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社長へ直談判して実現。異例の開発スピードでリリースした「ワクチン余剰マッチングシステム」開発の裏側

著者: アルカディア・システムズ株式会社

アルカディア・システムズ株式会社は、創業34年の独立系のITソリューションベンダーです。自社のパッケージシステムとして、CEIA(医療機器管理システム)、Seraph(透析業務支援システム)、DIEMAS(緊急時透析情報共有マッピングシステム)、等を提供し、医療にかかわる方々をシステム面からサポートしています。


企業HP URL:https://arc-mec.com/


今年の8月にVAMCS(ワクチン余剰マッチングシステム)の提供を開始しました。ワクチン接種を急ぐ状況の中、打ちたい人が中々打てない一方で当日、急なキャンセルが出た際には破棄せざるを得ない―そんな医療従事者の課題を解決すべく、起案から2カ月という異例の開発スピードでリリースしたシステムがVAMCSです。


今回は企画責任者の和田、開発担当者の鈴木より、リリースまでの経緯と開発の裏側をご紹介します。

VAMCS企画責任者:和田

クリニックの声から開発を決意

和田:今回の開発は、6月にワクチン接種が高齢者からスタートした際、福岡市の福岡東ほばしらクリニックの杉本様から相談をいただいたことから始まりました。

「ワクチンが余った際に、施設間で過不足を把握し、融通しあえるよう可視化したい」

そのシステムの基盤は、弊社が以前開発したDIEMASの一部を流用すれば可能と判断し、既存プログラムを一部改修しすぐに提供しました。


ただ、このシステムには限界がありました。あくまでも医療機関同士の連携であるため、ワクチン接種をする方がクリニックにいない場合は結局融通ができない問題があったんです。それでは根本的な解決はなりません。

そこで、キャンセル待ち希望者を広く一般に募集し、ワクチンの余剰が出た際に自動でマッチングするシステムが有効ではないかと考え着きました。すぐに企画書にまとめ、福岡のクリニックの杉本様に提案したところ、非常に有効なシステムになるとすぐに同意いただき、福岡市のワクチンサポート受付に企画書を提案していただけました。


結果は残念ながら、「現時点ではそのような課題は現場では上がっていないので回答しようがない。」というものでした。


そこで、これまで培った医療関係の方にお願いし、市町村に提案する機会をいただきました。

しかし、

「一般接種が始まって通常の予約対応もおぼつかない中、余ったワクチンのことまで考えられない」

「余ったワクチンの処分についてはクリニックに任せているため、市としては関与しない」

「キャンセル待ちの仕組みはすでにあるため不要(電話連絡の仕組み)」

といった声が多く、結果、どの市町村も相手にもしていただけませんでした。


役員会で一度は却下。社長に直談判し開発スタート

和田:市町村での導入が絶望的な状況である中、各クリニックへの提案に切り替えようと考えました。ただそうなると導入されるかわからないシステムに投資をすることになります。経営判断を仰ぐ案件となるため、すぐに役員会へ議案の提案をしました。しかし、役員会では、投資金額以上に、社会に注目されるシステムである以上、品質とセキュリティ、アクセスの可用性についてかなり慎重に考えるべきとの意見が大半で、決議はおりませんでした。


ただ、このシステムはリリースが遅れると社会的に意味がないものとなってしまいます。そこで、社長の小幡に直談判し、役員会決議を介さずに開発をスタート。お叱りを覚悟で役員会には開発がほぼ完了した状態での事後報告を行いました。

[画像:企画者の和田と打ち合わせをする開発者鈴木]

短納期という壁との戦い

和田:役員の判断を待たず、進めたこともあり、限られたメンバーで開発を進めるうちに、納期との闘いとなり、厳しい状況が続いてしまいました。そこに手を差し伸べてくれたのが中部エリア責任者の取締役 曽山です。

役員会では曽山が一番反対していたんですが、限られたメンバーで必死になって取組んでいる状況をみて、中部のエースと呼ばれる鈴木を大阪に送り込んでくれました。

鈴木は、金曜日にプロジェクトの状況と開発のリーダーとして抜擢されたことを聞くと、土日返上で開発内容を把握し、月曜日に大阪事務所に入ってくれたんです。


鈴木:チームメンバーの顔合わせにて最初に告げられたのは「予定していたチームメンバーが体調不良により出社できない」という情報でした。かなり衝撃的な内容だったんですが、これを理由にリリース期日を延長させることなどあってはならないと奮起し、今回のシステムの肝となる余剰ワクチンと接種希望者のマッチング優先順位の判定部分を検証からはじめました。

