大学3年生、個別指導塾のアルバイトに明け暮れていたあの頃。

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大学3年生、個別指導塾のアルバイトに明け暮れていたあの頃。

リョウは、中2の終わりに僕の担当する教室にやってきた。


塾長からは、「高校に受からせようとか、そこまで考えなくていいよ。もう無理だからね。あの子の人生の中でこれから勉強することなんてないかもしれないから、少しでも勉強をするという経験をさせてあげればいいよ」と言われた。


「はい」と返事をしながら、

「なんだそれ、ふざけんな。絶対に高校に受からせてやる」と心の中で誓っていた。




リョウは、本当に勉強が嫌いで、はじめて塾に来るまで本当に何もやっていなかった。

一人っ子で甘えん坊。大人と話をするのに慣れていて、大人と対等に話すことができる子だった。リョウと話をしていると、本当に楽しかった。


お父さんは医者。もちろん、リョウにも大きな期待がかかっていたけれど、それを受け止めることができなかった。その期待から逃げていた。


通知表もひどい状態。でも、決して頭が悪いとかやってもできないとか、そんなんじゃなかった。頭の回転は速い。ただ、勉強が嫌いなだけだった。でも、塾に来るようになってからも、リョウの勉強嫌いはまったく改善されることはなかった。




それから半年がたち、中3の夏前には、毎日塾に来るようになっていた。けれど、塾に3時間いても、勉強するのはそのうちのせいぜい1時間足らず。それでも、全くやらなかった頃と比べれば、少しずつ頑張ることができるようになっていた。


そして、

夏が過ぎて秋になった頃、高校の推薦がもらえないことが決定した。専門学校の推薦しかもらえなかった。確かに中3になってから、自分なりには頑張っていたけれど、それまでの遅れを取り戻すほどではなかった。それまでの成績があまりにも酷過ぎた。



間に合わなかったのだ。



一般入試で合格するしかない。

推薦をもらえなかったことで、消えかかっていたやる気を奮い起こしながら、なんとかギリギリのところでリョウは踏ん張っていた。何度、泣きながら逃げていったか分からない。そのたびに家まで行って話をして、何度も何度も話をして、なんとか繋ぎとめることができていた。



そんなとき学校から、

「推薦の枠が空きました。リョウ君を推薦することができます」と連絡があった。


一般入試へ向けて、リョウもようやく受験生らしく、本当に頑張ることができるようになっていたときだった。



僕は、このままリョウに頑張らせてやりたかった。


努力をすること。自分の力で未来を切り拓くこと。結果はどうであれ、自分の目でそれを確かめること。この経験を、リョウにさせたかった。


リョウにはそれが絶対に必要だった。学校から言われた推薦の高校は、このまま一般入試で受けても間違いなく大丈夫なレベルだった。

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