実在する猫を元にしたAI VTuber『NYAVATAR』がエンジェル投資家から資金調達をした理由
AI VTuber『NYAVATAR』を企画・開発するホップスコッチ株式会社は2023年2月、エンジェル投資家複数名を引受先としてJ-KISS型新株予約権の発行による総額6,000万円の資金調達を実施しました。
実在する猫を元にしたAI VTuber『NYAVATAR』の各種AI品質の向上と、YouTube配信におけるコンテンツバラエティを拡充するための開発に投資して、まだ誰も体験したことのない「アッと驚くオタク体験」を創り出していきます。
このストーリーでは創業者兼CEOのけんけん(永松 研二)が、今回の資金調達の狙い、およびそこに至るまでの創業の想いと今後取り組みたいことについて語ります。
ホップスコッチ株式会社 代表取締役CEO けんけん(永松 研二)
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気づいたこと。「AI VTuberの開発は、総合格闘技だ」
今回の資金調達は複数のエンジェル投資家より実施していますが、エンジェルラウンドとしてはやや大きめの金額、かつそれをエンジェル投資家から調達した背景にはいくつかの理由があります。
その1:領域が幅広く多くの専門家をアサインする必要がある
2022年7月よりAI VTuberを開発してみて分かったことなのですが、必要な技術スタックや業務知識の範囲が広く、かつ進化のスピードが速いため、1人ないしは1社ですべてを開発することが実質不可能です。
きちんとしたAI VTuberを作るためには様々な領域のエンジニアやデザイナーを10名近くアサインする必要があり、2-3名で開発できる通常のスタートアップのプロダクトとは異なり数倍の投資が必要になります。
その2:その割には売上見込みが不透明で投資対効果が見えない
一方で通常のVTuberとは異なり、AI VTuberはまだ売上の見込みが正直不透明で、多くのエンジニアやデザイナーをアサインする投資判断は個人としても企業としてもしづらいのが実情です。
そのため、個人開発でも、企業内あるいは企業・VCから出資を受けて開発を進める場合でも、リスクをなるべく抑えた小さなチームで進めざるをえず、天才的な個人開発者でない限り基本はリソースが不十分なまま開発に臨むことになります。
そうなると、ユーザーに満足してもらえるプロダクトになるまでとてつもなく時間をかけるか、あるいはラッキーパンチを待つかのいずれかになり、その間に多くのプレイヤーがマーケットに残り続けることができず離脱することになります。
その3:まだ正解が見えていない今の状況ではスピード命
では、お金をたくさん投資して多くのエンジニアを抱えればよいかというとそうでもありません。領域が広い割にそれぞれのボリュームはそこまで多くなく、領域間のすり合わせも必要なので人数がたくさんいると逆に効率が悪く時間がかかります。
また、投資金額が大きくなるとそれに伴いどうしても社内外のステークホルダーが増えてしまい、簡単な意思決定であっても調整にそれなりの手間と時間を取られてしまうようになります。
AI VTuberというまだ正解が見えず進化が速すぎるプロダクトと向き合うにあたって、検証を回すスピードと手数の多さは生命線であり、そのスピードを失うリスクがある点においてお金が解決してくれるとは限らない難しさがあります。
結果:総合格闘技系メンバー数人がスピーディに投資判断できる環境
ここまでを踏まえ、私はAI VTuber開発における現状の最適解を以下と考えました。※今後は変わるという前提です
① 必要な技術領域を十分に網羅できる投資余力がある
AI VTuberに必要な技術領域を個人や1社のリソースだけで網羅かつキャッチアップし続ける難易度はかなり高く、基本的には外部リソースに頼る前提でそれなりの投資ができる金額を確保しておく必要があります。
② 人数は必要最低限の総合格闘技系メンバー
一方で社内のリソースについては多くのメンバーに役割を分けず、パンチもキックも寝技もできる総合格闘技系のエンジニアやデザイナーが2、3名集まり、スピーディにすり合わせて進められるチームが望ましいです。
