A2ミルク×有機乳製品で日本の酪農を元気に。化学メーカー:カネカが挑戦する「有機循環型酪農」とは?
「カネカは世界を健康にする」。株式会社カネカは、「環境・エネルギー」「健康」「食」という地球が抱える3つの課題を解決したいという考えのもと、化学を通じてさまざまなソリューションを提供しています。
そんな化学メーカー カネカは、今年、有機乳製品を発売しました。「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」は、日本ではまだ希少なA2ミルクの有機生乳を使ったプレミアムなヨーグルトです。美味しさはもちろん、地球、人、牛すべてにやさしいサステナブルな牧場から誕生したことも話題を呼んでいます。
このSTORYでは、化学メーカー カネカが有機酪農から乳製品開発まで手がける理由と、事業にかけた想いを伝えます。
酪農を元気にしたい。化学メーカーが挑む酪農業支援
カネカは、化学メーカーとして、住宅・自動車・電子機器における素材をはじめ、医療機器や医薬品原料、生分解性プラスチックなどを開発、製造することで、人々の豊かな暮らしに貢献しています。また、創業時から微生物を使った技術で、パンの原料となるイーストやコエンザイムQ10を作ってきました。
もっと人々の近くで健康に寄り添いたい、という願いから、乳製品事業を立ち上げました。ところが、そこでカネカが目にしたのは、食糧自給率の低下でした。中でも酪農業は、過酷な労働と高齢化から人手不足が深刻で、生乳生産量は減少の一途を辿っていました。
カネカに何ができるか。
生乳を加工して販売するだけでは、根本的な課題解決にはならない。
「やるからには一次産業から携わり、酪農を元気にしたい。」
ここから、化学メーカーとして初めての酪農業参入という全く新しい挑戦が始まりました。
ベルギー駐在で構想を得た「有機循環型酪農」
Foods & Agris Solution Vehicle乳製品事業開発Strategic Unit 酪農・乳製品チームリーダーの久多里(くだり)は、過去にベルギーに駐在し、欧州素材を直輸入するという事業の傍ら、未来の乳製品開発の技術提携先を探していました。この時、ベルギーの大手乳製品メーカーのPur Natur社と出会います。Pur Natur社の契約農家の有機牧場では、牛舎内でも牧草地でも牛が自由にのびのびと歩き回っていました。「まったく新しい酪農のかたちを目の当たりにして、衝撃を受けました。」久多里は、その日から有機酪農を夢見るようになったと言います。
牛の世話をする久多里
化学メーカーとして経験のない酪農事業。いざ始まると、何から始めていいかわからない模索の日々でしたが、構想だけはありました。
牛がストレスなく過ごし、健康にいいおいしい生乳をつくる。携わる人間も省力化で健康的な働き方ができる。さらには、日本ではまだ少ない有機にこだわることで生乳の付加価値を上げ、安定した、持続可能な酪農を実現する。まさにベルギーで見た新しい有機酪農です。
久多里が理想としていた酪農のかたちと、「酪農を元気にしたい」というカネカの事業目標がうまく重なり、「有機循環型酪農」がかたち作られていきました。
別海ウェルネスファームの誕生まで。久多里の有機酪農パートナーシップ旅
目指す姿が固まったところで、次はパートナーとなる酪農家を探しました。理念に共感してくれる酪農家を求めて全国を訪ね歩き、やっと出会えたのが北海道・別海町の酪農家、株式会社別海ミルクワールドの中山さんでした。酪農のこと、牛のこと、飼料のこと、何から何まで教わり、同じ別海町の地に共同で有機牧場を設立することになりました。2020年、「別海ウェルネスファーム」の誕生です。
別海ウェルネスファーム
ただ、中山さんにとっても有機酪農は未知の世界。有機飼料の育て方、管理の仕方がわからず、「とうもろこしを育てているのか、雑草を育てているのかわからなかった」というぐらい雑草ばかりが育つ畑を思い出し、久多里は笑います。
デントコーン飼料
デントコーン畑
その後、地元大学の研究者たちの助けが得られたこともあり、少しずつ有機飼料が育つようになりました。
2022年、念願の有機JAS認証を取得しました。
牛・人・地球にやさしい「有機循環型酪農」のかたち
こうして生まれたカネカの「有機循環型酪農」のかたちについて、ここで詳しくご紹介します。
<牛にやさしい>
- フリーストール…牛を繋がずに牛舎の中を自由に動ける環境。北海道内での導入は約30%。
- 放牧…牛が自ら牛舎を出入りして自由に牧草地で採食するスタイル。北海道内での導入はわずか5~10%。
- 断熱材…カネカ製品の断熱材を牛舎の天井と床に使用。寒さに弱い牛を守る。
<人にやさしい>
- 自動搾乳機…牛が近づくと自動で搾乳する機械。牛のICチップを読み取り固体管理ができるため、過剰な搾乳を予防し、健康管理にも役立てられる。
<地球にやさしい>
- 有機飼料…化学肥料を一切使わずに、乳牛の糞尿を有機飼料のたい肥として活用。
- 太陽光発電…ゼロエネファームを目指してカネカ製太陽光パネルを敷地内に設置。
- 有機敷料…乳牛の糞尿を分離し、固形物を発酵殺菌し、牛舎の寝床に活用。
放牧の様子
フリーストールの牛舎内
自動搾乳機
太陽光発電システム
話題のA2ミルクの「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」発売
乳製品事業立ち上げから5年の時を経て、今年の春、待望の商品が誕生しました。3月に「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」、9月には個食タイプのヨーグルトが、ブルーベリー味とともに発売されました。もちろん、ブルーベリーのコンフィチュールも有機JAS認証を取得したオーガニックヨーグルトです。
「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」は、豊かな大地で健康的に育った牛のオーガニック生乳を100%使っているので、有機ならではのやさしい、芳醇な香りが特徴です。また、ベルギーPur Natur社の伝統製法によるなめらかで、とろみがある食感もポイントです。
さらに、「ピュアナチュール™ オーガニックヨーグルト」は、今話題の「A2ミルク」を使用しています。
牛乳のタンパク質に含まれるβカゼインには、牛の遺伝子の違いによってA1タイプとA2タイプがあります。遺伝子の組み合わせによってA2タイプのみを持つ乳牛が出すミルクを「A2ミルク」と言います。日本の乳牛は多くがA1タイプですが、「別海ウェルネスファーム」の乳牛は全頭A2タイプを飼育しています。
「A2ミルク」は、健康意識の高まりからオーストラリアやニュージーランドを中心に広がりを見せています。日本では、A2ミルク商品はほとんど流通していないものの、日経トレンディの『2024年ヒット予測ベスト10』に入るなど、その注目度は高まっています。
化学メーカーだからできた有機循環型酪農。これからも美味しい乳製品を
今思えばハードルの高い挑戦でした。ですが、「 “酪農素人だから”できたことも多かった」と久多里は語ります。酪農の大変さを知っていたら「有機なんて…」「放牧主体なんて…」とリスクばかりが目について、二の足を踏んでいたかもしれません。しかし、化学メーカーとして太陽光発電システムや断熱材を製品として持っていたことや、製品作りにかかわる加工技術などのノウハウを生かすことで、A2ミルクと有機という特徴ある乳製品を届けることができました。
これからも美味しさと健康を兼ね備えた有機乳製品を開発してまいります。ぜひ楽しみにしてください。
行動者ストーリー詳細へ
PR TIMES STORYトップへ