難民キャンプで相次ぐ火災や豪雨。懸命に生きるロヒンギャ難民が安心して生活できるよう、まずは世界に関心を持ってもらいたい
「ロヒンギャ難民」をご存知でしょうか。2017年のミャンマーの激しい武力弾圧を機に、多くの人々が隣国バングラデシュへと逃れたロヒンギャ難民危機。祖国で弾圧を受け、命からがらやっと避難した先も過酷な状況。難民キャンプの安全面や衛生面の問題に加え、立て続けに火災や豪雨がキャンプを襲い、せっかく築き始めた生活もままなりません。
国連UNHCR協会は、国連の難民支援機関であるUNHCR(国連難民高等弁務官事務所)の活動を支える日本の公式支援窓口です。ロヒンギャ難民問題の発生当初から、UNHCRによる現地での活動を支援してきました。2023年5月、超大型サイクロン「モカ」がロヒンギャ難民キャンプを直撃し、国連UNHCR協会では被害に遭った家族たちを守るための緊急基金を募っています。
国連UNHCR協会がロヒンギャ難民にフォーカスする背景には、ロヒンギャ難民を取り巻く困難、世界の難民が置かれている状況があり、今回はその全容をお届けします。
暴力や性暴力により、祖国から逃げる
ロヒンギャとは、ミャンマー西部のラカイン州に住むイスラム系少数民族のこと。2017年の弾圧を機に難民問題に発展しましたが、それ以前からロヒンギャ族は、仏教国のミャンマーでは宗教、民族、言語の違いから、長年差別の対象となってきました。
2017年、ミャンマーで起きた暴力行為によりロヒンギャの集落を焼き払われ、乳幼児や女性、高齢者を含む住民が無差別に殺害されたうえ、女性に対するレイプも多発したとされています。
© UNHCR/Roger Arnold
彼らは徒歩や船で、隣国のバングラデシュに逃れてきました。その道のりも過酷なもので、銃撃され、負傷した夫をかばいながら5日間歩いてきた人、小さな木の船を海岸で待ち続ける人。
多くの人が残った家族とともに命からがらバングラデシュにたどり着き、現在は95万人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュで避難生活をしています。ロヒンギャ難民問題は、世界最悪、最大規模の人道危機ともいわれています。
難民の半数以上を占めるのは女性と子ども
ロヒンギャ難民の半数以上は女性と18歳未満の子どもです。多くの人が避難の過程で性暴力を含むひどい暴力を受け、家族も失い、心身に傷を抱えています。
© UNHCR/Fauzan Ijazah
難民キャンプに避難してからも、女性や子どもにとって心が休まる日はありません。「夜の難民キャンプは灯りが少なく、若い女性がさらわれたり、命を落とすことさえもある」と女性に対する暴力の防止に取り組む女性難民グループの人は言います。
次々と難民キャンプを襲う災害と避難生活の長期化
急激に人が増えた難民キャンプは過密状態で、住居、水、衛生環境が整っていません。そこでの生活は困難の連続です。現在、バングラデシュのコックスバザール地域にある難民キャンプでは約80万人のロヒンギャ難民が不安定な仮設住居で密集して生活をしています。
さらに、不安定な暮らしに襲いかかるのが災害です。難民キャンプが過密状態であることから、2023年3月にはクトゥパロン・バルカリ難民キャンプで大規模な火災が発生。約3000戸以上のシェルターと155箇所以上の病院や学習センターなどが被害に遭い、1万6000人以上が家を失って再び避難を強いられました。
また、毎年モンスーンの時期には、地盤の緩い難民キャンプで生活するロヒンギャ難民の仮設住居は水につかり、洪水や地滑りなどで甚大な被害が発生しています。
2023年5月には豪雨と強風を伴うサイクロン・モカが難民キャンプ付近に上陸し、シェルター4628棟、200箇所以上の衛生施設が被害を受けました。家屋だけでなく主要な施設も破壊されたため、緊急シェルター、清潔な飲料水、食料の供給、保健衛生施設へのアクセス確保等が緊急に必要です。
せっかく難民キャンプに避難し、故郷への帰還や生活の自立を目指して懸命に暮らしを築いていっても、UNHCRやパートナー団体と一緒に培ってきたヘルスケアセンターや学習センターなどのコミュニティ施設も次々に破壊されてしまうのです。なかなか前に進めない状況が続いています。
