【第1話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。
「何か食べるものを買ってきて」
2014年2月。珍しく東京に大雪が降った日の後、父から姉にこんな電話がきた。
父
ちょっと外出できないから、何か食べるものを買ってきてくれないか
姉
え!?
姉は父がこんな電話を寄越すなんて、何か異変があったに違いない、とすぐに分かったそうだ。
昭和ヒトケタ生まれで変にプライドが高い父が、娘にこんな「お願い」をするなんて、今までになかったから。
今すぐ父の状態を確かめないとまずい。だけどその日と翌日は、姉はどうしても外せない、姉家族の将来を決めるレベルの用事があった。
当然、独り者の私の出番だ。
とりあえず、姉はトリアージ相談の電話をし、その結果「救急車が要」と判断され、私は姉から聞くままに搬送先の病院へ向かった。
病院で会った父は…
サンタと見紛うほどのヒゲをたくわえていた。
のはどうでもよくて、少しぼんやりしているものの、普通に会話を交わせる状態で、ちょっとだけ拍子抜けしてしまった。
診察後、栄養状態にも特に問題なく、入院せずに帰宅。
ただ、杖を使っても歩くことが辛いようで、タクシーの乗降車、そしてアパートの階段(父は2階に住んでいた)を上る時は私の介助が必要だった。
救急車まで呼んで何も問題なしかい、と思われる方もいると思う。
(実は自分も当時少し思った)
もちろん緊急でもないのに救急車を呼ぶことは絶対にいけないことだし、それを分かっていたから相談センターに連絡したことはご理解いただきたい。
そして何より、この姉への電話が結果として、父の命を繋ぐことになったのだ。
つづく
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