人生100年時代を生きる子どもたちに知ってほしい、おいしさと健康の話を。日清オイリオ×キッコーマン、100年企業の2社による「食育特別授業」
左)キッコーマン 山本さん、右)日清オイリオ 相田さん
2030年までの長期ビジョンにおける重点的に取り組む領域の1つとして、脂質栄養の知見を活かした商品・サービスで人々の健康寿命の延伸に貢献することを目指している日清オイリオグループ株式会社(以下、日清オイリオ)。主力製品である食用油をテーマに、脂質の健康情報について情報発信を行っています。今回、縁あって適切な塩分摂取に関する情報発信に取り組むキッコーマン株式会社(以下、キッコーマン)と組み、鎌倉市の小学校で「食育特別授業」を行いました。
共に100年企業である2社による、人生100年時代を生きていく子どもたちに対して行った授業について、取り組みの背景や当日の様子をご紹介します。
長年関わりのある2社だからこそできる、健康課題への貢献に向けたプロジェクト
日清オイリオでは「健康のために摂りすぎに注意したほうが良い」とも思われる油脂について、「三大栄養素」の一つとして欠かせないものであり、適切な量や種類を摂ることが大切だとお伝えしています。
油脂と健康に関する情報発信として、油脂を含めた食事のバランスが簡単にとれるアプリの開発や、食育イベントの企画など、様々な活動を行っていますが、健康に関する感度が高くない方々にまで情報を届けることに難しさを感じていました。
今回一緒に取り組みを行ったキッコーマンも、日頃から情報発信活動を行っています。
「健康課題に関して私たちが発信したいと考えているテーマの1つに、適切な塩分摂取の大切さがあります。自治体と組んでのイベント開催や、各地の営業が主導しての減塩しょうゆの売り場づくりなど、さまざまな活動を行ってきました。また、適切な塩分摂取のみならず、食に関する情報発信に関しては、大人に向けて行うものだけではなく、子どもに向けたものも実施。2006年ごろから、小学生に対する出前授業として、キッコーマンしょうゆ塾を開催しているほか、デルモンテトマト塾や豆乳の出前授業も開催してきました」(山本さん)
「栄養や食育、食の伝統や生きる知恵など、幅広く情報発信を行ってきたキッコーマン様と当社は、様々な面で長らく関わりを持ってきました。2社が扱う油や塩は生きていくには欠かせない調味料ですが、おいしさに寄与するため、摂りすぎてしまうという共通点があります。また、共に100年企業という共通点もあります。そこで、『両社で何らかの社会課題解決に取り組むプロジェクトができるのでは』という話が浮上しました」(相田さん)
プロジェクトが始動したのは2021年。始めに行ったのは、両社の社員に向けた、大学の先生による講演会でした。
「油脂や塩分の適切な摂取といった健康情報は、専門家からいくら発信しても、既に関心のある層にばかり届き、興味のない方の行動変容を起こすのは難しいというお話がありました。『製品を開発、販売しているメーカーだからこそ変えられる力がある』というお話に刺激を受けましたね。そのための入口として適しているのは、充分な情報を得られる環境にいる大人ではなく、子どもではないだろうかという話になりました。子ども時代に味覚を育めば、健康に良い食事が自然と摂れる習慣につながりますし、子どもからご両親など大人への伝播も期待できますから」(相田さん)
キーワードとして浮上したのは「100年」。「人生100年時代を生きる子どもたちに向けて、100年企業である2社だからできる情報発信を」をテーマに「特別授業」のプロジェクトが始動することになりました。
日清オイリオでは、食育イベントで子どもに向けた情報発信を行った事例はあったものの、小学校での授業の経験はありませんでした。キッコーマンでは、しょうゆ塾やトマト塾、豆乳の出前授業といった小学校での開催経験がありました。それらは「みんなで食べるとおいしい」を体感するという情緒面に重きを置きつつ、食の大切さを伝える内容だったといいます。今回は適切な塩分摂取に重点を置いたところがこれまでと異なります。
まずプロジェクトメンバーが行ったのは、授業内容の枠組みづくりです。
「受け入れ先の学校に『これならお願いしたい』と思ってもらえるものにしなければなりません。似たような食育イベントがあるなか、企業が行う意味のある内容にする必要がありました」(山本さん)
「言葉だけで油や適切な塩分摂取の大切さを伝えたところで、子どもたちには響かないでしょう。体験、体感できる授業にしたいというのが1番の思いでした」(相田さん)
対象学年は、家庭科での調理実習経験があり、栄養に関する話を理解でき、家に帰って家族に伝えられる年齢という理由から、小学6年生に決定。また、開催地は、日清オイリオが横浜市磯子区に工場と研究開発の拠点を持つことから、ゆかりのある場所として「神奈川県内で」と話が進み、今回の授業の内容に親和性の高いSDGsの取り組みにも積極的である鎌倉市に決まりました。
授業は、日清オイリオとキッコーマンそれぞれによる講義と調理実習の2部構成で企画。調理実習で作るメニューは、鎌倉の郷土料理であるけんちん汁に決まりました。
