非上場企業が人的資本の情報開示に取り組む理由とは 中小企業としては国内2社目のISO 30414認証を取得したコンフォートジャパンに聞く
金融庁により2023年3月以降、有価証券報告書を発行している企業のうち上場企業約4,000社に人的資本の情報開示が義務づけられるなど、企業における人的資本の情報開示が進んでいます。
上場企業においては、新たな投資を呼び込むことができるなどのメリットもある人的資本の情報開示ですが、そのような中、非上場の中小企業においても、人的資本の情報開示を行う企業が増え始めています。
今回は、株式会社コトラの人的資本コンサルティングのサポートをうけ、中小企業としては国内2社目となるISO 30414認証を取得した株式会社コンフォートジャパンに、なぜ今人的資本の情報開示に取り組むのかについて、インタビューを行いました。
※ISO 30414とは:2018年12月にISO(国際標準化機構)が発表した人的資本に関する情報開示の基準を定めたガイドラインのこと
コンフォートジャパン 手塚均 代表取締役CEO
きっかけは人材採用。Z世代の会社選びが変わってきている
「ISO 30414の認証取得に興味を持ったきっかけや、目的はなんでしたか?」
少子化の影響もあり、新卒採用が難しくなっていく中で、当社が人のことを考え、人に向かって経営をしていることを可視化し、知ってもらいたいと考えたことがきっかけです。
株主が企業をみているように、求職者も企業を見ていると感じています。
この企業はどのように考え、将来的にどこに向かっていくのかということを求職者にも開示したほうが、若者の募集も増えるのではないかということを、新卒採用を十数年にわたってやってきた中で感じていました。
例えば新卒者に向けた会社説明会をやっていても、サステナビリティやESGなど、環境に対して関心が高い若い人たちが多く、当社の取組みを発信するとすごく共感してもらえます。自分もそういった企業の一員になりたいと感じる若い人が増えていると思います。
それらの取組みを、客観性をもったデータとして可視化し、開示したいと感じていたところ、ISO 30414の存在を知りました。
海外との取引の中で学んだこと
また当社は、ヨーロッパの企業から商品を輸入しており、その取引の中で、学んだことも大きいと思います。
ヨーロッパでは、財務指標に表れるような利益の部分と、そこには表れない環境や働きやすさといった、いわゆる人的資本といった価値と、両方の価値をあげることが求められます。両立させることは難しいことではありますが、長いスパンでみたときには両方大切にしていかなくてはいけないということを実感しました。
その企業はB corp認証を持っていて、その企業のサステナビリティレポートをみたことがあります。人的資本についての他、環境への取組みやデータも詳細に報告されており、すごいと感じました。
そういった企業と取引があり、その中でポジティブなインパクトを社会に与えることの価値を学んだことは、大きかったと思います。
Z世代に代表される今の若い人はそれらをよく見ていると思います。求職者だけではなくお客さまもそうだと思います。海外のマーケットでは特にそれを感じていました。
財務指標には表れない「資本」を開示
当社は美容の会社ということもあり、「人を綺麗にすることで人の心を綺麗に、そして人の心を豊かにする」を理念に掲げ、外見を綺麗にするだけではなく、人の内面を美しく輝かせる仕事をしていきたいと考えています。そのような意味で、企業にとっての外見である財務指標だけでなく、内面としての人的資本の価値を開示したいと考えています。
前列左より、
コンフォートジャパン 道休執行役員、手塚CEO、菅又マネージャー
後列左より、コトラ 蘇木、村上、杉江
コトラの人的資本コンサルティングを選んだ理由
「コトラを選んでいただいた理由はなんでしたか?」
コトラさんは、医療法人miraiさんやコンクリートコーリングさんなど、ISO 30414に準拠したPeople Fact Bookの開示を支援された実績があり、また、認証機関のHCプロデュース社とも連携されていると聞いたためです。
また、システムを利用した人事データ管理の支援実績があるということも決め手の一つでした。
まずは社内理解から。管理職向け勉強会を実施
「ISO 30414の認証取得はどのようなプロセスで進められましたか?」
まずはISO 30414について知ること、理解を深めることから開始しました。取り組みに対する社内理解を得るためコトラさんにご協力いただき管理職向け勉強会も実施しました。
その後のステップとして、指標毎の定義、データ収集、課題抽出、目標設定、レポート作成と進めていきましたが、初回ということもあり、修正等で各ステップを行き来することも多くありました。
理想とする企業作りのため、一貫性のある取組みを導き出すことに苦戦
「ISO 30414の認証取得のプロセスで特に苦労したことはなんですか?」
通常業務にプラスアルファでこのプロジェクトに関わっていたので、作業時間を確保することに苦労しました。
また、人的資本について目標設定、課題抽出、それに対して今後の取組みを設定するためには、経営陣の考えをまとめる必要があります。理想とする企業作りのため一貫性のある取組みを導き出すことに苦戦しました。
もともと課題感を持って取り組んでいた内容については目標やストーリーも設定しやすいのですが、それ以外の指標については、数値を算出するだけで精一杯になってしまった部分もあります。
一方で今回、認証取得のプロセスを経て、指標の意義や算出方法の理解度は上がりましたし、データの取得体制等についての課題も把握することができました。次回の審査に向けては、今回よりは楽に準備できると思います。
