ハイスクール・ドロップアウト・トラベリング 高校さぼって旅にでた。

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旅、前日


なんでもない日常のなんでもないある日。

寝る前、明日の朝に旅立つことを決めた。


高校2年生の梅雨の季節。

明日、突然いなくなる。

親も先生も友達もクラスメートも誰も、ぼくが旅に出た理由はぜったいにわからない。

前後の脈絡なしに突然、失踪したようにしか見えないだろう。

それがいい。

ぼく自身、何のために、どこに行くか何も決めていない。

つまり、明日からぼくがどうなるか、本当に誰も知らない。

神さまだってきっとわからないだろう。



本当の旅とは、新しい景色を探すためではなく、新しい“目”をもつためのものである。

―マルセル・プルースト






旅、1日目


「今日からちょっと旅にいく」

朝、いきなり母親に言った。


母親は驚いていたけど、仕事に出かける前の慌ただしい時間帯で、ぼくに詳しく尋ねる暇もなかった。

高校に電話だけかけて、すぐに出かけて行った。

「すみませんが今日、息子は旅にいくので学校を休ませて頂きます」

「はい、わかりました!お大事に!ガチャッ」

受話器の向こうから聞こえてくる先生の声は事務的で、一瞬で電話は切れた。






全財産、3万円。

中学校の社会の地図帳、小学校の理科の方位磁石。

着替えの靴下とパンツを一着ずつ。

とりあえず歯ブラシ。

読みかけの寺山修司の文庫本。


みんなの読んで良かった!