ど田舎にできた高校アメフト部がたった2年で関西大会に出た話(14.身をもって抗議する15.怪我を恐れるな)
⒕身をもって抗議する
生徒会も決着して2年生の2月に修学旅行に行くことになっていた。北海道、ニセコ高原への3泊4日のスキー旅行。三木高校では、いままで広島、長崎、東京と観光中心の修学旅行を行ってきたが、体験を通じてもっと思い出になる旅行をということで、今年からスキー旅行になった。
僕も最初は、この旅行をとても楽しみにしていた。
ところが、あることをきっかけに、急に冷めてしまった。
スキー旅行にいくことが発表されてから、いつしかクラスは、
「スキーウエアをどうするとか、どこに買いにいくとか」
という話題で持ちきりになった。中には
「修学旅行前に、練習のために北海道までスキーに行く」といい出した者が、数人いた。
そんな話を横から聞いていて、僕は思った。
(こいつら、あほか…)
修学旅行は、ファッションショーか。なんで、新しい服を買わなあかんのや。なんでスキーの練習に行かなあかんのや。
そんなことを考えていると、僕はだんだんと腹がたってきた。
そしてついに
「先生、俺なあ、修学旅行かへんわ」
と担任の大橋先生にいってしまった。
大橋先生は、突然の出来事に鳩が豆鉄砲をくらったような顔をした。
それから大変なことになった。
「万が修学旅行かへんてゆうてるらしいで」
校内にはあっという間に波紋が広がった。
次の日、僕は職員室に呼び出された。いわれた時刻に職員室に入っていくと、そこには、担任の大橋先生と、学年主任のL先生が待ち構えていた。
「僕よ。なんでお前ほどの男がそんな訳の分からんこというんや」
主任のL先生は僕を自分の前に座らせて不思議そうに尋ねた。
「先生、訳の分からんことちゃうで。ちゃんと訳があるんや」
僕がそう答えると
「そうか。ほな訳をゆうてみい」
L先生は僕の顔を覗き込んだ。
「先生、修学旅行の目的は何や」
逆に僕が先生に質問した。
「そやなあ。みんなで一緒に旅行にいっていい思い出を作ることかな」
「それやったら、みんなが参加しやすいようにせなあかんのと違うんか」
「そりゃ、そのとおりや」
「そうやろ」
「でもなあ、このままやったら、いやな思いをして参加せなあかんやつもおると思うで」
「なんでや」
先生は意味が分からないという顔をして尋ねた。
「先生は、クラスのみんながスキーウエアをどうする。早よ買いにいかなあかん。練習をしにスキー場へいかなあかん。といっているのを知っとるか」
「いや、知らん」
「ファッションショーと勘違いしとる。金持ちは、ええけど、貧乏人はかわいそうや」
「せっかくの旅行にひけめを感じながら行かなあかんやつも出てくるんやで」
僕は語気を強めた。
それを聞いて二人の先生は、困った顔をした。
が、しばらく間を置いて
「お前の考えは分かった。でも考え直してくれ」
という言葉を繰り返しただけだった。
「先生、悪いけど、俺の考えは変らんわ。他人の気持ちが分からんような金持ちは好かん」
僕は、そういうと席を立った。
僕が職員室から帰ってくると、Xが心配して待っていた。
「お前の気持ちもわかるけど、お前が行かへんかったら寂しいやん。一緒にいって楽しもうな」
Xは僕を誘った。
Xは、体は大きいが、意外に人に心配りができた。本当は、こいつらと一緒に行ったら楽しいやろうなと思いながも、僕はこの旅行自体筋が通らん、と思っていた。
「すまん。俺は行かれへん」
僕は申し訳ないと思いながらも、誘いを断った。
その後、こっそりと担任と学年主任の先生が僕の自宅を訪れていた。
僕が帰宅するなり母親がいった。
「今日なあ、先生が二人来たってな。お宅の息子さんが、修学旅行に行かないといっている。経済的な理由でお母さんが行くなとおっっしゃてるんですか。とゆうてねん」
「それでな。そんなことはないです。でもあの子が、そうゆうてるんやったら、よっぽどの理由があるんやから、あの子のいゆようにしてください。とゆうたったで」
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