なぜ霧島の老舗焼酎酒蔵はウイスキー事業に乗り出したのか。世界一おいしいジャパニーズウイスキー作りへの挑戦
鹿児島県霧島市の「アットスター黄金酒蔵」は1949年創業の老舗焼酎蔵です。全芋焼酎「蘭」を中心に焼酎造りを続けてきました。私たちの仕込蔵、鹿児島県霧島市横川町にある横川蒸留所は、1949年以前より焼酎を作ってきた歴史があります。このスピリッツメーカー蒸留所という特徴を生かし、2023年6月よりウイスキーの生産を開始しました。現在、2026年の販売を目指して稼働しています。焼酎蔵であるアットスター黄金酒蔵がなぜウイスキー事業に乗り出したのか、そして本プロジェクトの進捗や今後の展望について、ご説明します。
霧島の老舗焼酎酒蔵「黄金酒蔵」、特許製法など常に新しい挑戦を続けてきた
鹿児島県霧島市は南方に雄大な桜島を望む、自然豊かな地です。黄金酒蔵は1949年より焼酎造りを始めました。「美味しく安心して飲める」、「体に優しい焼酎造り」を企業理念とし、「遠赤焙煎仕込法」、「PH値転換蒸留法」、「芋麹の製造及び芋麹を用いた焼酎」など、他にはない製造法で、ユニークで美味しい商品づくりを行ってきました。
トップブランドの全芋焼酎「蘭」は、1次仕込み・2次仕込みともに芋を使った特許製法で作られています。芋焼酎は一般的に、1次仕込みに米、2次仕込みに芋で造られます。麦、米焼酎は1次仕込みも2次仕込も米、麦と同じ原料で造られるのに対し、芋焼酎だけは芋の麹化が技術的にできなかったため、1次仕込みに米を使っていました。純粋な芋100%の焼酎は技術的に難しいというのが業界の常識だったところ、当社は芋の麹化に成功。1次仕込み・2次仕込みともに芋を使った全芋焼酎の開発に成功しました。
最近では「蘭」「東五」「薩摩さくら」などの定番商品の他、「麦の呼吸」「芋の呼吸」といった新商品の開発も積極的に行っています。現状維持にとどまらず、新しい、より良いものを作ろうとする姿勢で焼酎造りに取り組んできました。
スピリッツ製造75年以上、自然豊かな横川蒸留所で始まった新たな挑戦は「ウイスキー作り」
仕込蔵の横川蒸留所は、自然豊かな鹿児島県霧島市横川町にあります。1949年以前より焼酎を作ってきたスピリッツメーカー蒸留所で、オーナーは3代交代しましたが、職人が作るノウハウはずっと引き継がれています。
この横川蒸留所で始まった新たな挑戦、それは「ウイスキー蒸留所に発展し、シングルモルトウイスキーを作ること」です。近年の焼酎離れが進む中で、「もう一度蒸留技術を活かして鹿児島をウイスキーの名産地として輝かせたい!」「世界と勝負したい」との思いから、このプロジェクトは立ち上がりました。
実はジャパニーズウイスキーは世界5大ウイスキーの1つと謳われており、日本からの輸出額は酒類の中でトップ。この10年で新たに蒸留所が建設されるなど盛り上がりをみせています。しかし、スコットランドには100以上の蒸留所がある一方で、日本のウイスキー蒸留所は30余りと、大きな差があります。さらに、日本のウイスキーは大手メーカーで生産量の大部分を占めており、地方ならではの風土が育んだウイスキーを飲める機会は多くありません。そこで我々は小さな地方のウイスキー蒸留所だからこそできる個性を活かした挑戦をしていくことにしました。
焼酎作りの経験・設備を活かし、ウイスキー事業参入を目指す
当社にはウイスキー事業に参入する際の強みがいくつかありました。
まず、当社の蔵人は20年近く焼酎造りに従事しています。糖化した原料に酵母を加え発酵させることでアルコール度数7%程度のもろみを作り、そのもろみを蒸留させて原酒を作る、という工程はウイスキーも焼酎も同じ。焼酎蔵にはこの発酵、蒸留の技術があります。発酵に適した温度管理法、原酒の風味を活かして蒸留する技術、焼酎作りで身についたノウハウを大いに活かすことが可能です。
