【8】パニック障害と診断された私が飛行機に乗って海を渡り、海外で4年暮らしてみた話。

【8.長い長い片思いの終わり】

実は私には、20歳の時から片思いしている人がいた。
その片思い期間はなんと5年。

中学生の頃に出会った、会ったこともない人に長い間想いを馳せ、その間それなりに恋愛もしたものの、やはり本当に好きになってしまう人には長いスパンで想いを寄せてしまうのが私。

ハタチの頃、短期の職場で出会った彼とは、その仕事が終了してからも友達として関係が続いていた。

私たちは、ハタから見たらカップルに見えていたと思う。
週末どころか、平日でも仕事後に会っていた。
旅行へ行ったり、お互いの友達に紹介し合い、彼の実家に泊まったこともある。

お互いの誕生日は、約束はしないけれど、毎年一緒に祝っていた。
けれど私たちは、付き合ってはいないのだ。


出会った20の時から、お互いの24歳の誕生日まで毎年一緒だった。
23歳の私の誕生日、私は沖縄に住んでいた。
たまたま私の誕生日に被って沖縄に遊びに来た共通の友達に、プレゼントを託してくれた。
その年以外は毎年一緒だった。

彼より一足お先に25歳になった私は、その年は一人だった。
都合が合わなくて会えずに終わり、出会ってから初めて誕生日に会わなかった。

二ヶ月後の彼の25歳の誕生日、いつも通り約束はない。
でも、サプライズで祝おうとケーキを買って、プレゼントも仕込んで、車で彼のアパートまで行った。


そこに彼の車はなかった。

代わりに停まっている黒い軽自動車。
彼の月極駐車場に他人の車が停まっている。

中を覗いたら、プーさんのブランケットにピンク色のハンドルカバー。
女の子の車なのは明らかだ。


本当はサプライズのつもりだったけれど、これはマズイ!と思った私はその場で即、彼にメールした。


誕生日おめでとう。
今日はデートかな?
楽しんで!


すぐに返事があった。


ははは、まぁね。
ありがと!
また飲みに行こう


彼女ができたら言ってっていつも言ってるでしょ!
そっちもおめでとう。


いやー、最近付き合ったばっかだからさ!
また今度紹介するよ。


そういえば私、6月に出国することになりました。
それまでに会えるといいね。


はぁああ?!出国?!
何、どこ行くの?!



返事は送れなかった。

この時私は、あぁ長い片思いが終わった。と思った。

これまでにも彼に彼女が出来たことは何度かあった。

でも、どうせ長続きしないのはわかっていたし、正直なところ傷ついたりもしなかった。

そして彼は、やはりすぐに彼女と別れては、いつものように私をご飯や遊びに誘ってくれるのだった。

都合のいい女になっていることはわかっていたけれど、それでも自分の気持ちは言えなかった。
告白して、振られて、疎遠になって、自分の人生から彼がいなくなることの方が辛かった。

15歳の頃から、私はなにも変わっていない。


でも今回は違った。

あぁ、終わった。と思った。
もう彼に恋するのはやめようと決めた。
涙はボロボロ零れてくるのに、不思議なほど私は晴れ晴れした気持ちになっていた。

恋を辞める。
これもまた、人を成長させるステップなのかなと思う。


これで私は心置きなくNZに行ける。
向こうで発作が起きたっていいじゃない。
パニック発作が原因で死ぬことは絶対にない。
万が一死んだとしても、自分の思いのままに生きた人生に満足できるだろう。

このまま日本で暮らしても、いつか死ぬ。
いつか死ぬなら、NZで死ぬのもいいじゃないか。


真剣にこんなことを考えながら、
大好きだった人の25歳の誕生日に、
私は号泣しながら、取りたての真っ新なパスポートを握り締め、NZ行きを決意した。

25歳と2ヶ月目の寒い寒い冬の夜だった。

著者のShinohara Lisaさんに人生相談を申込む

著者のShinohara Lisaさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。