音楽に国境は存在しなかった。言葉がなくても語ることのできたカナダ5ヶ月留学。

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前話: 音楽との出逢い。それは人生の大きなターニングポイントの一つとなった。

言葉がわからない時は「ごめん、何言ってるかわからない。だってぼく、日本人だから!」

と冗談めいたことを言う様になりました。

カナダ人は純粋で、面白ければOK。

言葉が通じなくても笑うぼくにつられてたくさん笑顔をくれるようになりました。




3ヶ月が過ぎ、4ヶ月が過ぎ。

ぼくは少しずつ言葉が理解できるようになりました。

一人でダウンタウンに出掛けることも、レストランでメニューを注文することも。

初めてのお使いの様にどきどきしながらではありますが、できるようになっていきました。


理科のクラスメイトイケメンロシア人イリア君の縦横無尽な社交力の恩恵を受け、陽気な中国人の恩恵を受け、個性の強い音楽のクラスメイトの恩恵を受け。

ぼくには言葉の通じない友達がどんどん増えていきました。


音楽クラスの4泊5日のミュージックトリップでは他校と演奏会で共演し、ロッキー山脈を間近で見上げ、その頃にはクラスの一員となっておりました。


6月の卒業式を目前に、韓国人のギタリストの友人が「卒業式で演奏するバンドをやろう!!」と声をかけてきてくれました。

韓国人のギタリスト・ピアニスト、カナダ人ベーシストカイロ、日本人ドラマーたつみ。

無国籍な即席jazzバンドを結成したのです。

留学前に立てた目標を達成できた瞬間でもありました。


卒業式での演奏は上々。

たくさんの拍手をもらいステージを後にしました。

それは同時に、ぼくのカナダでの最後の演奏となったのです。





そーりー。たいむとぅーごー。

「かずき。日本に帰らずに、俺とバンドやろうよ!!」

PCにメッセンジャーでカイロがぼくにそんなメッセージをくれました。


留学が始まった約2ヶ月間の孤独と、それ以降の時間は全く相反する時間となりました。

音楽を通じ、打ち崩した壁。フラットになったカナダでの時間はそれはもう楽しいことしかない時間でありました。

学校にいけば愉快な仲間いて、週末に集まる仲間がいて、(今回の話では書けなかった)家には気の合うルームメイトがいて。

そして、4月からできた素敵な彼女なんかがいたりして。。

日本に恋いこがれていたぼくには、帰国を躊躇する理由が幾つも存在していたのです。


このまま残ってハイスクールを卒業し、カナダのカレッジや大学を目指すという選択肢もありました。

でも、帰ろう。


ぼくは留学中に様々な価値観を与えられました。

それは文化的な違いや、習慣の違い、宗教の違い、歴史の違い。

違いの中で気づいたことと、違っていてもわかりあえるということ。


その中でぼくがいかに「母国、日本のことを知らないのか」ということ、を知りました。

日本人がいかに、メッセージ性や意味を知らずにファッションで衣服を纏っているのか。

自らの地域の現状や歴史を知らずに過ごしているのか。

生まれ育った日本を知らずに、外国に憧れを抱いているのか。


外を知れば知る程、ぼくは内なるものを知らないことを知りました。

だから、ぼくはもっともっと日本を知りたい!!

ぼくには、帰る理由が生まれたのです。


カイロにぼくはこう言いました。

「ありがとう。でもね。

ぼくはもう行く時間なんだ。ごめん。」




あれからもう10年になります。

ぼくはいまも、あのときの感動の感覚を忘れられずに音楽を続けています。

崇高な理由は何一つありません。

ただ、音楽が好きなのです。

でも、少しだけ崇高な表現をするのだとすれば。

ぼくが、ぼくらが奏でる音や発する言葉の断片が。

誰かの鼓膜から心を揺れ動かすことが出来るのかも知れない。

ぼくが音楽で感じた、感動という感覚を誰かが感じるのかも知れない。

そんな少しばかりの願いを込めて。


ぼくはこれかも音楽と共に生きていきたいのです。

音楽に国境なんか存在しない。


音楽が世界を変えれるかなんて知ったこっちゃないね。

でも、確実にぼくの世界は変えたんだ。




長文&乱文を最後までお読みいただきありがとうございます。

もしよろしければ現在活動しているバンドと運営している宿のリンクを下記に記載いたしますので、ご高覧いただければこれ幸いにございます。


◯現在活動しているバンド

小宮山門前ブルースバンド HP

小宮山門前ブルースバンド 初音源1st.THE DEMO PV


◯運営している宿

古民家ゲストハウス梢乃雪 HP

梢乃雪二号館ゲストハウスカナメ Fb


文:たつみかずき

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