そして良質な仕込み水。霧島山は大きな水源といわれるほど豊富な水源を蓄え、まるでダムのような機能を果たしています。それだけに山麓などでは湧水が多く、仕込み水となる「蒼き水」は酵母の増殖に必須なミネラルを多く含み発酵を助ける効果が期待できます。
潤沢な保管スペースの確保原酒を熟成させる環境もウイスキー作りにとってとても重要な要素です。当社には長年焼酎を熟成、貯蔵させてきた蔵があり、これをウイスキー熟成に活かすことが可能です。
また当社には霧島市に横川・国分敷根、2つの地域に蔵があります。横川は標高が高く木々に囲まれた比較的涼しい地域です。国分敷根は鹿児島湾(錦江湾)のほど近く、潮風の香る地域です。横川と国分敷根、異なる環境で樽熟成させることで異なる個性をもったウイスキーを熟成させることができます。この異なる個性を活かして幅広い商品開発が可能となります。
製造開始までの取り組み、大変だったこと、こうやって乗り越えた
ウイスキー市場への参入は障壁が高いのが一般的です。それは、①高額な設備が必要(当社規模で5億円以上) ②ウイスキー製造免許取得が難しい ③製造研修のため、ウイスキー製造経験者との契約が必要だからです。
①高額な設備は必要ですが、発酵タンクや熟成庫など既存の設備が使用可能なものに関しては、流用するなど工夫を凝らして製造設備をそろえました。2021年、まずは設備の準備に入りました。クラウドファンディングを活用しながら、マッシュタン、粉砕機といったウイスキーづくりに必要なものを揃えていきました。②ウイスキー製造免許取得については、初回の申請から2年以上の歳月をかけ、製造手順をマニュアル化し申請することで製造免許を取得しました。③製造研修のため、ウイスキー製造経験者との契約については、どちらの蒸留所も自分のところで手一杯だったり、自分たちも経験が足りていない等の理由でなかなか協力してくれる蒸留所がありませんでした。しかし、とあるウイスキーのイベントがきっかけでご協力頂ける蒸留所が見つかり、製造研修、製造のアドバイスを受けられるようになりました。
ついにウイスキー製造を開始。世界的コンテストで入賞を目指す
2023年5月、ウイスキー製造免許を取得。6月14日より製造を開始しました。2026年に販売を開始する予定です。
現在、蒸留開始後の原料費や熟成樽購入の資金に充てるため、再びクラウドファンディングも実施しています。またこれから、シェリー樽やバーボン樽に加え、国内外のワイナリーと提携予定です。ワイン樽など様々な樽で熟成させて、世界でも通用する美味しいジャパニーズシングルモルトウイスキー作りを目指します。国際的なコンテストで賞を獲得することで、過疎化する霧島地域のコミュニティを活性化させ、鹿児島の発展を目指して参ります。
現在、日本国内には約1000社の焼酎蔵と1400社の日本酒蔵がありますが、近年国内外の消費が減り続けており、このままでは企業の存続が危うい状況です。2026年以降は、当社の製造ノウハウや製造機械・原料を国酒製造会社に提供し、ウイスキー作りへの参入を支援、世界へ販売していきたいです。
さらにその先には日本産ウイスキーの金融商品化を視野に入れています。Dynamic NFTやWeb3.0といった技術も取り入れ、地方創生に取り組んでいきたいと考えています。これからの動向にぜひご注目ください。
■横川ウイスキー蒸留所
URL:https://www.yokogawa-distillery.com/#yokogawa_03
■クラウドファンディング「READY FOR」
プロジェクト名:製造開始。世界を目指す横川蒸留所のウイスキー6-8月製造分予約開始
URL:https://readyfor.jp/projects/yokogawa
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