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東日本大震災から生まれた、究極の利便性を追求した防災ライト 単1形~単4形のどれでも1本の電池で使える「電池がどれでもライト」の誕生秘話

著者: パナソニック株式会社 コミュニケーションデザインセンター


阪神淡路大震災や東日本大震災などの大災害を通して、その重要性が再認識された防災グッズ。パナソニックでは、停電時や避難時に役立つアイテムとして、単1形〜単3形までのどの電池でも使える「電池がどれでもライト BF-104F」を2005年に発売しました。


2013年には、“究極の利便性”を追求した「電池がどれでもライト BF-BM10」を発売。 LEDを使用した省エネタイプで家にある単1形〜単4形までの電池がどれか1本でもあれば使える仕様にリニューアル。

「電池がどれでもライト」の誕生秘話とPR戦略を担当者3名が語ります。


<企画開発者プロフィール>

大井 秀典(入社31年目)

インダストリアルソリューションズ社 エナジーデバイス事業部 市販マーケティング部

電池応用商品の企画開発一筋。懐中電灯のことなら何でも聞いてください。



川端 克昌(入社21年目)

インダストリアルソリューションズ社 エナジーデバイス事業部 商品技術部

手先の器用さを活かし試作品を作るのが得意。アイデアはすぐに形にします。新たな価値を提案する喜びを日々感じています。


杉山 健人(入社2年目)

アプライアンス社 コンシューマーマーケティングジャパン本部 商品センター 乾電池商品企画担当

入社後初めての担当が今の電池応用商品。​

日々電池応用商品の拡販に向けて奮闘中。



いざというときに使えない!従来製品の課題

大井:

単1形〜単3形までの電池が使える「電池がどれでもライト」初号機は、その利便性が広く受け入れられ、十分な売上も上げていました。しかし、未だ記憶に鮮明に残る2011年3月の東日本大震災で、我々は自社製品の「課題」を突き付けられたんです。


計画停電地域や避難地域を中心に大勢の方が懐中電灯を買いに走った結果、店頭からライトと電池の在庫がすっかり消えてしまいました。たとえ手元に懐中電灯があっても、使える電池がなければ意味がありません。当社の「電池がどれでもライト」初号機は、単1形〜単3形のいずれかの新品の電池を2つ使用するのが前提であり、リモコン等で使用中の電池を抜き取って利用することは不可とされていました。


この様子を目の当たりにして、社内からは「現状のライトでは、いざというときに価値を発揮できない。それならば、最高レベルまで利便性を高めた究極のライトを作ろう」との意見が聞かれました。当社では、多くの社員が“究極”という言葉を口にします。「新製品をつくるときは、常に“究極”を目指す」これこそ、パナソニックらしい製品開発の姿勢なんです。


東日本大震災の影響で、世間的にも防災グッズの需要や関心が一気に高まっていたこともあり、2011年の年末にリニューアルの開発が本格的にスタートしました。


“究極のライト”を追求した仕様とは

大井:

通常の企画会議は、開発・デザイン・営業の各部署から担当者が寄り集まり、ディスカッションをしながら進行します。「電池がどれでもライト」に関しても、このようなスタイルの企画会議によって基本的な仕様を決めていきました。


川端:

“いざというとき”にも価値を発揮する究極のライトでなくてはいけない。まずご家庭にある電池を調べてみると、単3形、単4形の順に保有数が多く、単4形電池も使えるようにすることが最初に決まり、単1形〜単4形までの電池がどれでも使えるようにしました。加えて、使いかけの電池でも液もれ等のトラブルなく使えなければいけない。じゃあどうするか、となったときに浮かんだ案が「単1形〜単4形までのすべての電池を1本ずつ収納する仕様」でした。


実は、初号機が高く評価されたポイントが「使わない電池を製品内に収納しておける」という点でした。複数種類の電池が利用できるだけでなく、すぐに使用しない電池を収納しておけるのは当社の「電池がどれでもライト」だけです。4種類の電池を一度に収納するため、デザインが寸胴になることが懸念点でしたが、見た目よりも「利便性を究極に高める点」を重視しました。


大井:

当時は、徐々にLEDへの切り替えが進んでおり、リニューアルにあたり豆電球からLEDへの切り替えも決定しました。省電力で長寿命のLEDを利用することで、単4電池1本の弱い電力でも明るく照らすことができます。もしもの時にはテレビのリモコンなど他の機器から電池を取り出して使うこともできます。


さらに会議を進めていくうちに「ランタン機能」も欲しいよね、という展開に。計画停電が行われた東日本大震災では、停電時に部屋全体を明るく照らすランタンが注目されたんです。


最終的に、懐中電灯とランタンの2通りの使い方ができる仕様と、持ちづらい寸胴の本体をカバーする取っ手付きのデザインが採用されたのですが、ここまでの道のりは簡単ではありませんでした。


