アメリカ留学にも少し慣れたある日のこと。
その日もいつも通り、大学へのバスへ乗った。
いかにもガラの悪そうな怪しい黒人のおっさんが目に入ったので、少し怖かったので避けて座った。
すると、突然そのおっさんが立ちだして近づいてくるではないか。

おっさん「What’s up, dude? (よっ、調子どない?)」
僕「…Nothing bad. (普通やで、普通!)」
ぎこちなく返事をしたあとに、おっさんは俺の前に座り、身を乗り出して話を続けた。
おっさん「Do you wanna have some weed? (もしあれやったら、ウィード買わへん?)」
僕「…What is that? (ウィードってなんなん?初めて聞くわ。)」
おっさん「Don’t you know what it is? (お前ほんまに知らんの?)」
僕「…No. (え、知らん知らん)」
おっさん「It is a kind of DRUG which makes you feel super exited!! (ウィードって言うのは大麻のことで、ドラッグの一種なんよ。吸ったらめっちゃ気持よーなるで!!!!)」
俺今ドラッグを売られようとしてるのね?通学途中のバスで。
そうかドラッグか。そうか、ここはアメリカか。そうか、、、
あっけにとられて、何も言えなかった。
もちろん、僕は買っていない。しかしながら、大麻所持、使用はアメリカでワシントン州と、コロラド州に関しては21歳、個人使用目的であれば合法らしい。公共の場で使用、州外への持ち出し、ライセンスを持っていない人の販売は犯罪だそうだ。(僕の予想だが、おっさんはOUT。)

日本で育った自分にしてみれば、大麻などの薬物なんて何かの「警察24時!」的なドキュメンタリー番組や、学校での授業、ニュースでしか聞いたことがない。
おっさんは「一回吸ってみ?」と、割としつこく売ろうとしてきたものの、僕は断固拒否した。すると、諦めたと同時に少し悲しそうな顔をして話をつづけた。
「ドラッグなんてやめておいたほうがいい。ただ、俺にはこれしかないんだ、まともに働こうったって学校すら行ってないし、なんせ俺は黒人だ。お前は恵まれてる、裕福な国と家庭に生まれ学校にだって行けている。それが分かるか?」
僕は深く考え込んでしまった。

