師匠もそうやって成功していった。

人にはどんどん与え続けろ!!

そうすればいずれ何倍にもなって返ってくる。

自分が育てた弟子の中でたった一人だけでも大成功すれば、
それだけですべて返ってくる。

だから出し惜しみをしないでたくさんの知識を与え続けるんだ!

そうすれば、自然に味方はついてくるもんだ。


これが、2つ目の教えだ。


三田君には、言った事がなかったが、
実は俺もやりたい事があるんだ。

でもそれにはかなりの額のお金がいる。

でもそれも、あと1年程で貯まりそうなんだ。

それが貯まれば、俺もパチプロは辞めるつもりだ。

だから一足先に三田君には成功して欲しい。

ちょっと長くなってしまったけど、
これぐらいにしておこうと思う。

2年間本当にありがとう。

そしてお疲れ様!


川田裕貴

----------------------------------手紙ココマデ----------------------------------



電車の中で涙が止まらなかった...

今までの人生で、
いや、
これからの人生の中でも、
これほど僕に優しくしてくれる人がいるとは到底思えない。

僕が川田君に何かをしてあげたわけでもないのに、
川田君は僕に色々なものを教えてくれた。

最後の最後まで、川田君は与え続けてくれた

今日僕がいくら探しても川田君が見つからなかったのは、
この手紙を書いていたからに違いない。


僕は大事な事を”パチスロ”という意外なものから教わった。
意外なところに人生で役に立つような事が眠っているもんだ。

まだ自分の人生は先が見えない。

でも、僕はそれでいいと思っている。

だって、結末がわかっているサスペンスほどつまらないものはないだろ?
負けるとわかっている勝負をするのだって、つまらない。

先が見えないからこそ人生は楽しい。

僕は、人生はギャンブルみたいなものだと思っている。

だけど、人生で勝つ為に、その確率をあげることは出来るはずだ。
スロットのように、自分の中の機械割を少しでもあげる努力をして、
長い目で見て、成功したなら、上出来じゃないか?

これから、僕は師匠の教えをどんどん誰かに伝えていくだろう。

師匠からは、スロット以外でも使える知識をたくさん教わった。
だから僕も誰かに与え続けていこうと思う。

一人では出来ない事も、誰かと協力してやれば、
きっと出来るはずだ。

そしてその力が大きくなり、日本全体を巻き込み、
世界を変えていけるかもしれない。

少し、話が大きくなり過ぎたが、

僕は、

"この世界がもっとよくなって欲しい"

と心から思うようになった。


でも今の僕は無力だ。

それでも、今自分が持っている知識やテクニックが、
誰かの役に立てるのなら、僕は活動し続けようと思う。

そして、いつか大きな力を手に入れた時に、
師匠にとびっきりの恩返しをするつもりだ。


その時には、地元に帰って、
師匠と一緒にスロットを打ちたいと思う。


その際は、労働としてではなく、娯楽として(笑)





              三田サンジ

<追伸>

最後までお読みいただき、ありがとうございました。

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