強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話

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また、休みの日にはオヤジ秘伝の授業が繰り広げられます。


オヤジ「それでは、いまから『アポロ13』の上映会を始める」


というように彼が撮り貯めた映像教材を使って、様々な視点を3兄弟に出会わせようとする訳です。


・アポロ計画というのが当時のアメリカにとってどんな意味を持ちえたか

・そもそもアポロ計画の背景にあったソビエトとの冷戦構造とは何か

・アポロ計画に使われていたコンピューターテクノロジーは今日どこまで発展しているか


という具合に、映像を見せる前後や途中で、オヤジの授業が繰り広げられ、物事の見方を教え込んでいくのです。この「視点」というのが特に重要で、結局「○○の事件があった」とか「この偉業は○○が達成した」という知識ではなく、その知識を学ぶことを通して、新しい物事の見方や捉え方ができるようになることに意味があるんだ、ということを子どもながらに実感していきます。勉強の目的は知識を得ることではないということをオヤジは伝えたかったのだろうなぁ。

これは子どもにとって意外に大きな発見です。自分にとって「別に興味はない」とか「知りたくもない」と感じていたことでも、「また新しい視点が得られるかもしれない」という期待をもてるようになるからです。

こうして、NHKや古めかしいタイトルの映画を見ることにワクワクし、また見たい!と楽しみになるようになりました。

が!

もちろん僕たち3兄弟だって一筋縄にはいきません。
NHKよりも映画よりも面白いものがこの世にはある!!



そうテレビゲームにバラエティ番組!!
こうした悪魔の誘惑に対して、オヤジはいかに対抗したのか!?






頭脳ギャンブルで子どもを育てるオヤジの手法





ホーツキ3兄弟も当然人の子。テレビゲーム(FFとか鉄拳とか)や
バラエティ番組(とんねるずとかダウンタウンとか)に
暇さえあれば夢中になってる訳ですよ、ええ。


しかしそうした状況はオヤジにとっては都合が良くありません。
なんとかして、3兄弟の無駄な時間を有意義な時間に変えなければ!
何らかの手段を講じなければ!


おそらくこの問題は多くの親が直面する問題。
勉強させたいし、本を読ませたいし、っていうか宿題しろ!って話です。
でもそんな親の期待など見事に裏切ってみせるのが子どもの習性。
暇さえあればゲーム!テレビ!ゲーム!テレビ!



そこでオヤジがとった作戦。

それは・・・



3兄弟を頭脳ギャンブルにはめて育てる!!(マジ)



トランプでいえば、ブラックジャック、ポーカー、ナポレオン。
麻雀は必殺技で、細かくいえば将棋や囲碁など。


こうした頭脳ゲームは確かに面白い。そして頭も鍛えられる。
ただ、テレビやゲームの代わりにそればかり夢中になっても仕方がありません。
そういう意味でオヤジの作戦は非常に巧妙でした。


とりあえず小学校低学年のときは、オヤジがわざと負けながらゲームの面白さや
勝利の醍醐味を味合わせ、徐々に頭脳ギャンブルの世界に誘導していきます。
そして頃合を計ってオヤジの本領を発揮。
じわじわと3兄弟を負かし込んでいきます。



「すいません、負けました。でもこの500円はちょっといま手持ちがないんですが・・・」

オヤジ「フフ。現金で払えなければ、本を読んで返すか家事を手伝うかだな。」



そう!子どもはお金で釣る作戦パート2!!!



さらにこれがきめ細かく仕組まれていて


・皿洗い:100円
・掃除機:50円
・ゴミ捨て:30円
・犬の散歩:30円


家事の報酬どんだけ安いんだと。
犬の散歩は誰にやらせる気なんだと。



という訳で本やマンガ、あるいは映画を鑑賞して借金をせっせと払うことになるのです。今にして思えば素直によくやっていたなーとも思いますが、裏話をするとさらに巧妙な手口が隠されていました。




伝家の宝刀【イカサマ】!!




