【第2話】離れて暮らしていた父の介護のこと、死んだときのこと、そしてお金のこと。
“一緒に暮らす”という選択
第1話で「何事もなかった」と書いたが、実際には少し違う。
搬送してくれた救急士さんからこんなことを言われた。
救急士さん
搬送するためにお父さんのお部屋に入りましたが、今の状態だと一人暮らしは危険だと思います。
季節は冬。
山と積まれた荷物(父は片付けられない、捨てられない人だった)の、ほんの僅かなスペースに、万年床。そしてその布団のすぐ脇に、電気ストーブがついていたそうだ。まさかエアコンを使わずに電気ストーブを使っていたとは。
これじゃあ、いつ火事を起こしてもおかしくない。
それに父の暮らすアパートには風呂がない。トイレも和式だ。
いくら食事を用意しても、洋式トイレや風呂までは用意できない。
階段の登り降りすら難しくなっている今の状態では、ここでは生活できないことは明白だった。
母と同居の姉、ひとり暮らしの自分
姉はいわゆるシングルマザーで、母と同居をしている。
かたや私は子供もいない独身。
父がひとり暮らしをできなくなった今、どう考えても自分が同居する以外の選択肢はない。
ただ、その時私が住んでいたのは6畳ワンルーム(風呂トイレつき)。
そこに父を引き取ることは不可能だ。
引っ越しをしなくちゃいけないな…でも父と同居したとして、それで解決するのか?
私が仕事をしている間、父は結局一人になる。
繁忙期には22時、23時の帰宅になることもしょっちゅうだ。その間、父の食事はどうする?もし何かあったら??
…でも、このままひとり暮らしをさせるのも無理だ…
「でも、でも…」ばかりが頭をめぐって、何の解決策も出ない。
何はともあれ、心配しているであろう姉に報告をしなければ、と電話をかけた。
つづく
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