「お腹の子は、無脳児でした。」~葛藤と感動に包まれた5日間の記録~
「大事な話があるから、
電話に出られるようにしておいてね。」と、
妻のはなちゃんからLINEが入った。
昼休み。丁度、店内でチキンクリスプの包み紙を開けるところだった。
「そうかあ、本当にだめだったのか。」と心の中で深くため息をついた。
確かに、はなちゃんは病院に行く前から気にしていた。
「もうちょっとお腹大きくなってもいいころなのに。
ちゃんと育っているか心配。」
1か月くらい前から、何度かそう話していた。
でも、不安になるのは
心配性のはなちゃんにはよくあること。
正直あまり気にしてなかった。
正確には、気にしないようにしていた。
妻の7月7日
脳がないから、産まれても生きられない。
妊娠14週。いつも通り10:30に産婦人科へ。
血圧正常、体重900g増加。
よし。まだプラス1kgもいっていない。
「次からUSB持って来たら
赤ちゃんの映像とってあげられるからね。」
よし。次回は絶対持っていかなきゃ。
エコー始まる。
お。ピコピコ心臓動いてる!
一安心。
無言。
無言。
無言。
あれ?
一人目のそうたろうの時には、
「これが足で、これが手だよ。」
「これが顔ね。」
「今は○○cmだね。」と会話が普通にあったのに。
「あ、これ心臓ですよね?」
無視。
え?無視?
しかも首をかしげながら映像を見ている。
何か異常があったのかな。
だからこんなに無言なのかな。
そうしたら、
「ど、どう?最近はつわりはおさまってきたかなー?」
ギコチナイ棒読みで。
「全然まだなんですよ!先週末も吐いて、けっこう辛かったです。」
「そ、そうなんだー?風邪とかひいてない?」
「風邪?たぶんひいてないです。」
無言。
無言。
「家族はどう?風邪ひいてる人いない?」
「はい。誰もひいてないですよ。」
無言。
無言。
「上の子は、えーっとー、5歳になったのかな?」
「はい。」
「どう?上の子は風邪ひいてない?」
「?はい。別にひいてないです。」
無言。
どうしてこんなに、
周りに風邪をひいてる人がいないか聞くんだろう?
そこ重要なのかな?
かなり不安。
長すぎる。
エコーが長すぎる。
「はい。じゃーー……えーっと……。ね。
あとでね、先生の方からお話がありますので、
待合室の方でお待ちください。」
この意味深な言い方に、
「何かあったんですか?」
と、すごく聞きたかったけど、
聞いたら後悔する気がして、怖くて聞けなかった。
結局、いつもなら渡される
エコー写真をもらえないまま待合室へ。
待つこと1時間以上。
後から来た人たちがどんどん帰っていく。
もしかして、
わざと最後になるように回されてるのかな?と気がついた。
「半田さーん。」
やっと呼ばれて診察室へ行こうとしたら、
看護師さんが「今日は一人で来たのかな?」と聞いてきた。
絶対おかしい。この質問絶対におかしい。
心臓がバクバクしながら、診察室のドアを開けた。
室内は、たくさんのエコー写真が並んでいて、
先生と5人の看護師さんが小声で、
何か深刻そうに話し合っている。
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