クリエイティブで社会課題解決に貢献したい。2年の構想を経て、デザイン会社がクリエイティブカンパニーに生まれ変わるまでの軌跡
株式会社エンビジョンは、『未来のためにできることをやる。』というパーパスのもと、グラフィックデザインからWeb制作、ブランドデザインまで、あらゆるクリエイティブで社会課題の解決を目指すクリエイティブカンパニーです。
前身となるデザイン会社から2017年にスピンアウトし、様々なクリエイティブ領域の拡大と事業の拡大を続け、2023年1月に新社名「株式会社エンビジョン(envision Inc.)」として、新たに事業を開始しました。
スピンアウト後も順調に業績を伸ばし続けていたものの、社会に対してクリエイティブができることは何なのか、今の世の中にどのような価値を打ち出せるのか追求し続けた結果、パーパス・ミッションを打ち出すとともに社名を変更することになりました。
このストーリーでは、エンビジョンのこれまでの事業成長を振り返りながら、誕生の舞台裏や社会課題に対するクリエイティブカンパニーとしての想いをご紹介します。
世の中に対するクリエイティブの役割を考え続けることで至った社名変更
2017年、エンビジョン代表取締役の井上大輔は、さらなる事業成長を実現するために前身となるデザイン会社からスピンアウトしました。グラフィックデザイン・Webデザインなどデザイン制作を中心とした事業を継続・拡大し、業績も好調でした。しかし、経営者として視座が変化したことで「社会におけるクリエイティブの役割は何なのか」「自分たちは社会にどのような価値を提供できるのか」と、社会に対する自社の存在意義を自問する機会が増えるようになりました。
また、コロナ禍において世の中がいとも簡単に変わってしまったこと、医療従事者などのエッセンシャルワーカーに対するクリエイターの無力さを痛感したことも、存在意義を考え直すきっかけになりました。パンデミックのような危機的状況において、クリエイティブが貢献できることはほとんどありません。このような無力感は、クリエイティブ業界に従事している者は全員肌感覚で理解していると思います。それならば、これまで制作してきたクリエイティブは何のために、何を意義としてこの社会に存在しているのでしょうか。
これらの経験がきっかけとなり、社会に対して意義のあるクリエイティブを作りたい、クリエイティブカンパニーとして社会課題に向き合っていきたい、という想いを強く持つようになりました。
「クリエイティブで社会課題に向き合いたい」という想いをどのように事業展開すればいいのか、2021年半ばから構想を練り始め、2022年初頭に社内プロジェクトを立ち上げました。まず取り組んだことは、想いをパーパスとして言語化し、自分たちの役割についての認識を社内に浸透させることでした。パーパスの必要性について、プロジェクトメンバー内で反対意見はなかったものの、クリエイティブの社会的役割やその役割を全うするために何ができるかという認識については、メンバーによって捉え方がかなり異なっていたためです。毎週プロジェクトメンバーで話し合い認識をすり合わせ、その内容を社内で共有し議論するというサイクルを半年以上繰り返し、パーパスの骨組みを形成していきました。
パーパスの策定と並行して、パーパス実現のために何をする必要があるかを打ち出すミッションの策定を進めました。ミッションはパーパスを実現する当事者としてより具体的な行動や考え方を示すことから、議論を重ねるうちに社内メンバーの認識が変化していく様子も見られました。社名変更の話が出てきたのは、これらの議論が熟したタイミングです。「クリエイティブで社会課題に向き合う」という想いからパーパス・ミッションを決めた時、社会課題を特別意識せずデザイン制作のみに注力していたこれまでの社名でいいのかという疑問が生まれたことがきっかけでした。
デザイン会社として長く認知されてきた社名を変更するデメリットから社名変更に消極的な意見もありましたが、自分たちがこれから始めようとしていることは、クリエイティブという領域は同じでもアプローチがまったく異なるという点、そして、その違いを表明するためにも社名変更は必要ではないかという点から、社名変更が決定しました。
新社名の「envision」は接頭辞“en”+“vision”から成る他動詞で、「将来的な良いことを心に思い描く、想像する」という意味を持ちます。クリエイティブで社会課題に向き合うことで世の中がもっと良くなるように、クリエイティブカンパニーとしてそのような価値を社会に打ち出せるように、という想いを込めて命名しました。
新社名決定後、CI・キービジュアルの制作と並行して、エンビジョンの想いを表現するアニメーションも制作しました。4つのカラーはエンビジョンという組織だけではなく、そこに所属するメンバーも表しています。多様な形状のカラーが、共存したり融合したり未来に向かって伸びていったり自由に軽やかに動く様子から、エンビジョンが叶えようとしている明るい未来を描いています。
同じ価値観のパートナー企業と手を取り、より良い社会の実現をクリエイティブで支援
策定されたパーパス・ミッションをもとに、様々な社会課題をクリエイティブの力で解決するオウンド事業「PROJECT」を立ち上げました。その第一弾として2022年11月に発足したのが、食品ロス問題にフォーカスしたオウンド事業「ロスをロスするProject(https://lossloss.jp/)」です。食品ロス問題を選んだきっかけは、プロジェクトメンバーの「私の好きなことは食べること」という想いでした。
食品ロス問題を含め、社会課題への関わり方は人それぞれです。社会課題に取り組めば世の中がより良くなるとわかっていても、実際に何からどう取り組めばいいかわからない人や、実態をよく知る前から「難しい」と考えることをやめてしまう人も多いのではないでしょうか。「社会全体で取り組むべき課題」だからといって、伝え方が押し付けがましかったり、その人の気持ちや状況を無視した論調だと受け入れてもらうことは難しくなります。クリエイティブは、社会課題とそれらを取り巻く人々・企業を適切なコミュニケーションで繋ぐために必要だと考えています。
