ロサンゼルス国際オリーブオイルコンテストでベストオブショーを受賞した「日本オリーブ株式会社」。世界一のオリーブを創るプロジェクトに8年の歳月をかけた担当者たちの想いとは。
弊社(日本オリーブ株式会社)は自社農園「牛窓オリーブ園」を所有し、オリーブの素材開発から製品の製造販売を行っています。この度、牛窓オリーブ園産果実を100%使用した「エキストラバージンオリーブオイルうしまど」がロサンゼルス国際エキストラバージンオリーブオイルコンテスト2024にて、デリケート/国際部門にてベストオブショーを受賞しました。このストーリーでは、世界一のオリーブオイルづくりプロジェクトに込めた想いや試行錯誤についてご紹介します。
ロサンゼルス国際オリーブオイルコンテストにて「エキストラバージンオリーブオイルうしまど」がデリケート/国際部門でベストオブショーを獲得
牛窓オリーブ園(日本オリーブ株式会社)は、岡山県牛窓町に1942年に牛窓オリーブ園を開園した、オリーブ生産者としては“古株”の日本オリーブ株式会社です。1949年の創業時から化粧品の製造販売がメインでしたが、1992年にスペインに自社農園を所有し、1995年の日本でのオリーブオイルブームの頃から食用オリーブオイルに注力し始めました。
2017年、スペイン トルトサ自社農園産のエキストラバージンオリーブオイルが、地元カタロニア州のコンテストで総合一位となります。この時、完全にアウェイだった私たちのスペイン農園の管理者堀江さんは「表彰式で壇上に上がる足の震えが止まらなかった」とのこと。壇上に上がると、温かい拍手で迎えられ、やっとほっとしたと語っています。
2018年、「オリーブの専門家集団でありたい」と企業の指針を立て、世界一のオリーブオイルをつくるプロジェクトが立ち上げられました。メンバーに指名された研究員は、「今、できることはやっている。これ以上、どうしたらいいのか……」と頭を抱え、オリーブオイルの搾油の最新情報収集はもちろん、化粧品原料の植物エキス抽出のエキスパートである先輩研究員に相談するなど日夜頭を悩ませました。そして搾油時に窒素を充填するなど出来ることをなんでもすることに。そしてできたオイルはオリーブジャパン国際オリーブオイルコンテスト2019にてベストオブジャパン(日本一)を獲得しました。日本一の吉報の喜びにひたるメンバーと社長に「目標は世界一ですよね?」と、目を覚まさせたのは植物エキス抽出のエキスパート研究員。そしてさらにチャレンジを加えていきます。
コロナ禍で生活様式や仕事の在り方が大きく見直される中、オリーブの栽培と搾油もギリギリの人数で工夫して続け、2024年、ついに、権威あるロサンゼルス国際オリーブオイルコンテストにて「エキストラバージンオリーブオイルうしまど」がデリケート/国際部門でベストオブショーを獲得することができました。
担当者インタビュー
それぞれの担当者に裏話を聞きました。
吉田(製造責任者・パネルリーダー)
―――プロジェクトがスタートした時のことを教えて下さい。
最初、社長が「世界一をめざす」って言い出したときは、みんな本気にしていなかったんじゃないかな。でも、頭を抱えて手探りしながら取り組んだら、日本一と認められた。それからみんな「良いオイルを採ろう」と考えるようになり、どのスタッフにも作業がちゃんと伝わるようになりました。近年は、日本でも生産者が増えて、規模も大きいところが既にあり、競争が厳しくなった半面、オリーブオイルを知る人も増えてきたのはとても良いこと。老舗としてきちんとするべきことをする、仮に同じ作り方をしても、農産物なので風味が全く同じになるわけではありません。我々は常に「理想のオイルは?」と問い続け、作り方もバージョンアップさせています。だから、世界一をめざす取り組みは、これからもずっと続くと考えています。
―――今回の賞はどのくらい価値あるものですか?
ロサンゼルス国際オリーブオイルコンテストは品評会格付も上位ですので、信頼度がかなり高いです。デリケート/国際部門の中には本場スペインやイタリアも入っているので、その中で一位は本当にすごい!の一言です。
―――受賞できた要因をどのように分析していますか?
