倒産前夜のベンチャーが「レンタルChatGPTできる人」でヒットを生み出せたわけ。お客さんを中心に、ミッションへ従ってPDCAを回し続ける。
テレワーク・テクノロジーズ株式会社は“テクノロジーの力で働くをDXする”をビジョンに、2020年2月に創業しました。ワークスペースの予約サービス「テレスペ」の開発・提供を主な事業とし、コロナ禍でテレワークが進んだ個人・法人向けにサービスを提供してきました。
しかし、テレワークが一巡したことや、そもそも日本ではテレワーク=在宅ワークがメインとなったことにより売り上げは低迷。新たな資金調達も起こせない状況で赤字を計上し続け、あと残り半年でキャッシュショートする状況に陥ります。
そのような倒産寸前のベンチャー企業が、どのようにPivot(事業転換)を決断し、顧客ニーズを掴む商品を開発、ヒットを飛ばすことができたのか。本ストーリーでは、私たちが実際に歩んだ、2023年の初旬から始まったストーリーを代表の荒木からお伝えします。
(1)転機となった、2023年3月7日。
株主:「もう諦めちゃって会社精算してもいいですよ。」
最終的に判断するのは経営者だが、出資してもらった負い目で“芽が出ないサービス”をやり続けることはない。一度会社を精算してしまって、また再度チャレンジしたい事業があればその時にはまた投資するから気にするな。人生は短いのだから優秀なチームが下り坂のサービス開発に使う時間はもったいない。
そのような旨の言葉が発せられたのは、毎月恒例株主会議の席上でした。
「わかりました。ちょっと考えます。」
そう答えることが精一杯でした。サービスの停止を考えたことはなく、あまりのショックでその後数時間の記憶がはっきりとは残っていません。これが当社の転機になる、そしてAI事業やその後の「レンタルChatGPTできる人」の開発へとつながる、全ての始まりでした。
(2)48時間
その後、今から会社を精算した場合、どうなるのかシミュレーションを実施。合計1億円の資金を出してくれた投資家陣にはほぼ全額の損を出し、そして私個人では代表者保証している数千万円の借金が残ることがわかりました。
「続けるも地獄、撤退も地獄。だったらせめて。」
手元の資金は5ヶ月分、どうせ倒れるなら全部使い切って最後まで戦おうと思いました。サービスを閉じることは決断し、ここから新規事業を立ち上げてキャッシュが尽きる5ヶ月以内に会社を黒字にする。そして、そこから最低1億円のキャッシュを貯めて投資家の株を買い戻すことを決めました。
そして、自社の強みと弱みを見直し、社内に溜まっていた顧客課題を分析して、12時間後にはAI人材の育成事業に決め、自社に足りない人材へ声をかけ、ペライチのLPを作りながらプランとコンセプトをまとめて。
運命の株主会議から48時間が経過した3月9日の朝、私たちは出来立てのアイデアと一晩で作ったペライチのLPを元に、新しいサービスのプレスリリースを出しました。
今振り返っても48時間でよく新サービスが出せたものだと感心しますが、それには既存サービスを通じて溜まっていた顧客のインサイトが深く関係していました。
(2)インサイト
閉じることになったサービスの大口取引先と話す中で、当社の顧客が本当に困っていたことは“テレワークの場所手配”ではなく、テレワークデータの“分析”だということは知っていました。
「どこで働いているか、働き方のデータは溜まっていく」
「上司からもデータを解析して経営判断に使えるような結果が欲しいといわれている」
「けれどもデータを分析できる人材は部内にいない」
「ビッグデータ解析の会社に頼んだこともあるが、大したことはしてくれない」
つまりデータ分析を行えるようなデータアナリスト、いわゆるAI人材がどこにもいなかったのです。また、じゃあDXはどうしているのか?聞くと、まだ現場にはデータ分析ができる研修やリスキリング研修は降りてきていないということでした。
少子高齢化で労働人口が足りなくなっている、AIで効率化するしかない、けれどもAI人材が不足している、国を挙げてAI人材の育成が必要になっている、リスキリングに政府は5年で1兆円を投じる。
当社の掲げるビジョンは「テクノロジーを活用した働き方のDX」ですから、場所手配ではなくリスキリングも十分に事業領域内でした。
(3)4ヶ月で11回のプレスリリース
3月9日に公開したパイソンメイカーは、大変な反響でした。
1時間単位で打ち合わせを組み、顧客フィードバックや不満を元に、翌週には新しいサービスを提供し、また打ち合わせを繰り返し。そうして公開から4ヶ月で出したプレスリリースは11回。
その11回目のプレスリリースとして出したサービスが今回ヒットした「レンタルChatGPTできる人」です。
※図は3月末、とある週の打ち合わせスケジュール。
(4)「レンタルChatGPTできる人」開発前夜の試行錯誤
多くのサービスを市場投下し、その都度打ち合わせご連絡をいただいた企業とミーティングを重ね、フィードバックを集めました。
その結果、2つの大きな課題が浮かんできました
・AIやPythonではなくChatGPTにみなさん興味を持っていること
・研修や社員育成の前に、自社で何に使えるのかわからないこと
これまでにも新しいテクノロジーが出現したときに同様の課題(何に使えるか不明)はありましたが、ChatGPTの場合には、明確に時短ができます、コストカットができます。
ChatGPTは優秀な秘書ですから、どんな企業でも導入すれば生産性は上がるのです。そして何よりも、当社から見るとその企業で何にChatGPTや生成AI・AIを活用したらコストカットができるのか、利益が向上するのか、経営課題が解決するのか、透けて見えました。
「この輸入商社さんだと倉庫の在庫管理に使えそう、この飲食店チェーンだと売り上げ予測と書類整理に使えそう。」
最初は顧問サービスとして相談できるサービスを提供しましたが、顧問が何をやってくれるのかがうまく伝わらず、打ち合わせをしていても全く話がつながりません。