祖国を思い、懸命に生きる難民たち
過酷な環境の中でも、難民たちは未来を信じて懸命に生きています。UNHCRの支援により言葉や数字の勉強をしたり、自立に向けて縫製などの作業を行う取り組みも広がりつつあります。
ある女の子は「夢は医者になること。男の子も女の子も、仲間のみんなを助けられるようになりたい」と語り、また別の子は「自分の国のためになることをしたい」と言います。ある女性は、「平和とは、安全な場所。人としての権利を取り戻し、故郷の家に帰れること」と言います。
女性に対する暴力の防止に取り組む難民女性グループや、難民の性暴力を防ぐ取り組みをする青年など、懸命に前に進もうと声をあげ、行動する人々も。その青年は、「大学に行きたくて何度もトライしたけど、キャンプ外で通用するIDがないから無理だった。ロヒンギャだからだめとも言われた」「教育をすることで、性暴力は減らせると思っている。国際社会とロヒンギャが協力することが必要」と語ります。
そこには、過酷な生活の中でも未来を信じて生きる人々の姿があるのです。
彼らを助けるために
UNHCRは、支援を必要としている1億人を超える人々を対象に、約135か国で難民援助活動を実施しています。その活動資金は各国政府からの任意の拠出金や民間からの寄付金に支えられていますが、もっと広く民間からも支えていこうという機運が世界的に高まり、日本では2000年に民間の公式支援窓口として、特定非営利活動法人 国連UNHCR協会が設立されました。
国連UNHCR協会はロヒンギャ難民のために、現地の水や衛生環境の整備、度重なる災害への対応も含む仮設住居の補強・整備、教育支援などを実施するためにUNHCRが必要とする資金を提供しています。さらに、「WOMEN+BEYONDプロジェクト」という難民女性支援プロジェクトの一貫として、日本でできる支援や問題の認知度向上のための取り組みを行っています。
しかし、現在は支援が十分であるとは言えません。資金不足によって十分な食料配給が叶わず、いまだロヒンギャ難民キャンプの5歳未満の子どもの10%以上が栄養失調状態にあります。また、難民が住むシェルターは、竹の骨組みにビニールシートを被せただけの作り。毎年襲う豪雨に際しても、資金不足が被害の拡大につながっています。
国際情勢が変わり続ける今だからこそ、注目と継続的支援を
ロヒンギャの難民問題が発生して以降、新型コロナウイルスの流行やウクライナ危機など、激しい世界情勢の変化が起こっています。2017年の問題発生当初は「未曾有の人道危機」として報道され、国際社会でも弾圧を行ったミャンマーへの非難の声が高まった一方で、6年が経過する今では報じられることが少ない「忘れられた危機」となっているのが現状です。実際、資金不足により、難民への食料支援は3分の1に削減されてしまいました。
国連UNHCR協会はこの状況を打開すべく、まずロヒンギャ難民について知ってもらい支援につなげるため、ロヒンギャ難民女性・女子たちへの支援を呼びかける「チャリティラン&ウォーク」を「WOMEN+BEYONDプロジェクト」の一環として開催しました。
また、2023年5月のサイクロン・モカによる被害を受けた難民キャンプへの寄付金も募っています。皆様からの寄付によって、難民たちは生きるために必要な住居や食料得ることができます。どうぞ、UNHCRの援助活動にご協力ください。
■サイクロン・モカ緊急募金
https://www.japanforunhcr.org/campaign/cyclone-mocha
■WOMEN+BEYONDプロジェクト
https://www.japanforunhcr.org/appeal/women-beyond
■UNHCRの活動
https://www.japanforunhcr.org/what-we-do
■国連UNHCR協会について
https://www.japanforunhcr.org/about-us
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