収穫時の天候に恵まれて、例年より辛みがありました。デリケート部門では、繊細な風味ながらも複雑性、つまり各要素のバランスの良さやハーモニーが求められますが、今年のオイルはその点で申し分ないですね。
―――過去の搾油工程の実験的な取り組みを整理してみました。
2018年
プロジェクト立ち上げ。酸化との戦いであるオリーブオイルづくりの工程で挑戦開始。
① 収穫から搾油までの時間をさらに短くする
② 果実をペースト化する工程で窒素を吹き込み、酸化を抑制する
2019年
③ 脱塩素した水で果実を洗浄する
④ 洗浄水の水切りを徹底する
⑤ 果実ペーストの撹拌工程で冷却水を利用する
⑥ 遠心分離工程で加水をしない
2020年
⑦ 試験的にペースト化する前の果実を冷却する
2022年
⑧ 得られたばかりのオイルを素早くろ過し、ろ紙交換も頻繁に行う
2023年
⑨ ろ過を同時に二層で行う
菊地(搾油責任者)
―――実験的取り組みの中心人物ですよね。具体的な苦労を教えてください。
例えば水切りを徹底するための網をホームセンターで買ってとりつけたり、果実を冷やすために漁協で氷を買ってきたり、スポットクーラーをあてるとか。現実的な解決方法を考えて実行しました。
―――まだまだ挑戦のアイデアがありそうですね。
既に前のシーズンで試した方法をもっと進化させようとか、全く別の方法もいくつか考えています。搾油は収穫直後、秋の1か月間くらいしかしないので、アイデアが浮かんでも、いつでも試せるものではないんです。収穫・搾油の時期は人手もかかるし、大変ですが、それまでにいろいろと考えた方法を試すことができる、やりがいを感じる季節なんですよ。いや、本当に、体力的にはしんどいですけどね。その一方で、試したいことはいくつもあるので、待ち遠しくもあります。
―――収穫の日ごとにテイスティングしていますが、使えないオイルもありましたか?
今年はわずかにありました。果実ペーストを機械から追い出すときの、ちょっとしたことで、すごく水っぽいオイルになってしまったり、機械のトラブルでも使えなくなったりします。今回ベストオブショーを受賞した「エキストラバージンオリーブオイルうしまど」は繊細な風味なので、わずかな欠点でもそのオイルは使わない。それは徹底しています。合格したオイルをすべてブレンドするので、人為ではなく、まさに牛窓の土地と今年の気候がそのまま生かされた自然の味なんです。牛窓の土地や気候もスペインやイタリアなどとは違う良さがあるので、これぞ、「牛窓テロワール」という、牛窓の風土を体現したオイルとしての風味を大事にしていきたい、そのためにはひと粒の実も無駄にしないできちんと搾りきる基本的な技術と新しい挑戦が不可欠で、責任重大です。
栗原(栽培責任者)
―――「ベストオブショー」の第一報を聞いてどのように思いましたか?
まず、とても嬉しかったですね。今年が特別という想いは無かったです。いつもと同じように良い果実が収穫できてよかったと思っていました。でも、天候の影響で、今年は今年の味になる、それがまた農業の面白いところですね。
―――夏が暑かったですよね。作業も大変ですが、猪も沢山いるようですが……
猪もですが、気になっているのは雑木や雑草の管理ですね。除草剤を使わないので、草に負けない、木の持つ力を100%引き出すなど、人が作為を巡らすというよりも環境を整えることが大事だと感じています。調子の悪い木も。持ち直してきたら、嬉しいんですよ。それから、一番良かったのは、40年以上農園の管理をしているベテランさんが今年定年の区切りを迎える、その有終の美が飾れたことです。収穫、搾油の時のスタッフはもちろん、園の手入れを社員全員でする日もありますよね。本当にみんなのすべてが合わさった味だと思うんです。
森(栽培担当者)
―――ひと粒も無駄にしない、「エキストラうしまど」ベストオブショー、受賞を聞いていかがでしたか?
嬉しかったです。当たり前のことをしっかりやってきたと思っているので、びっくりしたというのが正直なところですね。
―――元々は果樹の栽培の勉強をしたのですか?
いえ、じつは野菜の方です。野菜の栽培は個人的に今も楽しんでいますが、野菜と違って果樹は1回植えたら一生もの。待つのがすごく長いです!年単位ですから、結果が分かるにも時間がかかります。待つ時間が野菜と全然違うんですよ。それから、うちの園でも木が大きくなりすぎていたり、特に樹形の上が大きいアンバランスだったりが気になっているし、雑木との距離が近すぎて日が当たりにくい畑もあるし、そもそも山全体が粘土質なので土壌も気になります。剪定はもちろん、環境整備や土壌の改良など根本的なことに取り組むと、もっと味が良くなると思うので、きちんと取り組む、これにつきますね。
―――これからテイスティングの勉強も始まりますが……
そうですね。テイスティングは難しそうですけど……。そうそう、前は肉をしっかり食べていましたが、最近は魚貝も好きになってきて、鯛に「エキストラうしまど」をかけてみたら美味しかったので、カルパッチョにハマっています。まだテイスティングの技術はこれからですけど、「エキストラうしまど」は本当に美味しい!とはいえ、世界一とは、驚きでしたけど。
―――世界一のオイルの果実を栽培するのに、一番の苦労は?
暑さですね。5月から扇風機のついた服で作業しますが、作業によっては上にカッパを着たりすると空気が抜けないんですよね……。真夏など、水分は一日3リットルぐらい摂ります。
―――そういった意味では命がけですね。
そうです。無理せず、怪我せず、淡々と、畑を改良して良いオイルがとれるふっくらとした実がとれるよう頑張ります!
―――皆さんありがとうございました。
【インタビューを通して見えてきたポイントと想い】
・世界一のオイル創りの取り組みはフィニッシュがない。
・牛窓テロワールを大切にするため、実験的な搾油方法の取り組みを続ける。
・木の力を100%活かす栽培。
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