ワクチンの有効期限が短いことから、いかに効率的に希望者とマッチングできるかに重点をおき、希望者のマッチング待ち登録順に余剰ワクチン発生案内を送る仕組みを構築していきました。

当初大阪出張は2泊3日の予定だったんですが、品質を安定させるために1日分の追加作業が必要となり、朝8時にチェックアウトしたホテルへ同日25時にチェックインすることになりました。同じホテルに同じ日にチェックアウトしてチェックインするのはIT業界あるあるなのかもしれません。(笑)

大阪拠点とWEB会議を行う中部事業部のメンバー


和田:あの時の鈴木の活躍には助けられました!

鈴木:正直厳しかったですが、自分の仕事がこの新型コロナウイルスという社会課題を解決する役に立つと思うと本当に頑張れました。その後も開発メンバーとして追加機能リリースまで担当することになりました。

和田:最終的には、鈴木さん達の活躍により、目標としていた期日通りにリリースしました。導入に協力いただいたクリニック様の積極的な活用もあり、接種希望者は日に日に増えてとてもうれしかったですね。また、鈴木さんは、本当にユーザー目線でシステムを作ってくれました。私が想定できていない画面遷移などを提案いただきました。

大きかったリリース後の反響

和田:無事に予定通りリリースができましたが、何よりも広く活用されることが大切です。弊社としてはじめてプレスリリース配信サービスを利用して、メディアへ発信しました。


「VAMCS」提供開始時のプレスリリース:

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000005.000073131.html



多くのWEB媒体に取り上げられた結果、著名なTwitterアカウントでもつぶやいていただき、

「こんな仕組み早くほしかった」

「国の施策として取り組んでほしい」

「近くで使えるなら登録したい」

と好意的なコメントが多数寄せられました。


その後、TV媒体(九州地区及び全国放送)でも取り上げられ、システムが多くの医療従事者に知ってもらうきっかけとなりました。

多くのお問い合わせもいただき、現在では18施設1200人が登録利用しています。


[画像:医療施設で導入されている様子、サービスの画面など]


和田:メディアにも注目いただき、テレビでも取り上げられて、本当に良い取り組みができたと実感しています。

鈴木:私たちもテレビで取り上げられるシステムを作ることができて、誇りを感じます。利用者の声で「すぐに接種できてうれしかった」というメッセージを聞いたときは、このシステムを作って本当によかったと実感できました。

和田:この放送をきっかけにより多くの方に活用いただけるシステムになったのではないかと思います。

”3回目のワクチン”にも対応したい

和田:現在では2回目のワクチン接種も多くの方が終えており、利用が落ち着いている状態です。今後は、ワクチン接種3回目を実施する社会の動きにあわせて、このシステムも3回目の接種のキャンセル待ちと余剰ワクチンをマッチングできるようにシステム改修を予定していています。

しかし、2回目をほぼ打ち終えたこの状況が、余剰が出た際にワクチンを廃棄してしまう状況を生んでしまっているという課題が浮かんでいます。一刻も早く、政府の方針、接種券を発行し、3回目のワクチン接種を早急に認めることが、安心して暮らせる日常に大切なことと考えています。

そして、本システムがその中で少しでも貢献できれば嬉しいです。今後の機能改修にもぜひご期待ください。



アルカディア・システムズ株式会社

1988年の創業以来、ITの分野に特化し、医療現場で役に立つソリューションを提供。

2021年2月に東京都透析医会、東京都臨床工学技士会と医工連携として、DIEMAS(緊急時透析情報共有マッピングシステム)を開発。他に自社の医療系パッケージシステムとして、CEIA(医療機器管理システム)とSeraph(透析業務支援システム)がある。


<会社概要>

●会社名:アルカディア・システムズ株式会社(Arcadia Systems Inc.)

●所在地:大阪府大阪市淀川区西中島6丁目1番1号 新大阪プライムタワー20階

●設立:1988年5月12日

●代表取締役:小幡忠信

●事業内容:医療システムソリューション、ヘルスケア事業、技術支援、システムソリューション事業、

●コーポレートサイト:https://arc-mec.com/ 




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