課題が浮き彫りに。現状の取り組みに抜け漏れや不足がないか確認
「ほかの企業に対して、ISO 30414認証の取得を勧めるとしたらどのような点がありますか?」
至らないところが浮き彫りになったということが、実は一番良かったとおもっています。
ISO 30414は人材マネジメントの領域を幅広くカバーしているため、現状の取り組みに抜け漏れや不足がないか確認することができると思います。
指標に表れない改善点にも気づき
また、認証取得のプロセスの中で、指標には表れない改善点にも気づけるようになりました。
認証取得にあたっては、単に指標の数値を算出するだけでなく、戦略と絡めたストーリーの説明や目標値の設定、社内体制の整備などが求められるため、人的資本経営を本質的な意味で実践するための取り組みを自然に行うことができるようになります。そういった点もよかったと思っています。
指標については、58指標すべてに取り組んだ方が良いと思います。特にエンゲージメントは社員のモチベーションを測るうえでも非常に重要だと思います。何が出来るのか、課題を導き出し、取り組みに繋げることに意義があると思います。
企業は人ありき。会社の「いい雰囲気」という資本を可視化して開示する
当社は幸い、出入りしていただく業者の方などつきあいのある人たちからも、会社に入ってきたときの会社の空気感や社員の雰囲気が、すごく感じがいいとおっしゃっていただけます。
その「いい雰囲気」を、もっとみなさんに知っていただくために、ISO 30414認証で可視化して、オープンに開示できたらいいと思います。
企業は人ありきだと思います。お客様や取引先、社員など、当社に関わる人すべてに、魅力的な会社だと思ってもらえたらと思います。
利益率や収益だけではなく、そこでは見えない会社の環境や会社の文化みたいなところも可視化して、知ってもらうことは大切なことだと思います。
第三者機関からの客観的評価という信頼
ただ、自社での評価だけを開示しても、どうしても独りよがりのポジショントークととられがちです。また評価にバイアスがかかってしまうこともあると思います。そういった点で、ISO 30414認証取得という第三者機関からの客観的な評価があると、より信頼性が得られ、確かだと思っていただける点も重要だと思います。
「ISO 30414認証取得プロジェクトを終えての感想や、今後の目標などを教えてください。」
コトラさんには1年間に渡って辛抱強くお付き合いしていただき、ノウハウの提供や細やかなアドバイスをいただけて感謝しています。
ISO 30414の認証は取得しましたが、人的資本経営の取り組みとしてはようやく始まったところだと考えています。今回は主に、中小企業を対象にした指標について取り組みを行いましたが、今後は58指標すべてに取り組んでいきたいと思います。
■コンフォートジャパンについて:
- 法人名:株式会社コンフォートジャパン
- URL:https://comfortjapan.jp/index.html
- 所在地:神奈川県横浜市西区高島1-1-2 横浜三井ビルディング28F
- 業種:卸売業、電気機器業、サービス業
- 従業員数:141人(2023年度末)
- サービス概要:
化粧品の製造・販売および輸出入
美容健康に関する器具・機材の製造・販売および輸出入
イタリア生まれのスパストアの展開とビジネスサポート
プロフェッショナルスタッフの斡旋と養成(スパに関する人材育成および店舗開発のコンサルタント業務)
※株式会社コンフォートジャパン「HUMAN CAPITAL REPORT 2023」:https://comfortjapan.jp/newslist/2024/images/human_capital_report_2023.pdf
■コトラの人的資本コンサルティングについて
下記の人的資本コンサルティングサービスを通じ、株式会社コンフォートジャパンのISO 30414認証取得と「HUMAN CAPTAL REPORT 2023」(人的資本レポート)の開示をサポートいたしました。
- 経営陣へのインタビュー
- ISO 30414規格のレクチャー
- フィット・アンド・ギャップ分析
- 開示指標算出のためのサポート(定義、元データ、算出式の確定)
- 開示体制構築のサポート
- 社内文書整備のサポート
- 人的資本指標データ算出、管理のためのHRDX構築のサポート
- 人的資本報告書の推敲
- 認証申請時のサポート
※コトラ人的資本コンサルティングHP:https://consulting.kotora.jp/
■株式会社コトラについて
「人が変われば企業が変わる 仕組みが変われば人が活きる」
コトラは人材のプロとして、人と企業の成長をサポートしています。
プロフェッショナル人材の採用・活躍支援、DX支援、人的資本コンサルティングなど、企業様の成長をご支援する人材ソリューションをワンストップで提供するとともに、プロフェッショナル人材にとって最高の転職体験と職業体験を提供しています。
- 本社所在地: 〒107-0052 東京都港区赤坂1-7-19 キャピタル赤坂ビル2F
- 代表: 代表取締役 大西 利佳子
- 資本金: 1億円
- 設立: 2002年10月
- 事業許可番号: 人材紹介/13-ユ-010833 人材派遣/派13-011201
- 職業紹介優良事業者認定番号: 2102007(03)
- 認定日2022年3月31日
- URL: https://www.kotora.co.jp/
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