思い返すということー30代の末期がん患者とのかかわりー
職場の人と、今までの経験について話していました。
仕事中こんなことがあった…
患者さんにこんなこと言われた…等など。
思い返すと、もう亡くなってしまった方のことばかりが頭に浮かびます。
30代後半の男性、大腸がんのターミナル(末期)。
自分が新人のときに入院されていた方でした。
奥さんと話し合った結果、本人には告知はしないという方向になりました。
たぶんそれが5月ぐらいだったと思います。
7月になるともう、全身状態が悪くて会話もままならない状況でした。
口にはださないけど本人からは「死にたくない!!」というオーラがヒシヒシと感じられました。
麻薬投与も行いながらの痛みのコントロールだったのですが、
本人の苦痛様はなかなか消失しませんでした。
そんな状態が1ヶ月も続いた後、真夏の日に亡くなられました。
後から聞けば小学生のお子さんが2人いたのですが、
本人が連れてこないように奥さんに言っていたそうです。
思い返せば一度も見かけたことがありませんでした。
本人はどういう気持ちでそういうことを言っていたのでしょうか?
苦しんでる自分の姿を見せたくなかったのか…
子供にショックを与えたくなかったのか…
きっと入院中ずっと会いたいと思っていたんじゃないかと今では思います。
新人の自分はそんな家族背景にも気が向きませんでした。
その後奥さんに街で声をかけられたりして、何回か会話をする機会がありました。
「なんとかやっています」
会うたびにそう言っていました。
あの頃小学生だった子供達はきっと高校生でしょうか。
父親の死をどう受け止めていったのでしょうか?
入院中、奥さんは子供達にどういう風に説明していたのでしょうか?
今になって思い返すと色々疑問もでてきます。
自分の関わりがどうだったか、振り返る節も色々でてきます。
あの頃は新人オーラをバシバシだしていて、
患者さんや家族の方に「新人さんなんだね」といわれながらどこか甘えていた部分があったように思います。
もう6年目を迎える自分は、同じ境遇にたったときにどういう関わりが出来るようになったんでしょうか?
そう考える中で、以前よりは全体を見渡せるようになったんじゃないかと思う自信と、
実はなにも成長してないんじゃないかという不安が同時にでてきます。
思い返すということ。
それは単に思い出にふけるのではなく、自分自身を振り返る機会にもなる。
今日初めてそう思いました。
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