【2】大学卒業後、ろくに就職もせずにカケモチでしていたバイトを辞めて7日間だけの旅に出たら、人生が少しだけ明るくなった話。

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2012年7月1日。僕はとうとう無職になった。

 放浪。自分にとっては全く慣れない響きである。

 僕にとっての「放浪者」とは、とてもワイルドで社交的で、何事にも捉われない人々の総称だった。 僕にはその何一つ、兼ね備えられていなかったのだ。内向的でコミュ症、八方美人を装い何かあるとすぐご機嫌伺いを始める。それに加えて、大卒で借金を数百万抱えて卒業し、アルバイトでなんとか生計を立てていたものの、そのバイトさえ辞めてしまったのである。絵に描いたようなクズだ。

 まるで他人事かのように、笑いが出てきた。支度の終わった部屋で少しだけ、声を出して笑った。

          

 午前11時29分。天気はあいにくの雨。

 出発の時。誰に見送られるでもなく、荷物に詰めた2日分の荷物と、少しだけ奮発して購入したジェットヘルメットをかぶり、西へ向かう。


1日目:いざ浜松市へ

 三島市を出発して約1時間半。まずは静岡市に到着する。

            

 夏前でいくら暖かいと言えども、体に打ち付ける雨粒はスクーターの速度もあいまり、僕の体温を無情にも減らした。ナビ代わりに使っていたiphoneも、防水に不備があり、電源が飛んだ。まず、半袖短パンにクロックスという自分の軽装を呪った。笑

    

 雨でも傘をささない。突然のハプニングも当然のように受け入れて、それすら楽しんでしまう。僕はそんな人に憧れていた。だから僕にとってこの雨は、恵みの雨でもあった。喜んで雨に打たれる事にした。案の定、体調が狂った。

 全ては気の持ちよう。肌に打ち付ける雨粒をひたすら全部ウエルカムしていたら、いつの間にか雲もどこかへ消え去って、青空が顔を覗かせる。なんだか、大きな「なにか」に歓迎されているような気分だった。頭の中が相当お花畑だったように思う。

     

 天気に歓迎される中で、僕には会わなければならない人がいた。大学時代の友人、Kくん。彼も人生の岐路に立たされていた。大学を卒業して、大手の広告会社に就職したものの、自分の本当にやりたい事をまだ諦めきれずにいた。浜松の温泉に浸かりながら、将来について語り合った。

 時期が来たらリクルートスーツに身を包んで就活をして、就職して。一生、会社員として人生を過ごす事に意味を見出せない。僕たちの意見は共通していて、彼は具体的な目標を持っていた。

お笑い芸人になる事。


 自分のやりたい事をやって、自分にとってエキサイティングな人生を送る事。

数年後、お互いに少しでも目標に近づけた状態での再会を誓い、彼は仕事に向かった。部屋を出て行った後に、小さな声で「ありがとう」とつぶやいて僕も彼の部屋を出て、さらに西へと向かった。


2日目:どこまで行こう?


2日目の明確な目的地は、まったく決まっていなかった。

1日にスクーターを運転できる距離は、自分の場合は150km程度。僕は、まだ一度も訪れた事の無い、名古屋を次の目的地に選んだ。

          

この旅で、密かに自分で決めていたルール、「ゲストハウスに泊まる」。早速愛知県内に突入したのち、ネットカフェで「名古屋 ゲストハウス」と検索すると、音速別荘という、なかなかサイケな宿を発見。他のゲストハウスのページも調べてみる。、、、、

ぼく
うん!決めた!ここが一番ぶっとんでる!


勇気を振り絞って宿に電話をかける。。。ドミトリー空いてた!

ゲストハウスの場合、個室の他に二段ベッドが一室の中にいくつも入れてある部屋があり、宿泊者はそのベットの上を自分のスペースとして使うことが出来るのである。

期待と不安が頭の中でごっちゃごっちゃになりながら、スクーターを走らせた。


つ、ついた。。オーナーさんに案内され、恐る恐る部屋の中に入る。
宿泊料金を払い、自分の部屋に上がろうとすると、

オーナーさん
今さー、餃子パーティやってんだけど一緒に食べない?
ぼく
(えっ?!いきなり?!)
俺混じっていいんですか?!ぜひ!

 突然のお誘い。見ず知らずの輩をいきなり、餃子パーティーにまじらせてくれる。このフリーダムな感じに僕は一発で心を奪われた。そしていきなり、台湾人、韓国人のいる中に放り込まれたのである。

 受動的に生きていたら絶対に会う事の無い人達と僕は今、膝を突き合わせて餃子(あんまり美味しくなかった)を食べている。なんとも、面白い瞬間だった。

 兵役が終わって日本で学生をしている台湾人の男の子。度が好きで、全国のゲストハウスを周りながら、その場所その場所でアルバイトして生計をたてる沖縄好きの女の子。ひたすらPCの中に、撮りためた元奥さんの画像をセクシーだろ〜?セクシーだろ〜?と見せつけてくるブラジル人滞在者。まさにカオスだった。

 僕はひとまず、就職したくなくて、7月から自衛隊に入るプー太郎というキャラを即座に設定し、これからの出会いに期待と希望を膨らませた。


 旅人は、寛容だ。

相手のバックグラウンドなんてまるで気にしちゃいない。興味すらない。

そんな彼らが一番興味があるのは、今、あなたが何をして楽しんでいるか、ぐらいだと思った。


 どこの出身でどこの学校を出てどんな仕事をして兄弟がいて年収がいくらで就職先はどこで、、、

僕が聞かれられ飽きたワードだ。彼らはそんな事にはまったく興味がなかった。人生の主役として、自分の人生を、自分だけのために楽しんでいた。

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 義務教育を経て社会の荒波に揉まれ、数十年ローンで家を買い、死ぬまでお金を払い続ける。定年退職して改めて、第二の人生を楽しみ始める。そんな僕のステレオタイプを見事ぶち壊しながら、人生を楽しんでいる人たちの姿がそこにあった。

 部屋に登る階段の途中で、「俺はニューヨーカーだぜ!」と元気に話してくれた男性との1枚。

 いつの間にか、僕の心の中には、「恥ずかしい」「嫌われたらどうしよう」「知らない人と話すことが強い」そんなワードは消え去り、興味の方が勝っていた。

 1Fのエントランスに、旅行者が誰でも交流できるスペースがあったので、部屋に荷物を置きに上がって、興味の赴くまま、滞在者と交流を図ってみる事にした。


 荷物を置き、1Fに降りるとまた、僕の典型的な石頭をかち割るような女性との出会いが待っていた。


まだまだ旅は続く。


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【3】大学卒業後、ろくに就職もせずにカケモチでしていたバイトを辞めて7日間だけの旅に出たら、人生が少しだけ明るくなった話。

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