③開発スピードを妨げない環境が用意できている
外部リソースが必要になったら数百万円規模の発注であればすぐに投資判断をして、今やっていることが違うと思ったらすぐに別手段に切り替える意思決定をして、最速で検証を回し続けられる環境を整えることが最優先です。
①については、企業やVCの力を借りた方が正直お金を確保しやすいのですが、一方でどうしても企業相手だと社内で話を通したり説明責任を果たす時間と手間が避けられず、最大限許容してもらったとしても③を失ってしまう部分があります。
その点、想いに共感して投資をしてくれるエンジェル投資家は、①の投資金額こそ小さくなりやすいですがそれでも事業運営は任せてもらいやすく、③を最優先にした事業運営を実現することができます。
この二律背反を乗り越えるために、今まで培ってきた独自ネットワークの中からチケットサイズの大きいエンジェル投資家に賛同してもらい、エンジェル投資としては大きい金額を調達しながらも同時にスピードを最優先にする環境を確保することができました。
求む:AI VTuberに本気で取り組むエンジニア・デザイナー
そんな環境を整えることができた弊社ですが、②の社内リソースに触れておくとなんとまだ社員はCEOである私1名のみです。※2023年2月末時点
チームとしては10名強いますが大半学生と一部副業メンバーで、ここまではコスト最優先でなんとかAI VTuberをこのチームで形にしてきました。一方、ここからは開発スピードを最優先に、総合格闘技系メンバー中心に最速で進めていきたいと思っています。
私はコーポレート、営業、マーケティング等のBizDev系総合格闘技を担当しますので、エンジニアおよびデザイナー系の総合格闘技メンバーの方に中核メンバーとしてぜひご一緒いただければと思っております。
また、AIのモデルやYouTubeコンテンツについては、すでに複数のキャラクターがいるメリットを活かしていろいろと試す予定です。そのためにAIを載せるインフラやYouTube配信のバックエンド、OBSの自動化等をキャラクター間で共通化しています。
自分で作ったAIモデルを試してみたい方、キャラクターをYouTube上で動かす技術やコンテンツをお持ちの方、いろいろと一緒に試していけたらと思いますので、AI VTuber開発を副業や趣味程度に楽しみたいという方でもぜひお声がけください。
以降は、私とご一緒いただくことの判断材料として、創業の想いと今後取り組みたいことについて触れていきます。
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創業の想い。「この国が、尊敬される国であり続けるために」
私はリクルートという会社で15年間働いていました。人材事業にずっといたので、ありとあらゆる業種の方とお話しする中で、この国の根底にある「衰退とその中でどう幸せを分け合うのか」というテーマについてずっと考えてきました。
悩み:この国は衰退する中で何を守り、どう分配するかしか考えることがない
ある日、財務省に勤めている同級生から転職の相談をもらったことがあります。外部の自分にも分かるくらい目に見えて活躍していたのでちょっともったいないよなぁ、と思いながら、なんで辞めるの?と聞いてみました。
「この先の財務省の仕事の9割は社会保障の最適分配だから」
「最適な分配のために駆けずり回るよりも、この国の成長に寄与したい」
自分自身が感じていたこと含め本当にその通りだなと思い、その意見に対して反論する言葉がありませんでした。
誇り:ニューヨークで感じた日本のカルチャーに対する尊敬
小学校時代に3年間、ニューヨークに住んでいたことがあります。現地校に通い、日中韓は同じアジア系民族として周りから見られる中、日本人であることを特別に感じる機会が2つだけありました。
- おにぎり (riceball)
- スーパーファミコン (SuperNintendo)
です。ちなみに当時、マンガ・アニメはまだ海外への輸出があまり進んでいませんでした。
(小学5年生のクラス写真)