知られざる設計者の苦労

川端:

今回、RRスイッチ(Round Rotary Switch)と呼ばれる回転式のスイッチを新規開発したことで、「単1形〜単4形までの電池を1本ずつ収納できる仕様」を実現しています。

従来モデルのBF-104はスイッチが小さく、切り替えがしづらいという不便さがありました。より使いやすく、シンプルなスイッチを目指し、グローブ部の回転に応じ、使いたい電池の上にプラス端子を移動させるという独自の構造を構想しました。


しかし、今回のスイッチを開発する以前には、プラス端子自体をスイッチにする前例がなく、業界では常識外れなものでした。さらに、構想した回転スイッチを実現する上では、様々な課題がありました。

例えば、電池の凸部の高さ。これは電池の種類やメーカーにより様々で、同じ調子で各電池の凸部に当てるのが難しかったのです。

また、スイッチを単に各電池の上を滑らせるだけでは、電池の凸部とプラス端子が傷つきやすく、当初は接触不良や操作感の不良といったものが出ました。そのため、これらを一つ一つ解決していく必要がありました。


これらの課題をどのように解決することができるのか。

作ってはやり直し、作ってはやり直しの試行錯誤の毎日で、当時はこの設計のことばかり考えていました。


これがRRスイッチの動きを表した図です。


電池の凸部の高さ違いに対応するために、スプリングによってプラス端子を上下動させればよいと考え、次の電池に移動する間はプラス端子は持ち上がり、電池の凸部から素早く離れる設計にしました。プラス端子は電池に当たる位置でのみ、ピンポイントで降りてくるようにしています。

この仕組みによって、プラス端子と電池の凸部の摩擦を限りなくなくし、耐久性を実現しました。

また、スイッチの評価試験では、アルカリ乾電池やマンガン乾電池、海外製の電池など様々な電池を使用し、電池の形状クセによって問題が出ないかを確かめました。


試作品が出来上がるとメンバーに使用感を確かめてもらい、意見交換をしていくのですが、そこで新たなアイデアが出てきました。各電池の合わせ位置の間に「OFF」ストップを入れたら使いやすくなるのではないか、というものでした。



大井:

利便性を追求する方針を貫き、デザインもスマートさを捨て使い勝手を優先しました。デザイナーは、「取っ手など付属物を付けないほうが美しい」と主張しましたが、これだけ幅のある胴体なので、手の小さなお子様や女性は持ちづらくなってしまいます。


結果的に手のひらの標準サイズに合わせたコンパクトな取っ手を付けました。「多少ブサイクだけど、使っているうちにかわいく見えてくるよ」とデザイナーを説得して(笑)。

発売から累計出荷台数100万台(※1)を突破

杉山:

このようにリニューアルされ2013年に単1形〜単4形までの電池に対応した「電池がどれでもライト BF-BM10」が発売されました。電池寿命も当社の乾電池エボルタNEOの使用で約97時間30分(※2)と、非常に長もちします。

電池がどれでもライトは、全国の家電量販店、スーパーマーケット、ホームセンター、ネットのショッピングサイトなどで取り扱っています。グッドデザイン賞の受賞やTV・雑誌などのメディアで「注目のアイディアグッズ」として取り上げられたこともあり、販売は好調で昨年11月末の時点でシリーズ累計100万台(※1)を突破することができました。


PR戦略は日頃から万が一の災害時に備えていただきたい「もしもの備え」に重点を置き、店頭での訴求やWEB広告での訴求はもちろん、最近はSNSやYouTubeを活用したマーケティングも展開しています。


2016年にはお客様の声とご家庭の電池保有率の実態を反映して、単3形・単4形のどちらか1本に対応した「電池がどっちかライト BF-BM01P」もラインアップに加えました。

BF-BM10はミニペットボトルと、BF-BM01Pは缶コーヒーとほぼ同サイズでとてもコンパクトなので、非常用リュックに入れてもかさばりません。



防災グッズは、常に手元に置いておき、いざというときにすぐに使える状態にしておくのが一番です。しかし、台風や災害が起きたときに慌てて買いに行く方が多いのが現状で、どうしても災害時に一気に在庫がなくなってしまいます。そのため、年間を通して防災グッズを備えておく重要性をお客様にご理解いただけるよう、PRやマーケティングを進めていきたいですね。


※1:2013年1月から2020年11月末 シリーズ累計出荷台数。

※2:乾電池エボルタNEOを単1形~単4形まで全サイズ使用時の合計時間。連続使用時は、各サイズのスイッチの切り替え作業が必要です。(単1形:約55時間 単2形:約27時間30分 単3形:約11時間30分 単4形:約3時間30分)


▼電池がどれでもライト 商品について詳しくはこちら

https://panasonic.jp/battery/products/flashlight/bf-bm10.html


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