94%植物由来のサステナブルなスニーカーソールはゴムと竹を愛する2社の出会いから生まれた。「Bambrub(バンブラブ)」ソールの開発秘話。
ゴムで履物づくりをはじめて90年の日進ゴムは、サステナブルなスニーカーブランド「RALLY ROUND」を2023年秋にローンチします。多数のメディアでも話題の滑らない靴底HyperVをはじめとする90年培ってきたゴムの技術と、世界の仲間の素材力やデザイン力を集め、『快適でサステナブルな』だけでなく『人との会話を弾ませる』タウンスニーカーを目指して3年前にプロジェクトはスタートしました。
https://rallyround8.com/
今回はRALLY ROUNDプロジェクトマネージャーの渡辺がスニーカーにとって重要なソール素材へ、いくつもの植物との実験を経てなぜ竹を選んだのか、開発秘話をお伝えします。
■写真:RALLY ROUND(ラリーラウンド)
アースフレンドリーなシューズを事業にしたい
RALLY ROUNDプロジェクトマネージャーの渡辺喜朗は、多感な少年時代を1990年代に過ごした。当時子供向けアニメや動物番組でも盛んに環境破壊がテーマとなっていて、将来は環境を守れる大人になりたいと思っていたものだ。「ドラえもん のび太とアニマル惑星」に描かれるような自然エネルギーと高度なリサイクル社会が将来待っているのだろうと期待していた。しかし大人になって見た現実はなかなか厳しかった。社会人駆け出しのころは勤務するイベント会社で多くの日本企業が緑化や脱プラに取組むものの市場要求に合致せず、撤退を余儀なくされるのを見ては何だか歯がゆい思いをした。大好きな千葉でのサーフィンでは遠浅のビーチが少しずつ小さくなっているように感じた。日進ゴムに入社後、日本のお客様が求める低価格で高品質のシューズを生産するには廃棄焼却時にCo2を排出する化繊や石油由来のポリマーがどうしても必要で、海外工場での廃材や不良品の廃棄も品質保持のためには止むを得ないという現実を知る。嫌悪感を覚えつつも、仕事のためには仕方がないと自分を無理やり納得させた。
家庭を持ち、子供が成長する中で「この子たちは将来海で遊んだり、旬の食材を楽しんだりできるのだろうか」と心配になった。企業活動や商品にもサステナビリティやSDGsが求められ始め、社会のニーズの高まりも感じた。仕事は活きて家族を養うためにするものなのだから、子供が成長したときの環境を守り、そういう仕事を育てておくのはいたって当然のことだ。始めるなら今しかないと思った。難しいが理想とするプロジェクトにチャレンジすることを決心した。
セールスポイントとしてだけではない、本当にアースフレンドリーでそしてお客様にも満足していただけるスニーカーをつくり、広めようと決めた。創業90年と歴史のある企業だからこそ、真新しい発想での開発に社内の協力を集めることは難しい。最初の構想を役員内でプレゼンしたときには「本当にお客様に納得いただける質となるのか。どういうものを材料にするかも目途が立たないままではチームも動けないため正式な開発案件にしないほうが良い」とたしなめられた。可能性を見せ、皆に協力してもらうために、ある程度目途が立つまで自分が率先して開発を進めると決心した。
難しい、環境に優しいソール素材開発
まずはスニーカーの中でも最も重量を占める、ソールの開発をとことん行うことに決めた。現在の日本では履き古されたシューズはほとんどの自治体で燃えるゴミとして焼却される。ならば植物由来がもっとも合理的なアースフレンドリーと判断した。従来のスニーカーソールのアウトソール(地面と触れる部分)の多くは石油由来の合成ゴムやプラスチック、ポリウレタンだ。「天然ゴム製」と書いてあっても半分ぐらいは炭酸カルシウムやシリカが入っている。ミッドソール(白い場合が多い、軽量なクッション部分)は酢酸ビニールの場合が多い。これらを植物由来に置き換える試みを始めた。これができれば使い終わり焼却後までのCo2負荷はかなり少なくなるはずだ。