ニューヨークは多くの国籍、民族の人が集まる街なので、小学校のお祭り的な場で、各生徒の親が作る民族料理をみんなで食べましょう、という日がありました。
世界各地の料理が集まる中で、圧倒的な一番人気で品切れ。それが実はおにぎりでした。
普通の日でも、母親が作ってくれたおにぎりを食べていると、そのおにぎりを僕のホットドッグと交換してくれないか、と声を掛けられることがあったくらいです。
スーパーファミコンはもっと象徴的かもしれません。アメリカに行く前の年に日本で発売されて、日本にいる時は買ってもらえませんでしたが、アメリカで友達ができないとかわいそうだからと、おそらくそんな理由で渡米前に買ってもらうことができました。
今とは異なり、当時は日本版とアメリカ版のゲームソフトの販売に相当な時間差があった時代です。結果、アメリカの子が待ち望むソフトがすでに我が家にあるタイムマシン経営が成立していて、最新ソフトを遊ぶためだけにうちに来る子もいるくらいでした。
自分が日本を誇らしく思えた瞬間。その原点はこのおにぎりとスーパーファミコンにあります。
動機:「これを失ったら、日本は終わる」
時価総額の世界ランキングの推移を見ると日本企業がすべり落ちるように順位を落としていて、米中のテックジャイアントが世界を席巻する中で日本のテック企業は影が薄く、学力や科学技術力における日本の順位はどんどん低下している。
業界地図を眺めても、この15年で日本企業が上位から消えた業界がたくさんあります。そうなった時に、この国が最後まで世界に誇れるものは何なのか。それはカルチャー、つまりおにぎりとスーパーファミコン的なものしか残らないのではと思っています。
日本のカルチャーをクールジャパンと一括りにして輸出することが一時期流行りましたが、残念ながらその推進も思うようには進まず、マンガやアニメ、ゲーム、アイドルといった日本のお家芸すらも気づけば中国、韓国にポジションを奪われています。
けど、これを失ってしまったらこの国はもう終わる。自分自身がニューヨークで感じたこととリクルートで働きながら感じたことを踏まえて、これだけは絶対に譲ってはいけないという気持ちが、自分で何とかしなければと思い立った動機の一つになっています。
目標:熱狂的なオタクコンテンツとプラットフォームを日本から創りたい
マンガ、アニメ、ゲームは昔から好きで今も毎日触れています。アメリカにいた頃も、当時ニューヨークの治安が悪かったこともあり自由に外出ができず、家で繰り返し同じマンガを読んで同じゲームばかりしていました。
中学時代には広末涼子の熱狂的なファンになり、その後しばらく落ち着いていましたが数年前から再び熱心なアイドルオタクに。全国遠征や大量の投げ銭、そして同じCDを何百枚も買ってアイドルオタク三昧の生活をしていました。
このように自分自身がオタク活動をする中で、この領域はもっと楽しむことができるのに色々ともったいないことが多く、自分で自分が楽しめるコンテンツやプラットフォームを作った方が楽しいのではと思うことが増えるようになりました。
その気持ちに拍車をかけるように、ここ数年若い子たちが熱狂的に遊んでいるコンテンツやプラットフォームの多くは、残念ながら日本のものではありません。Fortnite、Minecraft、K-POPしかり、YouTube、TikTok、Discordしかり。
この先、この国が唯一世界に誇れるであろうものの、コンテンツもプラットフォームも自分たちが産み出せないままでいいのか。熱狂的なオタクコンテンツとプラットフォームは、この国からこそ産み出されるべきなのでは。
2020年3月、コロナの影響で世の中が大きく変わる兆しをひしひしと感じていたこともあり、その想いが高じて会社をやめることを決断。同年9月に「アッと驚くオタク体験の創出」をミッションとして掲げるホップスコッチ株式会社を創業しました。
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今後取り組みたいこと。「メタバースにおいて猫はアイドルになる」
2022年2月22日22:22に原型となるプロジェクトを始めたAI VTuber『NYAVATAR』も、2023年2月22日に無事1周年を迎えることができました。