しかし、プロジェクト立ち上げ当初、食品ロス問題についての社外勉強会に参加したところ、「ほとんどの人は、私たちが考えているほど社会課題とクリエイティブが密接であると感じていない」と気付かされる出来事がありました。勉強会には食品ロス問題の研究機関や外食産業などが多く参加していたのですが、名刺交換会での反応が一様に「どうしてデザイン会社がここに来ているの?」というものだったのです。
食品ロス問題と一般消費者を適切なコミュニケーションで繋ぐために、クリエイティブは必要です。クリエイティブがうまく機能すれば、問題に対する苦手意識や無関心に由来する心理的なハードルを下げ、消費者を当事者として巻き込んでいくことができます。そのために「社会課題に知見があるクリエイティブカンパニー」として参加していると説明しましたが、うまく伝わっていないように感じました。
そんな中、私たちの話に真剣に耳を傾けてくださったのが生活協同組合コープこうべSDGs推進部のご担当者様でした。コープこうべ様は、1970年代後半にスタートしたレジ袋削減に向けた取り組みや、1990年にスタートした牛乳パックリサイクル運動など、早い段階から「よりよいくらし」の根源となる環境保全の取り組みを進めてきた生活協同組合です。2018年には、2030年に向けた環境チャレンジ目標として「エコチャレ2030」を策定し、これらの取り組みをさらに推進しています。
勉強会から数週間後、「エコチャレ2030」の一つである「事業活動における食品廃棄物を半減」という目標において重要な役割を担う環境共生型農園「エコファーム(https://www.coop-ecofarm.jp)」の広報物等制作についてご相談をいただきました。エコファームは、コープこうべグループの直営農場にあたり、持続可能な農業生産や食品ロス問題も包括的に含まれる社会課題に取り組む事業です。
ご相談内容はエコファームのパンフレット・Webサイトの刷新、その他広報物の新規制作提案でしたが、詳しいお話を伺い現地での取材を重ねるうちに「広報物のデザインを提案する前に、エコファーム全体のリブランディングの提案をした方がいいのではないか」と考えるようになりました。エコファームは消費者にとってどんな存在で、暮らしや社会にどのような価値をもたらすのかを一度見直す必要があると感じたためです。
エコファームでは、コープこうべの店舗から出る野菜や肉の加工くずなどからたい肥をつくり、そのたい肥を使って安全・安心な野菜を栽培しています。栽培した野菜はコープこうべの店舗などで販売され、消費者はその野菜を選んで購入することで間接的に環境保全活動に参加できるという仕組みが作られています。また、エコファームが掲げるビジョンの一つに「『食・農・環境・エネルギー・福祉』に関する学習・体験・交流を通じて、多くの人が集い楽しめる魅力あふれる場にします。」というものがあります。例えば、子どもも一緒に参加できる旬の野菜の収穫体験イベントでは、子どものうちから土に触れ自ら野菜を収穫することで、自分たちの食べている野菜がどのように育てられて収穫されているのか学び、食べ物の大切さを知ることができます。
土・野菜・暮らしを通じたこれらの社会課題の取り組みを事業化している点や、環境保全活動を何十年も継続されてきた点を踏まえ、エコファームの可能性を引き出して消費者に訴求し、巻き込んでいくための提案を行いました。
このような提案が可能になったのは、社会課題についての認識や知見がある程度蓄積されていたこと、適切なコミュニケーション設計で人を巻き込んでいくという社会課題に対するクリエイティブの役割を私たち自身が理解できていたこと、そして何より、コープこうべ様が高い熱量で社会課題に取り組み続けてきたことで、互いに認識が近い関係を構築できたからだと思っています。社会課題に取り組み、より良い社会を目指したいという志を同じくする企業同士が手を取り合うことで、それぞれの得意領域を活かしながら実現のための一歩を踏み出せるのではないでしょうか。
「クリエイティブは、情報を正しく伝えるための設計」。受け取るべき人が、情報を受け取りやすい状況をつくることが私たちの価値
クリエイティブ制作というと、一括りに「センスを売る仕事」と認識されることがあります。クリエイティブとはただオシャレなデザイン、キレイなデザインを作るのではなく、想定したターゲットにふさわしい情報を正しく伝えるための設計全般だと考えています。私たちの掲げるクリエイティブでの社会課題解決とは、社会課題についての正しい情報を、それらを受け取るべき人によりスムーズに受け取ってもらうためのコミュニケーション設計を行うことです。優れたデザインで「難しそう」「大変そう」「私には関係ない」といった心理障壁を下げ、情報を受け取りやすい状況をつくる。それが、今の私たちが社会に提示しているクリエイティブカンパニーとしての価値です。
極端な話かもしれませんが、私たちと同じような価値観を持つ企業がより多く集まり共に事業を推進することで、世の中は必ず良くなるだろうという確信があります。エンビジョンは今後もより一層、同じ価値観・志を持つ企業同士で手を取り合い、クリエイティブという得意領域を活かして社会課題の解決に取り組み、より良い社会の実現を目指して参ります。
◼️株式会社エンビジョン
・公式サイト https://envision-inc.jp/
・X(Twitter) https://twitter.com/envision_press
・note https://note.com/envision_press
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