■写真:スニーカーのミッドソール
90年もゴム製品を作ってきた当社にとってはゴムの木の樹液から得られた天然ゴムを他の機能を持つ植物の「何か」と合成するのが近道だと想定した。天然ゴムだけでは重いし、充分な耐久性が出せないからだ。
■写真:ススキの調達
天然ゴムと親和性があると考え、まず試したのが、茎や根にゴムと近い樹液「ラテックス」を含むタンポポだ。圧搾機を自作し、ミキサーにかけたタンポポから樹液を絞りだす。しかしラテックスの含有量が少なすぎて「グリーンティー」が採取できただけだった。
次にゴムに配合することで強度が増すケイ素に注目し、これを多く含むススキに挑戦した。岡山県北で豊富に採取できるススキを自宅のベランダで乾燥させ、粉砕機にかけパウダーにする。技術部に依頼し天然ゴムに混合することに成功した。しかし、硬いススキの粉は尖った針のような形でゴムの結合を弱めてしまった。軽量化には効果があったが期待が大きかった分、がっかりした。
■写真:天然ゴムとの混合テスト
情熱家との出会い
そんな中、若い技術員の上岡秀彰が「会ってみてはどうですか?」と言った変わった問い合わせがあった。「わが社の竹酢液で抗菌性のあるシューズを作ってみたらどうか」という一見今回の取り組みとは関係ない、昔から食品容器として使われるとてもエコな竹皮を扱う創業100年の(株)松本という会社からの問い合わせだ。駄目で元々、何かヒントがあるかもしれない。訪ねてみよう。上岡技術員と同社を訪問すると工場では竹のパウダーが山になっていた。
■写真:松本氏
■写真:竹のパウダー
「これは何ですか?」「竹粉です。自然に乳酸菌発酵してとても良い土壌改良剤になるんですよ」。そういえば竹の繊維は微細なハニカム構造を持つと聞いたことがある。触った竹の粉はススキのとげとげした感触とは全く違う、ふわふわとした感じだった。もしかするとゴムとうまくつながり合うかもしれない。「発酵前のパウダーの一番細かいモノをもらえませんか?」我々の目的を伝えたところ松本氏は数日をかけて手作業で微細なパウダーを拾い集めてくれた。
94%植物由来のスニーカーソールへ
松本氏が手作業で集めてくれた数マイクロメーターの竹パウダーを天然ゴムと混合してみた。当社が昔から保持してきた製法も用いたところ、驚くほど軽量で柔らかく、十分に丈夫なソール材料ができた。竹ならではのハニカム構造の表面が効果を出したようだ。できた、と皆思った。しかし、微細なパウダーだけ手で集めるのにコストが掛かりすぎるのではことが大きな懸念事項となった。
そこで、松本氏は直ぐにこのパウダーを集めるための振るい機を作成してくれた。そして十分に合理的なコストで、このソール材料に必要な竹パウダーを供給してもらえるようになった。「竹の可能性を広めてもらえる良い企画ですから」松本氏は言った。
ゴムの劣化を予防する薬品や、ゴム分子同士を結合させる硫黄など、まだ100%植物由来ではない。94%だ。しかし残りの6%も商品リリース後、きっと解決できるアイデアが集まってくると信じている。
我々はこのゴムに、竹とゴム、竹への情熱、という意味をこめて「Bambrub(バンブラブ)」と名前をつけた。RALLY ROUNDのソールとなるBambrubソールはこうして完成した。
■写真:94%植物由来の天然ゴムと竹からできたBambrub(バンブラブ)ソール
RALLY ROUND(ラリーラウンド)の1stモデルは2023年10月末発売開始します。
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https://www.instagram.com/rallyround_shoes
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