東大発スタートアップが目指す「大規模集積型インフラに依存しない自律分散型の電力供給システム」
株式会社SOEL(以下、SOEL)は、東大発スタートアップとして2023年4月に活動を開始。持続可能な社会の実現を、エネルギー創出・供給の面から挑戦しています。
現在は、軽くて持ち運び可能なローラブルシリコン太陽電池を開発し、三井不動産をはじめ、大手企業と「自律分散型の電力供給システム」の実現にむけて共同研究・開発を推進中。
今回は、なぜ飽和状態にも思える「太陽電池事業」へ参入するのか、SOELがエネルギー業界に挑戦する理由、目指している世界について、代表高宮にインタビューしました。
視点を変えると、新しい可能性が見えてくる
―― ローラブルシリコン太陽電池の事業を立ち上げた背景を教えてください。
いまから太陽電池事業に参入して大丈夫かなって、実はわたし自身も感じていました。
中国が大規模に行っているなかで価格で勝てそうにもないし、太陽電池って必要なだけ普及して世の中に今更求められてないのではという気持ちもありました。
ただ、お客さまとの商談を重ねるなかで、自分たちが気付いていなかった可能性を感じたんです。
―― 具体的にどんな可能性を感じたのでしょうか。
太陽光発電って、みなさんがよく目にする屋根についている大規模なパネルをイメージすると思います。あれしか選択肢がないと思うと「太陽光はうちには無理だな。」という発想が生まれていて。でも、形や重さなどユースケースに合わせて仕様変更ができると、やりたい会社が出てくることがわかったんです。
―― ローラブルシリコン太陽電池の特徴について詳しく教えてください。
竹谷教授と研究して編み出した独自の素材構造(特許出願中)を用いることで、現在広く普及している太陽電池に使用されている「シリコン」を活用しながら、ローラブルな形状を実現することに成功しました。この技術により「曲がる・軽い・持ち運べる」太陽電池を生み出すことが出来ました。
技術「開発」だけでなく「社会実装」まで担う
―― 新しい技術も開発されているなかで、なぜ既存素材「シリコン」の製品を開発したのでしょうか。
SOELは、「社会に実装され、活用されること=ユースケース」を創出することを第一に考えています。なぜなら、技術は社会で活用されて、はじめて役に立つからです。
ペロブスカイトなどの新技術も出てきていますが、クライアントニーズに応えられる耐久性、発電効率がありながらも、要望に合わせて仕様変更ができる太陽電池を開発しようと考えたとき、現時点では「シリコン」を活用することがベストだと考えました。
―― 「社会に実装される」という視点を大切にしているのですね。
新しく生み出されながらも、社会実装できず眠ったままの技術を多く見てきました。そのなかで、技術に対しても社会ニーズに対してもあかるい「架け橋」が必要でないか、という想いが強くなっていきました。
技術が社会実装され、活かされていく流れを作っていくこともSOELの役割のひとつだと考えています。
自分たちで技術開発するだけでなく、日々生み出されている新たな技術も柔軟に取り入れながら社会に価値を生み出していきたいです。
―― 実際に生まれているユースケースをぜひ教えてください。
2023年11月から、奥村組と建設現場のオフグリット環境における実証実験がスタートします。
建設現場には、砂防工事など通常の電力調達が困難な現場も多く存在しています。ディーゼル発電機を用いての電力調達が主となっていますが、騒音問題やCO2排出による環境汚染が課題視されています。
カーボンゼロの取り組みとして、また安全で簡易な電源供給としてSOELのローラブルシリコン太陽電池に白羽の矢が立ち、現場での実用に向けた検証をスタートさせることになりました。
ほかには、三井不動産などまちづくりを推進する大手ディベロッパーや災害対策やオフグリッド環境への対策を進める自治体、陸上養殖事業者などとも商談を重ねています。
人はもっと「場所」から「自由」になれる
―― SOELが目指すVISIONについても教えてください。
「世界のだれもがエネルギー供給リスクに左右されず快適な暮らしを享受できる社会をつくる」というVISIONを掲げています。
「エネルギー」は、社会インフラの根幹。現代人の暮らしにとって「エネルギー=電力」はなくてはならない存在になっています。その供給システムはというと、大規模集積型がメインです。
大規模集積型の社会があってこその今ですし、このシステムを否定したいわけではないのですが、その構造によって不便さを引き受けてる地域や人々がいるのも事実あります。
既存社会に新たな選択肢として「自然由来の自律分散型エネルギーシステム」が構築できることで、すべての人が地球と共生しながらも、もっと快適に、もっと自由に暮らせる社会を実現していきたいと考え、事業を展開しています。
―― ローラブルシリコン太陽電池でのユースケースづくりは、それに向けた第一歩なのですね。
そうですね。エネルギー先進国である日本でも、さきほど話したように建設現場や、個人の暮らしにおいてもオフグリッドでの過酷な環境を余儀なくされ、持ち運び用のディーゼル発電に頼らざるを得ない環境が存在しています。また、日本の少子化・過疎化が全国各地で進む中で、大規模集積型の電力供給システムでは融通が効かない世界が訪れる可能性もあります。
まずは、今のグリッド環境外にある現場の電力問題に向き合い、ユースケースを作ることで実装領域を広げていきながら、自律分散型エネルギーシステムの構築とその未来のくらしのあり方を提案していきたいです。
▶SOEL:https://soel-energy.com/
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