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人の数だけ、物語がある

77歳の超人気マナー講師が語る人も自分も幸せにする「たったひとつのマナー」とは?

著者: 株式会社主婦の友社


コロナ禍や戦争、少し前までは考えられなかったような世界を生きている私たち。先行きがはっきりしない時代、息苦しさを感じている人も増えています。

そんな生きづらい時代に、マナーを通じて幸せに生きる術を伝え続ける77歳の現役マナー講師・岩下宣子さん。半世紀にわたる講師歴の中から、「本当に大切なたったひとつのこと」をまとめた『77歳の現役講師師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』(主婦の友社)が刊行されました。かろやかな人づきあい、本物の思いやり、雰囲気あるたたずまい、感じのいい所作……マナーを味方に思い描く自分に近づき、人生を好転させるヒントが詰まった一冊です。

「マナーを味方に多くの幸せがみなさんに舞い込みますように」と願う岩下さんが考える真のマナーとは、そして伝え続けたいたったひとつのこととは何か? その半生とともに語ってくれました。

(取材・文 神 素子 撮影 千葉 充)

30歳のとき3日間通ったマナー講座が運命を変えた


「まさか自分がマナー講師になるなんて、夢にも思っていなかったんですよ」

ときに少女のようにコロコロと笑いながら、岩下さんはマナー講師になったいきさつを話してくれた。

「そもそも私は東京の西神田の長屋育ち。セレブなんて程遠い人間なんです。新卒で就職した会社でマナーを教わり、後輩たちに教えたこともありましたけど、その程度。3年後には結婚して寿退社しました」

岩下さんの運命が変わったのは、30歳のときのことだ。母に「子どもをみてあげるから何か習いに行きなさい」と言われ、デパートの作法教室に3日間通った。その直後、主催者から突然電話がかかってきたのだ。

「マナー講師になりませんか?って。びっくりよね、素人の私に。聞くと、ご事情があって新たにマナー講師を育てる必要があるということでした。困っているのにお断りするのも……と思って、マナー講師になるための研修を受けることになったんです」


右も左もわからないマナーの世界は、教わることすべてが新鮮で、発見の毎日だったという。しかし学ぶにつれ、岩下さんの心の中に小さな疑問がわくようになった。

「なぜこんなマナーがあるのかな?って知りたくなるんですよね。マナーの教則本には『こうしなさい』としか書いていないことが多いので、大きな書店や国立図書館に足を運んで調べました。歴史の本や茶の湯の本、運動の本とか、一見、関係なさそうな本にその答えが見つかることも多いんです。熱意をもって調べていると、本に呼ばれるの。『ここに書いてるよ』って。それが面白くて、夢中で調べました」


▲マナー講師を始めたころ。和食のマナーを教えるため、着物で実演。


新渡戸稲造に「頭を殴られた」と感じた瞬間


調べれば調べるほど、マナーとはけっして不変の常識ではないことがわかり始めた。

時代とともに変化するのがマナー。講座を受講する生徒たちに「こういうときにはどうしたらいいですか?」と質問される答えが、教則本にないことも少なくない。何を拠り所に伝えたらいいのか……。

迷っているとき、また岩下さんは一冊の本に「呼ばれ」た。新渡戸稲造の『武士道』だった。そこにはこんな言葉があった。

「体裁を気にして行うならば、礼儀とはあさましい行為である。

真の礼儀とは、相手に対する思いやりの気持ちがあらわれたもの」

さらにこんなことも書かれていた。

「礼儀の最高の姿は、愛と変わりありません」と。



「びっくりしました。もう、本当にびっくりです」と岩下さんは言う。

「人によく思われるため、自分が恥をかかないようにするため、そんなのはマナーじゃない。岩下宣子、おまえのマナーはあさましいのだと、頭をガツンと殴られた気分でした」

マナーとは何か――。その答えが、岩下さんの心の深い部分にストンと落ちた瞬間だった。

▲書籍『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』より 


「マナーは相手を思いやる心を見える形にしたもので、愛と同じだって教えてもらいました。まわりの人を大切にするために学ぶのがマナーなのだと素直に理解できたのです」

時代が変わっても、言葉や文化が違っても、相手を思いやる心があれば「マナー違反」などは存在しない。どんなに新しいコミュニケーション手段が登場しても、思いやりを起点にすればそれがマナーになる。そう確信した瞬間だった。

「がぜん、マナーの仕事が楽しくなりました」


▲20数年前のマナー研修。ホワイトボードに「マナーは愛です」とある。


「ふんぞり返った重役」も身をのり出すマナー講義に


岩下さんの人生が再び大きく動いたのは、そのあと間もなくのころだった。

たまたま受けた新聞のインタビュー記事を見て、民営化されたNTTから「社員にビジネスマナーを教えてほしい」と依頼があったのだ。

「たった3年OLしていただけの私が大企業の方相手にビジネスマナーなんて、おかしいでしょ? 最初はお断りするつもりでした。でも『マナーは愛』『根底にあるのは思いやり』という部分さえブレなければ、ビジネスシーンでも思いやりの心を伝えることができるんじゃないかなと思ったの。無謀なんですけどねぇ(笑)」


案の定、最初は苦戦した。相手は元国営企業の重役クラス。マナーなんて時間のムダとばかりに、腕組みしながらふんぞり返っていた。

しかし彼らに対峙した岩下さんは「おもしろい」と思った。逃げもせず、媚びもせず、ただまっすぐに向き合うことにした。

「どうすれば興味を持ってもらえるのか、喜んでもらえるのか、考えました。彼らが食いつきそうなネタを探して紹介すると、ふんぞり返っていた人が前のめりになったんです。心の中でガッツポーズです!」


▲35年前のNTTマナー研修の際の記念テレフォンカード


岩下流のマナー講義の基本は、ただそう決まっていると形だけ教えるのではなく、なぜそうなのかを、文化や習慣、ときにはそこに込められた思いなども含めて伝えること。

海外と取引のありそうな相手には、欧米の文化とあわせてマナーを紹介すると、がぜん興味を持ってもらえた。たとえば、洋室では目上の人が入室すると立ち上がるのがマナー、和室では目上の人が入室すると、座って頭を下げるのがマナー、それはなぜか? 

