福祉アナリストになったきっかけSTORY。介護、悩み、現場の本当の物語。感じられる人だけに読んで欲しい。~介護にむいてるのは誰?~

その彼女はとっても手が早い人でした。手が早いとは仕事のスピードがとても速いという意味です。


トイレ誘導はそのフロアーではいつも40分くらいかかっていましたが彼女が混じると20分くらいで済みますし、オムツ交換も一時間はかかる作業が30分くらいですみます。24時間で働くということは勤務もバラバラです。なので、彼女と当たることはあまりありませんでしたが、彼女と勤務が同じだと何故か得した気分になりました。


 もう一方の若い男性介護士は非常に手の遅い人でした。彼が混じるだけで確実にトイレ誘導やオムツ交換が遅くなりますし、一人平均5名は交換しないといけませんが、彼はいつも2、3名。どうにも、損な気がしたものでした。


オムツやトイレが遅くなれば、次の業務が差し迫ってくるので気は急きます。自ずと最後の方が便など出ていると、とてもがっかりしたものです。


 大きな施設では1フロアーに職員は大勢います。けれど、入居者さんもたくさんいるので仕事は膨大にあり、細分化されています。細分化されているけれど、一人頭の仕事はたくさんあり、チーム制なので一日は矢のように過ぎていきます。全体や個人を見ることはなかなか難しい状況でした。


ある時、私は手の早い彼女と夜勤を組むことになりました。彼女の手の早さを目の当たりにして驚きました。自分の仕事を殆どを彼女がやってくれたり、段どりは済んでいる状況で夜勤というのは2時間の休憩がありますが、一時間とれたらいいほうなのに、彼女とくんだら、2時間とれてびっくりしました。


もう一人の彼と組んだ時はとても大変でした。フロアーの30名あまりのオムツ交換のうち20名を私がしました。もちろん、休憩時間も使っておむつ交換をし続けましたので休憩もなし、明け方にはぐったりとしたものです。


そこで、細分化されており、勤務もずれていましたが、二人を比較しようと思い立ちました。得に手の早い彼女の技を盗もうと思ったのです。カルテかきや手のかかる仕事をらくらくにこなす彼女のようになれば、仕事も楽になるだろうと思ったのです。


果たして結果は驚くものでした。


まず、彼女は仕事を行う前に準備は完璧に行っていました。オムツや洋服など、交換時に必要なものは全て揃えてから仕事に取り掛かっていました。ここまでは良かったのですが


トイレ誘導時には全ての誘導者をトイレ前に集合させていました。トイレ誘導には一時間ほどかかりますので最初から並べば一時間待つことになります。だから、彼女は全て並んでもらうのです。私は待たせるのが嫌なので大概、三人程度づつでした。一方の彼は一人づつ誘導し、行きや帰りは利用者さんとおしゃべりをし、交換も非常に丁寧で、少しでも汚れなどあれば、こまめに交換しておりました。


 極めつけは夜勤でした。この施設では4時におむつ交換をし、5時に更衣をして起きて頂くのですが、彼女は4時のオムツ交換時にズボンの更衣は行っていたのです。オムツ交換時に更衣するほうが確かに効率いいですよね。そして、洗面も全員起きてから一気にしておりました。一方の彼は一人一人、声をかけ、更衣をし、洗面をしていました。非常に丁寧でした。


 私は彼が入居者さんを非常に大事に人として扱っていることに感動しました。私もああなりたいと思いました。でも、評価されるのは彼女なのです。職員も彼女のやり方には賛同していないと思います。でも、彼女と仕事は楽なのです。軽快な口調、おしゃべり、明るさ、なにより、リズムが職員側にあるので楽なのです。

年を取れば誰でも他人に合わすことが難しくなります。だからこそ、入居者さんのペースに合わすことが介護の基本です。でも、職員には無意識にペースを職員本位に行ってしまします。

育児ノイローゼは今まで自分本位だった自分が赤ちゃん本位になるために、自分が崩されておこります。

でも職員は介護ノイローゼにはなりません。何故でしょう。自分本位だからです。そして、相手本位にしたい職員は燃え尽きて辞めていきます。

彼はその後、介護職には向いていないと転職しました。本当に向いていたのは彼のほうだったのに。と今でも思うのです。



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