強烈なオヤジが高校も塾も通わせずに3人の息子を京都大学に放り込んだ話

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そう!歴史シミュレーションゲームの金字塔「信長の野望」です。徹夜に不登校もなんのそのでやりこみました。そして覚えましたよ。武将達の名前を。ステータスの数々を。
注:信長のステータスは武力とか知能とかとにかく半端ない


こうして少年にとってのテッパン歴史コンテンツである「戦国時代」を十二分に駆使して、3兄弟を歴史の世界にじわじわと引き込んでいくオヤジ。一度心に火がついてしまえば後はわりと楽。3兄弟の興味関心の矛先を注意深く観察しながら、徐々に高度な歴史世界へと案内していきます。





そしてついに、長男の僕が小学校高学年になると、待ってました!とばかりにもう1つのテッパンコンテンツ、「幕末」をぶつけてくるのでした。




おそらくオヤジにとって戦国時代は通過点で、この幕末を境とする近代史をちゃんと学んで欲しかったのだと思います。いまの日本、そして世界がどのように形成されたのか。その始まりともいうべき幕末に3兄弟を引き込むためのオヤジの作戦はこうでした。



幕末といえば、西郷隆盛、高杉晋作、坂本龍馬に吉田松陰。
歴史好きにはたまらない英傑達の活躍が束になって味わえる時代ですよね。その中でもオヤジが最も注力したのはやっぱり坂本龍馬でした。


当然、「竜馬がゆく(司馬遼太郎著)」を読ませたかったんでしょうが、小学生がいきなりあの小説を読むのは一苦労。そこでオヤジが買い込んできたのがこれ。



「お~い、竜馬(武田鉄矢原作)」というマンガ(当然全巻)でした。






これは、はまりました。






たぶん10回ぐらい読んだんじゃないかと思います。
自然と登場人物のほとんど全員の顔と名前は覚えることに。
(もちろんたくさん稼がぐことができました笑)


坂本龍馬という人物、脇役達、そして時代背景。
こうした一連の物語が頭にこびりついた段階でこの一言。



オヤジ「坂本龍馬について知りたければ。もっといいものがある。これだ(竜馬がゆくの全巻をみせる)。ちなみにこの小説はお前達が好きなマンガのおおもとの原作になったものだ。」



3兄弟「!!?? はい読みます、すぐ読みます。」



こうして、マンガという分かりやすいメディアで入門させた後
中級編としての小説を手に取らせます。その後はもう芋づる式。


「花神」「世に棲む日々」「翔ぶが如く」と司馬遼太郎の名作が続きます。
そして、こうした作品は当然ながらNHK大河ドラマになっている訳でして。


例のビデオデッキを働かせて数時間にまとまった総集編が3兄弟を待っていました(笑)その後は、日露戦争、太平洋戦争、戦後日本、と歴史の勉強が続いていきます。




たぶんオヤジが最も重視していたこと、それは入門編を吟味するということです。一口に歴史といっても、膨大な本や映像の山になっている訳ですし



今オヤジ「おお、子どもっていうのは自分が何を知りたいのか、何から手をつけていいのか、実のところよく分からないんだぁ」






自分に適した本の選び方、映画の選び方、というのはある程度経験値をつめばこそ分かるというもの。また初心者の段階で挫折したり面白さを味わえないと、それ以上それに取組もうと思いませんよね。だからこそ入門編との出会いが大事だ、それをオヤジは知っていました(後日談)。また



今オヤジ「ん?子どもの認知能力の発達段階にあわせて題材を選ぶのがコツだぁ」



だそうです。
確かに、いきなり太平洋戦争という複雑な物語を学ばせても挫折するだけ。


教育者に求められるスキルのなかに「教材選定」というものがあります。どんな教材を、どんな時期やタイミングで子どもに届けたらいいのか。1つの教材を終えたら、次はどの教材に手をつけたらいいのか。子どもの代わりに目利きとなって、最適な教材とその順番を選んであげるという能力です。オヤジはこの能力がずば抜けて高かったように思います。


子どもの目線で分かりやすい題材を、手にしやすいメディアを通して少しずつ触れさせていきながら、徐々に徐々に、好奇心と学習意欲を引き出していく。自分のオヤジながら「あっぱれ」と言いたい。


また学び取ったことを子どもに説明させるのもひとつの技。この辺もオヤジはうまかった!


どうだ!と言わんばかりに自分の知識と意見を、自分の言葉で説明させることにより、ひとつひとつ身につけさせていきながら、自信と関心を深めるアシストをするのです。


・ドライブ中に歴史クイズで競わせたり。

・夕飯時にオヤジの歴史秘話を解説したり

・キャンプでたき火を囲みながら英雄達の苦闘を語り合ったり。


机に向かって教科書を開かせるのではなく、日常の様々なシーンでささいなきっかけをつくりながら、ゆっくりとでも確実に興味関心を育てていく。常に側にいる大人が目利きとなって題材を選んであげながら・・・



今になってようやく、オヤジ流の名人芸ともいうべきファシリテーション技術と熱意に想いを馳せつつ、自分もそれを見習わなければ、と思う今日このごろです。








家庭の中が大学に。もちろん学長はオヤジ。



本・マンガ・映画にNHK。
教育熱心なオヤジが家庭に取り入れた優秀な家庭教師達は
少年時代の3兄弟にくっきりとその輪郭を刻み込んでいくのですが
彼が自分の分身として働かせていたのはそれだけではありませんでした。