「西洋では『安楽の姿勢』で格の上下が決まります。立っている人よりは座っている人の方がリラックスしているので、格下の人は立つんです。でも日本は『目線の位置』で格の上下が決まります。目線の高い人が偉い。だからお殿さまは立って入室しますが、家来は座って入室するんです」


▲書籍『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』より



ただの豆知識ではない。異文化を理解し思いやることの大切さ、そしてそれがビジネスの成功にもつながることを岩下さんは「ふんぞり返った重役」たちに丁寧に伝え続けた。いつしか彼らの背筋は伸び、質問が飛び交うようになった。

以来40年近く。NTTとのお付き合いは続き、関連会社の社員研修をいまも担当している。


「名刺交換にも心をのせる」当時、堅苦しいものだったビジネスマナーに新風を吹き込んだ岩下さんは、今やビジネスマナーの第一人者として、70代の今も企業や自治体からの依頼は絶えない。新入社員のマナー研修で名刺の渡し方を教えた社員が、気づけば課長や部長になってあいさつに来ると言う。

「あの頃の私が『偉ぶったおじさんたち。こんな会社、二度と来るもんか』って思っていたらつながらなかったご縁です。なんとかこっちを見て欲しいっていう情熱は、人に伝わるものなのですね」


「私もハッピー、あなたもハッピー」そのためにマナーはある


いまも講演会では、つまらなそうにしている人に向けて話すようにしている。この人は何を求めているのだろう、どんな言葉に反応するのだろう、と考える。

「マナーとは、相手を大切に思う心ですよね。会場にいるのが100人でも500人でも、ひとりの人に話しかけるつもりで、その人をいちばん大切にするという気持ちで話そうと思っています」



最近は、思いやりの意味をはき違える人が多いと岩下さんは感じている。

「人を大切にしましょうと伝えると、『自分のことをがまんしても、人を大切にするべきなのだ』と考えてしまうんですね。でもそうじゃない。自分をちゃんと大切にできない人は、他人を大切にすることもできません。私はハッピー、あなたもハッピー、そういう関係になるためにマナーがあるのです」


▲書籍『77歳の現役講師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント』より



マナーは堅苦しい、息苦しいものではなく、むしろ自分を自由にしてくれるものだともいう。

「決まり事があるからその場でのふるまいがわかり、相手を気づかう余裕が持てます。また、かたちがあるからこそ、マナーを共通言語として、思いやりの心を表現することもできます。『マナーは愛』の心はそういったところでも発揮されます。

そうして生まれた思いやりは、巡り巡っていつか自分に返ってきますよ」


77歳。まだまだマナーを通じて人と出会い、多くを学びたいと考えている。

「たくさんの方から元気をいただけるこの仕事が大好きなんです。

先日も、『マナーってあたたかいものなんですね』なんて感想をいただいて、とっても幸せな気持ちになりました。長生きのごほうびですね」

「マナーは愛」たったひとつのことを説いて50年、その信条はたくさんの人に伝わり、思いやりの心を広げ続けている。


▲「マナーは愛」をモットーに、人も自分も幸せにするヒントがいっぱいの新刊。


・・・・・・・・・・・・

【関連プレスリリース】

77歳・現役の超人気マナー講師が見つけた人生を好転させる術が一冊に。「幸せな人生に必要なたったひとつのこと」がわかる生き方ヒント本

https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000002156.000002372.html


【著者紹介】

岩下宜子(いわしたのりこ)

1945年東京都生まれ。共立女子短期大学卒業。キッコーマン入社。全日本作法会、小笠原流でマナーを学び、1985年に現代礼法研究所を設立。NPOマナー教育サポート協会理事・監査役。マナーデザイナーとして、企業、学校、団体などでマナーの指導をおこなう。「マナーは愛」をモットーに、ビジネス研修から小学校の授業まで70代の現在も全国を飛び回り、幅広い層へマナーの心を届ける。書籍・雑誌、テレビ番組の監修などでも幅広く活躍。著書・監修書に『冠婚葬祭「マナーとお金」最新ハンドブック』(主婦の友社)、『図解 社会人の基本 マナー大全』(講談社)、『12歳までに身につけたいルール・マナーの超きほん』(朝日新聞出版)など。



【書籍概要】

書名:77歳の現役講師師によるマナーの教科書 本当の幸せを手に入れるたったひとつのヒント

著者:岩下宜子

発行:主婦の友社

定価:1540円(10%税込み)

仕様:四六判・192ページ

発売日:2023年3月16日

ISBN:978-4-07-453983-3


【販売サイト】

Amazon https://www.amazon.co.jp/dp/4074539837

楽天ブックス https://books.rakuten.co.jp/rb/17427384/




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