Mixpanelカスタマーサクセスが考える「リテンション分析が必要な理由」
グローバルで6千社以上の導入実績をもつプロダクト分析ツール「Mixpanel」のカスタマーサクセス担当として、日々世界中のデジタル企業を支援しているヴェロニカ・チェン氏に、リテンション分析がなぜ必要なのかについて、話を聞きました。
リテンションの計測は、なぜ必要なのか
よくある誤解に、「確実にユーザー数(user base)が成長し続けているなら、それで十分だろう」というものがあります。確かにユーザー数が成長すれば売上が増えるので、この考え方は理にかなっているように見えるかもしれません。
それでは、今からこの誤解を解いてみたいと思います。このような質問はどうでしょう?
「既存顧客に継続して購入してもらうほうが、新規顧客を獲得するより簡単だと思いますか?」
間違いなく、既存顧客に継続して購入してもらうほうが簡単です。既存顧客はプロダクトが持つ価値を理解しているため、もっと購入してもらえるように説得する方が、はるかに簡単だからです。
ところで、リテンションもまた、企業の成否を分ける力を持っています。皆さまもご存じの有名企業である、FacebookやSpotifyの成功の一因をご存じでしょうか。FacebookやSpotifyは、同じカテゴリの他のプロダクトよりも、高いリテンション率を保持しているのです。この要因は、次の3点で説明できます。
- リテンション率が高い企業は、アクイジション(獲得)の好循環を促進させることができます。アクイジションの好循環が、さらなる成長と収益をもたらします。
- 顧客のリテンション期間が長ければ長い企業ほど、マネタイズの機会が増えます。
- リテンションが向上すると、企業はユーザーからより速く資金を回収することができます。これにより、最初の顧客獲得に要したコストを回収するまでの時間が短縮され、その分を成長のための再投資に回すことが可能になります。
このようなことから、450人以上のプロダクト担当者を対象に行ったグローバル調査において、リテンションがプロダクトチームにとって最も重要な指標であるという結果が出たのは当然だと思われます。
リテンションの測定と分析のステップ
1. 自社プロダクトにとってのリテンションとは何かを、明確にする
多くの人がリテンションと収益を同一視しています(例:「有料ユーザーは、リピーター顧客である」など)。このロジックでは、いつ顧客が解約するかを予測することが難しくなってしまいます。これを把握できなければ、解約を防ぐためのアクションを取ることができません。
プロダクトの使用状況(使用の深さや頻度)と結びついたリテンション指標は、より良い解約の予測因子であり、プロダクトチームが次のアクションを決める上で、より役立つKPIとなります。
ユーザーがプロダクトから価値を得ていることを示す、イベントやアクションを繰り返し追跡することが重要です。このイベントやアクションとは、ライドシェアアプリでは「乗車完了」、メディアストリーミングサービスでは「動画を見る」など、ユーザーがログインした後に行う大事なポイントです。
エンゲージメントの深さと頻度は、プロダクトの使用間隔に依存します。例えば、毎日使うメッセージングアプリには、四半期または年2回程度利用するデジタルヘルスケアアプリに比べて、当然ユーザーがより頻繁に戻ってくることでしょう。
つまりリテンションとは、一定期間内にプロダクトを使い続けた(価値を得続けた)ユーザーの割合のことです。リテンションを計算するには、その期間終了時のアクティブユーザー数を、期間開始時のアクティブユーザー数で割り、その数字に100を掛け、%に変換します。
こうすることで、「アクティブ」に価値のない再ログインはカウントせず、大事なアクションを完了したユーザーのみをカウントすることができます。
2. 改善のための基準値を設定する
自社プロダクトのリテンションがどうあるべきかを定義したら、次はリテンション率が時間とともに向上しているかどうかを追跡していくための基準値を作るために、リテンション率の測定を開始しましょう。
そのためには、ユーザーが自社のアプリやWebサイトをどのように利用しているかを分析し、下記の計算をする必要があります。
- 特定の日に、何人が「A」というアクションをとり、その後「B」というアクションをとったのか?
- 「A」というアクションをした後、特定の期間内に「B」というアクションをするために戻ってきた人は何人いるか?
このようなデータの分析は、専用の分析ツールを使えば非常に簡単です。わずか数回のクリックで、リテンションのアクションと頻度をすばやく定義できるからです。未来のパフォーマンスのベンチマークに使用可能な、リテンションの基準値を得ることができます。
3. リテンション指標に影響を与える要因を特定する
リテンション率の基準値を追跡するだけでも、リテンションを改善するための基本的なインサイトを得ることができます。ただ、データをもっと深く掘り下げ、異なるユーザーグループのリテンション率を見れば、さらに深く理解できるかもしれません。より興味深い傾向を発見し、何がユーザーを定着させるのか、ロイヤルカスタマーになりやすいのはどのようなユーザーなのか探っていきましょう。
ユーザーのグループ分けには、ユーザーペルソナ、居住地、登録に至ったチャネル、デバイスの権限など、さまざまな方法がありますが、Mixpanelのようなプロダクト分析ツールを使えば、より深く掘り下げることが可能です。そして、実際の行動に基づいてユーザーをグループ化することができます。
これには2つの方法があります。1つ目は、「Yの期間内に、Xというアクションをした人」を追跡する方法です。ユーザーが一定の期間内に何かをした場合、そのユーザーのリテンションは高いのか低いのかを調べるということです。
もう一つの方法は、ユーザーが一定の期間内に、一定回数何かのアクションをすることで、実際にリテンションが高くなるのか、低くなるのか、あるいはまったく差がないのかを調べる方法です。
上記の例では、2週間に5回以上Webページを訪問したユーザーは、リテンション率が著しく高いことが分かります。このようなインサイトにより、プロダクトやオンボーディングフローを改善し、リテンションに影響を与える要因を促進するためのアクションを取ることができます。
自社プロダクトに適したリテンション戦略の策定
リテンション指標を測定・分析することで、ユーザーが定着しているかどうか、またその理由を可視化することができます。しかし、これは出発点に過ぎません。発見したインサイトをもとにアクションを起こさない限り、何も起こりません。
また、新しいプロダクト機能、オンボーディングフロー、価格変更などは、リテンション率に影響を与え続けるでしょう。そのため、リテンションの測定と分析は、一度だけで終わるものではないことも忘れないようにしましょう。
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