自称あらゆる学問に通じているオヤジが家庭に取り入れたのは
他ならぬリアルな家庭教師(オヤジの友達)です。
オヤジが大学の学長とするなら、彼らはまさに学部長というべき人物達。



リアル家庭教師A:芥川賞作家
リアル家庭教師B:オーケストラの指揮者(小沢征爾の弟子?)
リアル家庭教師C:彫刻家
リアル家庭教師D:禅寺の和尚



リアル家庭教師Z:公園でたまたま知り合ったインド人








あ、すいません。さすがにこのインド人というのは嘘です。すいません。

(注:ちなみにこの記事を読んだ弟曰く「家に帰ると、たまたまバス停で知り合ったイスラエル人がひとり食卓で天ぷらを食べていて、オヤジも母親も不在の時間が30分続いたことがあった。あれはマジで謎だった」ということなのであながち嘘ではないのかもしれない・・・)

僕が記憶しているのは、正しくは「公園でたまたま知り合ったギターリスト」です。ちなみにこれはオヤジの強烈さを伺わせるエピソードの1つ。


僕と3番目の弟がたまたま夕方公園で散歩をしていると、ジプシーキングスの名曲を完璧な演奏でながしているおっちゃんを見つけました。しばし聞き入る2人。「いやぁ〜あのおっちゃんのギターすごかったなー」とか盛り上がりながら家に帰ると



なんと、そこにいたのはビールを飲んでいるさっきのおっちゃん。



えええええええええ!!!!!!
という心の声を抑えながら、状況を解説してくれたのは母親でした。どうやらそのすぐ後にオヤジと母親が聞いていたようで、オヤジが声をかけて家に連れてきたのだとか。。。。



(想像)


オヤジ「おっちゃんギターうまいねぇ。ジプシーキングっていうのはさぁ・・・ああでこうでああでこうで・・・せっかくだからうちで飯でも食って来なよ!」



(想像終了)



社交派のオヤジは仕事を通じて、レジャーを通じて
ともかくありとあらゆるタイプの人々とお友達になるのがライフワーク。
こんな感じで仲良くなった人々をどんどん家に招いてきます。



そう、とにかく暇さえあれば自宅に招いて宴につぐ宴。



3兄弟が家に帰ってメディア家庭教師達と戯れていると
オヤジが本物の家庭教師をつれて家に帰ってきます。




オヤジ「おい、お前達、面白い人を連れてきたぞ~。飯の準備せい」


「おい、また誰か連れてきたぞ。あの人誰よ?」

2番目「知らんけど、何者かに違いない。」

3番目「え~オレ今いいとこなんだよな。オレはパス。兄ちゃんたちやっといてよ。」

兄達「は?お前マジふざけんな!お前も準備手伝え!・・・バキボコ・・・」




という具合に、ノーマルな夕飯どきが、アブノーマルなひとときへ、と様変わり。
謎の人物を家族で囲んで突然予定されていないカリキュラムが進行していきます。


・芥川賞作家はいかにして小説を書き上げるのか。

・指揮者に問われる力量とは何か。

・彫刻家が切り取るのは人間のどんな葛藤か。


そんな話がオヤジと客人との間で繰り広げながら3兄弟も耳を傾けていきます。





そうして知り得ることができたのは、人の生き様でありこの世界の奥行きの深さです。そして、自分はどんな人物になりたいのか、将来どんな世界に関わりたいのかという人生で最も意義深く、そして答えのない難題に、早くから取り組むことができたような気がします。



生の人物が語って示す世界というのは肌にビンビンくるもの。
話のうまい客人が現れようものなら、少年達の心は釘付けです。



海洋写真家が見せてくれた海の生物達の写真に魅せられた3番目は、しばらくイルカやクジラの図鑑ばっかり眺めていることもありました。
手裏剣の達人(ビール瓶を割らずに釘みたいな手裏剣で真っ二つにできる)という本当に謎の人物のその芸になぜか惚れ込んで手裏剣の訓練をもくもくと始める2番目。



おい、2番目!お前はそこか!お前のホットスポットそこだったのか!!
大丈夫、まだ大丈夫。今ならまだ戻って来れるぞ2番目よ・・・遠い目





人生は人との出会いによって成り立っている、とよく言いますが(本当か!?)なんとなくその醍醐味を少年時代に味わうことができたのは幸せだったと思います。


そして面白いのは、どんな人物に影響を受けるかは出会ってみなければ分からないというその事実。僕や2番目にとっては「ふ~ん」という話に3番目が引き込まれたり、あるいはその逆が起こったり。せっかくオヤジが連れてきたのに3兄弟全員とも「へ~」という幕切れで終わったり。


しかし、何が功を奏するかオヤジも本人達も分からない中で、こうしたひとつひとつの出会いを紡いでいくことがオヤジ大学の意図だったのかもしれません。
注:たぶん一番楽しんでいたのはオヤジ自身。間違いない。



オヤジの自由奔放な人付き合いの性格に巻き込まれ
3兄弟の人生の学びは果てしなく続いていくのでした・・・









さて、3兄弟も積極的不登校児・問題家庭として先生に煙たがられていた義務教育を終えて、いよいよ受験を控えた高校時代に突入します。3兄弟の受験は、学校にも行かず塾にも行かず、独学で京大に行け!というストーリーです。

オヤジは息子達の受験をどのように応援したのか!?あるいは介入したのか!?

全ては長男の僕が「学校をやめたい」とオヤジに相談したのが始まりでした・・・つづく・・・



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