「けんちん汁は、まず、油で具材を炒めます。そして、味つけにしょうゆとみりん、そしてごま油が欠かせず、この2社だからこそ意味があるメニューだと思いました。また、精進料理の一種で『もったいない』の思想を体感することや、郷土料理ですので地域の理解を深めることにもつながります。地元の小学校では、けんちん汁の由来を学び、給食でも食べていると聞き、特別授業に相応しい調理実習になると思いました」(山本さん)
子どもたちはクイズ形式の授業に興味津々。調理実習ではプロの技も披露
開催を希望する学校が出てこなかったらどうしようか、というメンバーの不安をよそに、想定以上に多くの学校から手が挙がり、5校で開催することになりました。
「キッコーマンの授業では、しょうゆをテーマに据えつつ、食塩について話しました。しょうゆの原材料や香り成分など、クイズで子どもたちの興味を引き、塩分の摂り過ぎも摂らなさ過ぎも良くないことを伝え、上手な摂り方を食事例と共に紹介しました」(山本さん)
「私たちもクイズ形式を採り入れ、油の歴史や種類、食べ方、食材との相性をお話しました。天ぷらの具材を引き立てる油の種類や、お刺身にオリーブオイルが合うなど以外な食材との相性など、油といっても1つではないことを伝え、キッコーマン様と同じく、油も適度に摂らなければならない食材だとお話しました」(相田さん)
子どもたちの反応は上々で、積極的に発言してくれる様子も見られました。
続く調理実習は、地元の鎌倉パークホテルの和食レストランより副料理長を招き、プロの技を子どもたちに見てもらうところからスタート。野菜を切る様子に興味津々で、特にかつら剥きに驚く子どもが多く見られました。刺身パックに入っているツマしか知らない子どもにとっては、「大根を切って作っているのか」という発見にもなったようです。
「授業を行う地元のホテルと組むことで、より良い取り組みになるのではと考え、依頼しました。子どもたちの様子を見ていて、プロにお願いして良かったと思いました」(山本さん)
調理実習では子どもたちがスプーンでこんにゃくを切り、豆腐をちぎって入れるという食材に触れることを体験。講師の鎌倉パークホテルの副料理長に椎茸と昆布からとっていただいた出汁の立ち込める香りに、子供たちは歓声をあげていました。また、しょうゆやごま油で味つけをする工程では、一つひとつの工程で味見をしてもらうことで、香りや味の変化を体感してもらいました。
「野菜を炒める香りや、しょうゆを入れ加熱をした際の香ばしい香りなどを感じてもらい、その度に子どもたちから歓声があがりました。特に、最後にごま油を入れた瞬間の子どもたちの反応が非常に良く、笑顔にあふれていました。」(相田さん)
今後も、健康意識の高くない層にまで届く情報発信を
授業後には、子どもたちだけではなく、保護者の方にもアンケートをお願いしました。
「保護者の方からは『子どもが食に関心を持つきっかけになった』といったお声をたくさんいただきました。2社で実施したことで、料理の楽しさや食への興味を持つきっかけになる良い取り組みができたと思います」(山本さん)
「子どもたちからは『おいしさは健康とも大きくつながっていると感じた』『油を摂ると太ると思っていたけど、油に食べ過ぎを防ぐ効果があると知れて良かった』などおいしさと健康の関係性に関する回答を多くもらいました。保護者の方からも似たような感想が多く、まだまだ情報を伝える余地があることを知る機会にもなりました」(相田さん)
参加した子どもたちによるアンケート結果のテキストマイニング
今年度の5校での開催で溜まった知見を活かし、今後も継続して情報発信活動を行っていきたいというのが、2社共通の思いです。
「日清オイリオさんのスライドにあった、『油は笑顔の調味料』というフレーズが印象的だったので、次回はキッコーマンからも何か印象的なフレーズを出したいと思いました。まだまだ健康意識が高くない人への情報発信が足りないと気付かされたため、今後も工夫して続けていきたいですね」(山本さん)
「キッコーマンさんがしょうゆのボトルをデザインしたエプロンをして登場したときの子どもたちの喜びようが印象的で、日常生活に溶け込んでいるブランドであることを改めて感じました。『今日はニンジンが甘く感じる』『いつもの実習よりおいしい』と言ってくれている子どもたちの表情や言葉を見聞きしていて、今後も体感してもらえる機会を設け続けたいと思いました。今は1本で味を決められる便利な調味料がたくさんあり、生活には欠かせないものですが、味覚の形成段階で基礎調味料での味作りを体験することが行動変容につながる大切なプロセスだと思いました」(相田さん)
健康課題を解決するには、既に意識の高い人に情報を届けるだけでは足りません。2社の知見とアイディアを合わせることで実現した今回の取り組みは、より幅広い層に情報発信をする必要性に両社が気付くきっかけになりました。今回の経験を踏まえて、今後も更なる情報発信に取り組んでいきます。
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