例えば麻雀ではオヤジのやりたい放題だったようです。相手はしょせん小学生。自分の手作りに夢中な3兄弟を横目にしれっと牌を変えて手作りしてるんですから、そりゃあ勝てる訳ありません。そんな感じで、時に勝たせて小遣いをやり、ここぞというときにはイカサマで負かし込んで家庭学習包囲網を築いていくのです。


ちなみにオヤジにいわせると、こうしたギャンブルはただ本や映画を鑑賞させるためだけにやっていたのではないというのです。



今オヤジ「おお、ああいう頭脳ゲーム、特に麻雀はアルゴリズムを鍛えるうってつけのトレーニングなんだぁ」



アルゴリズムとは、あるルール設定において「こうなればこうなる」という論理的思考力のこと。具体的には数学やプログラミングなどの分野で問われる能力です。実際、3兄弟ともに数学は得意教科になりましたし、2人の弟は現在システムエンジニアとして職を得ていたりします。




今思い返せば、こうしたゲーム性を取り入れて家庭教育を推進する方法は、非常にうまい手法だなと思います。最近ではゲームの仕組みを学習に取り入れた「ゲーミフィケーション」という手法に注目が集まっていますが、まさにそのアナログ版。



無理矢理「やれ!」といっても子どもが動くはずはありません。自発的に子どもが勉強に取り組むようになるには色々な『仕掛け』を工夫する必要があるのだと思います。オヤジは兄弟の性格や志向性を見極めた上で、ギャンブルや金銭的インセンティブを取り入れたのかなと。


もちろん「お金で子どもを釣る」というのは社会的にほめられたものではないですが、きっかけとして戦略的に用いつつ、徐々に知的好奇心を育て、最後は自分から教材を手に取るようにしむける(外発的動機→内発的動機)という手腕は、自分の父親ながら非常に見事な戦略だったなと思います。


こうした導線がなければ、名著や名画に出会うこともできず、ただゲームやテレビを見るだけの日々になっていたかもしれません(それでもまあ結構な時間をゲーム・テレビに費やしてましたけどね苦笑)。家族で和気あいあいとコミュニケーションをとる仕組みを作れたことも大きかったと思います。


もちろん家庭ギャンブルが原因となる兄弟ゲンカは絶えませんでしたが・・・






教科書よりも圧倒的に面白い!子どもに夢中で「歴史」を学ばせる方法



オヤジが特に熱心に取り組んだ家庭教育、それが歴史でした。
学校&教科書で学ぶと人物の名前を覚えたり、年号を暗記したり。
歴史という教科はとにかく暗記・暗記のオンパレードで歴史嫌いの子どもは少なくありません。


しかしホーツキ家にはあのオヤジがいます。
歴史を単なる暗記科目にしておくはずがありません。


オヤジ「歴史の面白さは人間ドラマにあり!」


いつ、誰が、なぜそれをやってのけてみせるのか。
そうした人間ドラマにこそ歴史の面白さは宿っています。
例えば小学生(の特に男の子)にとって戦国時代は宝の山。


・信長がどうして天下統一を目指したのか。

・信玄がついに天下統一を果たせなかったのはなぜか。

・謙信が実力はありながら天下統一を目指さなかった理由とは。


英雄達が抱える野心や義理の世界に一度出会えば、歴史はとても面白い学問になりえます。



オヤジが小学生の3兄弟にひきあわせた武将は、武田信玄。確か中井貴一が主演を務める大河ドラマ「武田信玄」を見た(正確には見ろと言われた)のがきっかけだったと思います。





3兄弟「信玄、マジやべえ。」





オヤジ、してやったり。あまりのカリスマ性に狂喜乱舞し、憧れを抱いた長男の僕は小学校1年生か2年生の夏休みの自由研究で覚えたての彫刻刀を使って「風林火山」と文字をくりぬいた作品を持っていったほどです・・・


そして僕が3〜4年生になった段階で、オヤジが次の的に選んだのが織田信長。





3兄弟「信長、マジやべえ。」





オヤジ、またもしてやったり。ただ単に強い信玄と違い、戦略性と先進性のある人物像に、そうしたことが理解できる年頃になってきた3兄弟は引き込まれていきました。そしてオヤジの最終兵器がこれ。


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