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14/3/11

キャベツの千切りなんてその辺の道端の雑草と同じだ!と思い、食べれなかった僕に父がかけてくれた魔法の言葉。

Image by Olia Gozha





何故だろう。子供というのは本当に

野菜嫌いが多い。

まるで誰かに教わったかのように

野菜嫌いが多い。


そして僕も例に違わずその一人だった。










小学生の頃だ。

僕は他の子に比べたら割と

なんでも食べれる方だったが

それでも一つだけ、

食べれないものがあった。







キャベツの千切りである。

でで〜ん(効果音)





不思議なことに、

キャベツが嫌いなのではなく

千切りにするとダメなのである。




もろに草の味がするのだ。

あの噛み締めるときの食感と香りが

その辺の道端の雑草と同じ様なものだと

感じていた。




母にそのことを伝えると、

母はにっこり笑ってこう言った。













道端に咲く一輪の花はとても綺麗じゃないの。







母は人の話を

まともに聴いてくれないのだろうか

メルヘンにもほどがある。

僕が伝えたいのはキャベツの話である。

そのまま我が家の軽自動車で

ネバ○ランドでもなんでも行けばいいのだと心底思った。






その時、ガラガラっと戸を開けて

台所に父が入ってきた。

糊の匂いとタバコの臭いが

混じった父の身体はいまでも鮮明に

記憶にある。


父は自営業で襖屋を営んでいた。

営業で市内を廻り、襖の張替えの

仕事を見つけてきては、自宅の一室で

黙々と作業を行っていた。

典型的な職人気質な人で、

無愛想で、無口だった。


でも、時折見る父の仕事中の後ろ姿が

かっこ良くて尊敬していた。








そんな父が珍しく、話題に入ってきた。





「どうした正治。キャベツ食べれないのか?」





僕はうん。と頷いた。


だって、道端の雑草みたいな味がするんだもん。マズいよ〜。どうしたら食べれるの?



すると父は言った。





















マインドコントロールだ。

でで〜ん(効果音)






小学生の僕にはとても理解し難い

マインドコントロールという言葉は

魔法の言葉に聞こえた。

父がハリー○ッターを読んでいるとは

知らなかった!と幼心で感心した。




それだけ言うと、

父はそのまま出かけていった。

その時の後ろ姿が記憶の上では

一番かっこ良く見えたと思う。








それからというもの、

僕はキャベツの千切りを食べる時



マインドコントロール!

マインドコントロール!

マインドコントロール!…

と、呪文を唱えながら

キャベツを食べた。

不思議とマズくなく、

食べれるようになった。




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