「夢」か「安定」か?〜超就職氷河期に二度内定を捨てた話し PART2〜
前回のあらすじ
リーマンショック後に僕は就活を始めることになった。
誰よりも早く就活を始めてやる!と意気込んだものの、友達のよっちゃんは僕よりもずっと早く就活を始めていた。
その影響で僕は初めてインターンシップの説明に参加するため、わざわざ京都まで出向いた。
そこで初めて「就活」という空気に触れることができたのである。
大阪、夏のインターンシップ説明会!
京都のインターンシップ説明会に参加するものの、そこでは京都の大学に通う学生限定で企業の紹介がされていた。(よくよく考えてみればそりゃそうだ…)
しかし、京都に就活支援センターがあるということは大阪にもあるということ…
そして実際に大阪でも同じように就活支援センターがあり、そこでもインターンシップの説明会が予定されているではないか!
僕はさっそく申し込みを済ませて、今度は大阪で行っているインターンシップの説明会に参加することを決めたのであった。
前回の説明会では私服だったが、今回はちゃんとリクルートスーツ姿で向かった。
既に6月ということもありスーツ姿だとあまりに暑く、途中何度もスーツを脱ぎ捨ててやろうかと思った。
会場に近づくにつれて僕と同じようなスーツ姿の学生を見かけて、「おそらくこの人たちもインターンシップを受けるんだろうな」と思った。
会場に着くとそこにはもう何人かの学生が待機していて、僕もロビーのイスに座って説明会が始まるのを待っていた。
周りには色んな大学の就活生が集まっていたので、僕は興味津々に観察していた。
まだ茶髪の残った学生もいれば、ばっちり黒髪ショートでいかにも「就活生」という感じの人も。ちなみに僕は髪は黒くしていたが、ボサボサに伸びていたのでおそらくアウトだった。笑
そして予定時刻がくると受付にいた女性が「みなさんこちらです!」と言って僕らを広い教室に案内してくれたのであった。
小林先生、現る!
そこは200人くらいは入るであろう大きな教室だった。
僕は前のほうの席に座ると、続々と他の就活生も順に座っていった。
机の上には就活についての資料やインターンシップについての資料が置かれていて、みな真剣な表情でそれらを読んでいた。
二度目の説明会ということもあって少しリラックスしていたが、それでも知らない学生が隣に座ると妙な緊張感があった。
そんなことを考えていると講師らしい人が前に立ち「みなさん、こんにちわ!」と言って説明会は始まった。
前回の京都の説明会でも就活についてやインターンシップについて学んでいたが、今回も新しい気づきがあったり復習になったりと面白かった。
が、、、二人目の先生が話し始めたあたりから雲行きは怪しくなり、「睡魔」という強敵が僕含めて他の就活生にも襲いかかった。
その先生の説明の仕方があまりに棒読みだったためか、それとも朝早くから気合いを入れ過ぎたためか、僕は何とか意識を保とうと必死だった。
「アカン、これでは完全に意識が無くなる!」
僕他の就活生を見れば刺激をもらって眠気も吹っ飛ぶのではないだろうかと思った僕は隣にいた学生をちらりと見た。
しかし残念ながら彼も睡魔という悪魔に襲われていたのであろう…彼は見たこともないスピードでシャーペンを回しながら、必死になって意識を保っている様子だった。
「こりゃダメだ!」
周りを見渡しても既に意識が無くなった学生や、今にも仏様になりそうな目をした学生の姿があった。
僕はなんとか起きてようと必死になってノートを書いていたが、もはやそこに記入された文字は日本語ではなく象形文字になっていて、二度と解読できることはなかった。
そうこうしている間に先生が「それでは僕の話しはここまでです。」と言って試合終了の合図を出してくれて、はっと我に返ることができた。
「では最後に小林先生の話しがあります。」
そう言って現れたのは僕よりも少し背が低く(ちなみに僕は163cm)髪型はショートヘア、活動的なのか全身日焼けしたコワモテの先生が現れた。
「…この人はヤ◯ザか??」
おそらく僕含めて他の学生もそう思ったに違いない。
「何故この人がここに??」と思わんばかりに、小林先生という人物は独特のオーラを放っていた。
「就活生の諸君!こんにちわ!」
ドス…いや力強さが効いた声が教室中に響き渡った。
しかもノーマイクである。
そして更に小林先生は衝撃の一言を放った。
「多くの就活生は間違った考え方を持っている!」
なに!?
今まで説明を受けてきて、しょっぱなから否定してくる人なんて居なかったが、小林先生は違った。
けれどその瞬間、僕は小林先生という人物にとてつもなく興味が湧いたのであった。
「例えばこの中にマスコミ系の企業を目指そうと思っている学生はいるかな?」
小林先生の質問に前のほうに座っている何人かの学生が手を上げていた。僕の後ろにもたくさん就活生が座っていたので教室全体だともっといたのだろう。
「いいですか?マスコミ系に行きたいと思っている学生がマスコミ系の企業説明会に参加してたらダメですよ。」
この言葉には僕含めて多くの学生が戸惑った。
何故ならマスコミ系に行きたいならそこの会社の説明会を受けるのが当たり前だろうと僕でも思っていたからだ。
しかしそんな戸惑いはよそに、小林先生は話しを続けた。
「私の学校にもマスコミ系の企業を狙っていた子がいたんですが、その子の話しを聞いてみるとマスコミ系の説明会を何社も受けてると言ってたんです。だから私はお前は馬鹿か!と言って説教しましたね。
いいですか?マスコミ系の職業に就きたいなら、常日頃から色んな世界や情報を知っておかないといけない。
だったらマスコミ系の説明会なんて受けずにもっと様々な企業の説明会を受けるべきだ。そうやって色んな世界を学ぶことが必要なんです。
その学生にも同じ説明をしたら、その日から彼は変わって色んな説明会や外の世界を学ぼうと頑張ってました。まあ今頃は大手のマスコミの会社で頑張って働いてますがね。」
小林先生の話しにみんな釘付けになっていた。
もはや眠気などまったく無かった。
突如現れた小林先生の話しは、僕が持っていた「就活」のイメージとは全然違うものだったのだ!
(つづく)
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