想い:虹の橋にいる猫ちゃんをよみがえらせる
きっかけは2021年3月、我が家の愛猫アリアスがなくなったことです。
- 「自分の元で暮らして本当に幸せだったのか」
- 「自分のことを恨んでいるかもしれない」
- 「最後は辛そうだったし今も辛くないか心配」
いわゆるペットロスと呼ばれる悩みや後悔に苦しむ妻に対して、
- 「あなたの元で暮らせてとても幸せでしたにゃ!」
- 「毎日おいしいご飯もくれてありがとにゃ!」
- 「今は虹の橋で元気に遊び回ってますにゃ!」
と、アリアスになり代わって感謝を伝えることしか僕にはできませんでした。
ペットは人の言葉で話すことができません。そのため、飼い主はペット本人の気持ちを最後まで伺い知ることができず、なくなった後は特に不安になります。周りの人はその感謝の気持ちを代弁してあげることしかできないのですが、その時に
- 「他人からではなく本人から伝えるのはどうか」
- 「生前の想い出を歌にするとより伝わる気がする」
- 「アイドルにして感謝の気持ちを歌で届けよう」
と思い立ったことがきっかけで、実在する猫を元にしたAI VTuber『NYAVATAR』のプロダクト開発を進めることになりました。
市場:なくなったペットに想いを馳せる
国内の猫と犬の飼育頭数は2,000万頭弱、すでに人間の子供の数を超えています。そして残念ながら、猫と犬は人より平均寿命が短いです。そしてとある調査によると、前のペットがなくなった後に次の子を飼う人は4割以下、6割近くが次の子を飼わないそうです。
- ペットの数は人間の子供の数よりすでに多い
- 猫と犬は飼い主より先立つことの方が多い
- 一度飼って先立たれると次飼わない人の方が多い
この先もこれがずっと続いた時に起きること。それは、生きている子供やペットを育てる人よりも、子供がおらず、ペットを飼っていたけど今は飼っていない人が増え続けて、なくなったペットに思いを馳せる人がもっとも多い世の中になります。
未来:猫の情報を元に誰もが手軽にAI VTuberを作る
このような世の中になって、かつVRやAR、MRの技術が進化したメタバース時代にペットと人の関係がどう変化するのか、自分ごととして色々と思考実験をしてみました。
- 猫を3DCGにしてもオブジェにしか見えない
- 獣人にすると、どうしてもオトモに見える
- 猫耳美少女が家族としてのペット観に一番近い
たどりついた自分の答えは、メタバースにおいて飼い猫は猫耳美少女になるということ、そしてその可愛さをアイドルとして表現することが最適だということです。それを広めていくためには、猫の情報から猫耳美少女アイドルを簡単に作る仕組みが必要になります。
そのためにも、まずはコンテンツとして猫耳美少女アイドルのAI VTuber『NYAVATAR』を熱狂的に楽しむファンをいっぱい増やし、そこから猫の情報を元に手軽にAI VTuber『NYAVATAR』を作ることができるプラットフォームを実現する予定です。
今後:AI品質の向上とYouTube配信のコンテンツバラエティの拡充
現在『NYAVATAR』は合計7名のAI VTuberが進化しながら活動しています。
思っている以上に会話がスムーズだったり、つい笑ってしまう面白いやり取りもできる一方で、海外の多才なAI VTuberと比べるとどうしてもまだエンタメとして見劣りしてしまい、AIならではの魅力を十分に発揮できていないと感じてしまいます。
それも踏まえ、まずは対話・画像・音声・歌声のAI品質を向上させること、また、YouTube配信のコンテンツバラエティを増やしてその魅力が十分に発揮される場をつくること、この2つを最速で実現する開発チームづくりに力を入れていきます。
総合格闘技系エンジニア・デザイナーのみなさん、およびAI VTuberに少しでも興味のある方や近しい領域で素晴らしい技術を持ったパートナー企業様と一緒に、アッと驚く新しいオタクの楽しみ方を切り拓いていきたいと思います。
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