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「すき間にいる人たち」の心とカラダをエステケア。ソシオエステティック専門店「珠ちゃんサロン」が生まれた理由

著者: 特定非営利活動法人 ソシオの杜


ソシオエステティック。聞き慣れない言葉かもしれませんが、これはフランスで始まった社会活動です。

社会的に弱い立場にある方達のQOLの向上を目的として、エステの知識と技術を提供します。

日本ではまだ数少ないこのソシオエステティックが受けられるサロンがあります。

佐賀県神埼郡吉野ヶ里町にある「珠ちゃんサロン」です。

今回は、「ソシオエステティック」と「珠ちゃんサロン」についてNPO法人ソシオの杜理事長江頭裕美よりご紹介させていただきます。


闘病中の息子の安堵の表情を見て、ソシオエステティシャンの道へ



これまでのエステは美を追求するものでしたが、本来、エステを必要としているのは、高齢や障がい、病気を抱えた方達ではないかと、たった一人のエステティシャンが精神科病棟の扉をたたいた事から始まります。ルネ・ルジエール女史。

フランスで唯一の国家資格を持つ教育機関「CODES」の創始者です。



その活動に感銘を受けた故シュウ・ウエムラ氏らが日本エステティック協会内に「CODES JAPON」を設立させました。

私は「CODES JAPON養成講座第1期生」として1年間東京に通い、資格を取得しました。


私が、この講座を受講した理由は、当時13歳だった息子の1年近い闘病がきっかけでした。

息子は急性骨髄性白血病という血液のがんに侵され、抗がん治療を受けました。

2ヶ月間、何も食べることが出来ず、ベッドの上から起き上がることもできず、輸血と点滴のみで過ごしました。

40度の熱が何日も続き、下痢と嘔吐を繰り返す姿は、そばで見ていて掛ける言葉すら見つかりませんでした。

そんなとき、背中をさすってやるとほんの一瞬、ほっとした表情を見せてくれるのです。その顔が見たくて、1日中背中をさすっていました。

そんな経験から、ソシオエステティックに関心を持ち、ソシオエステティシャンになりました。


エステが出来る場所がないなら作ればいい。「珠ちゃんサロン」オープンまでの道のり


それから、7年間ボランティアで病院や施設でエステティックの提供を行いました。

しかし、この活動はボランティアでできる仕事ではないと、「特定非営利活動法人ソシオの杜」を立ち上げることになります。

            独立行政法人久留米総合病院にて


その後は、養成講座でお世話になったドクターや地元の薬剤師さん、在宅のドクターなどのご支援を受け、病院や施設に訪問してエステの提供を続けて参りました。


訪問していた重度障がい者施設のクライアントさんの中に珠美さんという方がいました。その女性は生まれつき、脳に障がいを抱えていて、寝たきりの状態でした。いわゆる今でいう医療的ケア児です。

言葉でのコミュニケーションは取れませんでしたが、何回も訪問を重ね、アロマトリートメントをしていると、いつも緊張している手の力が抜けて完全に脱力する瞬間があったり、こわばった首や肩をお洋服の上からほぐしていると、気持ち良さそうな顔を見せてくれるようになってくれていました。

そんな中、コロナ禍で会えないまま、珠美さんは52歳の生涯を終えました。

その後、お父様からお申し出があり「珠ちゃんのように病気と闘っている方達に役立てて欲しい」とご寄附を頂きました。それを「珠ちゃん基金」として使わせていただく事にしました。


                  珠ちゃん基金で医療的ケア児へエステを提供


ところが、コロナで一切の病院・施設への立ち入りが禁止され、活動が出来なくなってしまったのです。

ソシオの杜のメンバーで話し合った結果「行くところがないならつくればいい」という結論に至り、佐賀大学医学部近くにソシオエステティック専門店をオープンすることに致しました。



その時に、基金の一部を使わせて欲しいとお父様にお願いしたところ、ご快諾くださいましたので、サロン名を「珠ちゃんサロン」とつけさせていただきました。


続くコロナ禍と店舗移転。すき間にいる人たちの拠りどころを目指して


予想以上にコロナが長く続いたため、思ったように利用者数が増えず、メンバー内での意見の食い違いなどもあり、結局、移転縮小することとなりました。

ですが、逆に残ったメンバーの結束が深まり、移転しても通ってきてくださるお客様も増え、結果的には良い形になったと思っています。

また、病院や施設への訪問も再開し、在宅療養中の方も含めたくさんの皆様に喜んで頂いております。


では、珠ちゃんサロンにどんなお客様がご来店なさるかと言うと、「5年前にがんの手術をしたけれど、リンパ浮腫が心配で」という方や「親の介護で疲れている」という方、「心療内科に行くまではないけれど、会社の人間関係に悩み強いストレスから体に不調が出ている」など理由はさまざまですが、いわゆる「すき間にいる人たち」が多く訪れているように思います。

実際、治療している方は病院でケアを行いますし、施設入所者の方もその施設でケアをします。在宅の患者様は在宅支援診療所や訪問看護ステーションと連携しているのでご自宅でケアをします。

でも、そのような医療や福祉を利用しない方はどこから情報を得れば良いのか?誰に相談すれば良いのか?自分一人で悩みを抱え込んでしまうのです。

そんな方達の心の拠りどころとなるのが珠ちゃんサロンです。


現在「珠ちゃんサロン」は1店舗だけですが、私達「特定非営利活動法人ソシオの杜」では、「ソシオセラピスト養成講座」を開講し、「認定ソシオセラピスト」の育成にも力を入れています。


医療や福祉の有資格者に学んでいただき、資格取得後、サロンを持ちたい方には、「珠ちゃんサロン」の登録サロンの認定制度もあります。


こうして、フランスでたった一人から始まったソシオエステティックが日本に伝わり、そして「珠ちゃんサロン」が日本中に増えていくことを私たちは期待しています。


そうすることで、一人でも多くの心や体に病を抱えている方、またその介護をする方の笑顔が増えることを望んでいるのです。


ソシオエステティックについてのご質問・お問い合わせは下記まで。


▼特定非営利活動法人ソシオの杜

https://socio-m.jp/


▼ソシオエステティック専門店「珠ちゃんサロン」

https://tamasalon.jp/




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