「顧問税理士や顧問弁護士のように、AIについて困ったらいつでも相談ください!」
そう話しても、全くミーティングをする相手には内容が伝わらないのです。
(5)レンタルChatGPTできる人の誕生
そのように悩んでいたときの、あるミーティングでのこと。打ち合わせ相手だった小さな会社の社長さんは、こんなことを言い出しました。
「荒木さんがうちに入社して手伝ってよ!副業でいいから。給料20万出すから!力を貸してくれないか?」
これを聞いた時に脳内がスパークしたことを覚えています。
「そうか、顧問じゃなじゃくレンタルなんだ。自分とCTOを貸してあげる、そう伝えたら伝わるんだ。」
相談いただいていた社長さんから、もし自分がお手伝いするとしたらどんなことをやってほしいか、何に困っているのか、色々と聞き出してサービス化したものが今回提供を開始した「レンタルChatGPTできる人」です。
サービス開始当初は、CEOである私とCTOがクライアント企業のみなさんとチームを組んでChatGPTやAIを活用した業務改善を行うサービスです。
ゆくゆくはもう少し単純な業務を任せられるサービスとして、当社スクールの卒業生(ChatGPT・生成AIを学んだプロンプトエンジニア)へ、オンラインアシスタントとして仕事が依頼できるサービスを目指しています。
当社スクールの卒業生を活用したオンラインアシスタントは、裏側でChatGPTや各種AIを活用していますから、既存のオンラインアシスタントの同程度の価格で3倍から5倍の仕事が処理できるサービスになる予定です。
一方では個人や企業社員を育成して日本のAI人材不足問題を解決し、もう一方ではその卒業生へ簡単に仕事が発注できるようにする。
そうして、AI人材の「活用」を進めることで、AIの民主化と、その先の“日本企業の生産性向上”へチャレンジしてまいります。
(6)どうしてヒットが生まれたのか
こうしてパイソンメイカー、タノメルキャリアスクール、レンタルChatGPTできる人、と顧客課題に合わせて3つのサービスを展開しています。
あの倒産を覚悟した3月7日からわずか4ヶ月後、6月の月間計上利益は1000万円規模に成長しました。
ちなみに“倒産を覚悟”は大袈裟だったんじゃないかと思われるかもしれませんが、会計ソフトを見てみると2月の売上は616円、3月の売上は5,402円だったそうです。そりゃあ株主も諦めますよね。
どうして「倒産前夜」のベンチャーが起死回生のヒットを生むことが出来たのか。それは、顧客のことだけを考えたからだと思います。
「会社を精算してもいい」という言葉を聞いた3月7日の午前10時。それまではたくさんのことを考える必要がありました。
・資金繰り
・株主
・取引先銀行
・VC等からの資金調達検討
しかし、倒産を意識したあの日から今日まではもうそんなことは頭にありませんでした。
どうやったらお客さんに喜んでもらえるか、どうやったら継続的にお客さんを支援し続けられるか。
どうせ潰れるなら、と開き直って顧客だけを見た事が良かったのだと思います。
そして、創業してからこんなにもピュアに顧客の成功を願ったのも初めてでした。
- どうやったら喜んでくれるかな
- こうしたらあのお客さんも加盟できるよね
- これって経営者は良くても社員さんかわいそうだよね
- 助成金使えたら喜んでくれるかな
株主や自社のことを考えるのではなく、常に顧客のことだけを考え続けることで社会に必要なサービスが生まれる。そう実感した4ヶ月間でした。
(7)終わりに
こうして3月7日から始まった私たちの新しい挑戦はありがたいことに急成長し、業界を問わず多くの引き合いをいただいています。直接の仕事依頼以外でも書籍の出版が2冊、数えきれないほどの業務提携依頼、研修で利用する講義動画100本の作成など、文字通り寝る暇がないほどに忙殺される毎日です。
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AI研究者の方々にリスペクトしつつ、ChatGPTなどすごいサービスを作る開発者へ感謝しつつ、当社はその先の「社会実装」の部分を担いたい。
実際に私たちの生活や仕事が具体的にどう変わるのか、どう変わったのか。
現実的にChatGPTを活用して経費が抑えられた、売り上げが上がった、という事例を多く作っていきたいと思っています。
最後に少しだけ宣伝をすると、今後はもうChatGPTが使えることの優位性は無くなるでしょう。今後は、「ChatGPT + X」が主流になっていくと思います。
「ChatGPT + Python」
「ChatGPT + Biz」
「ChatGPT + 生成AI」
あるいは、
「ChatGPT + 医療」
「ChatGPT + スポーツ」
などの業界特化も考えられます。もう魔法のようなプロンプトを見て騒ぐ時代ではなく、現実的にそれが私たちの生活や仕事や産業をどう変えていくのか、実例を出すフェーズに移ってきています。
「うちの会社もChatGPTやAIで何かできるのか?」
そう考える企業さんはぜひ「レンタルChatGPTできる人」へご相談ください。
経営者さんと、社員さん数名と、CEOの私と、当社CTOと、合計8名ほどでプロジェクトチームを組んで、御社のAI化を進めます。
半年のプロジェクトで150万程度の予算を組んでいただきたいのですが、安心してください。条件に合えばそのうち100万円程度は助成金で戻りますので実質負担は半年で50万円前後です。助成金診断も行っておりますのでお気軽にご相談ください。
そしてできれば「倒産前夜」ではなく、まだ元気なうちにご連絡くださいね。
最後に、きっかけをいただいた株主に感謝を込めて。いつもありがとうございます!
テレワーク・テクノロジーズ株式会社
代表取締役CEO 荒木賢二郎
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