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今日が、残りの人生の最初の1日。

川崎の複合商業施設「ラ チッタデッラ」と、天然氷のかき氷専門店「白熊堂」との出会い。ご縁を大切にした店づくりと出店の裏側

著者: 株式会社 チッタ エンタテイメント



 川崎にある「ラ チッタデッラ」は、イタリアのヒルタウンをモチーフに作られた複合商業施設です。

 本STORYでは、そんなラ チッタデッラにある魅力的なテナントの中から、今回は天然氷のかき氷専門店「白熊堂」にフォーカス。ラ チッタデッラが白熊堂と出会い、出店してもらうことになったきっかけや経緯について振り返ります。

2021年5月にキッチンカーとしてスタートした「白熊堂」。ラ チッタデッラ館長が直々にスカウトし、同年8月「ラ チッタデッラ」の実店舗として初出店。

 2021年5月、かねてより飲食店の独立開業を目指していた辻本氏は、コロナ禍真っ只中での開業で店を構えてお客様を待つ形では厳しいと考え、お客様のいるところに出向ける形態を取ろうと考えた末、キッチンカーとしてスタート。

 下北沢で営業していた白熊堂に当時のラ チッタデッラの館長である武智俊行が来店し、その場で出店交渉をしたところからはじまります。


(武智)「当時、まだ“天然氷”という言葉も知らなかった頃、たまたまインターネットサイトで天然氷を使ったかき氷の専門店があることを知り、気になったので実際に部下を連れて下北沢に食べに行きました。そこで、辻本さんから天然氷という希少な氷の存在の価値やこだわりをお聞きし、お客様に対するサービス精神や穏やかな人柄に触れ、何より創作性が高く美味しいかき氷に一目惚れしました。元々甘いものが苦手な私でも、最後まで美味しく食べることができたのは自分でも驚きで、このお店はきっとまだまだ多くの人に愛されることができると確信しました。当時、川崎にはなかった“天然氷”を扱う専門店として、当施設に入ってもらい、もっと多くの人に辻本さんの作ったかき氷を食べてもらいたい。そんな想いから、辻本さんにその場で、“うちに来ませんか?”と出店のご提案をしました。」


 その頃の白熊堂は、開業後間もない時期で、資金的な不安やブランドも育っていない中でどこまで取り組めるのかわからないという状況だったため、初めは施設からの提案で期間を設けて出店をチャレンジしてみる運びとなり、臨時店舗としてテナントインすることになりました。


 2021年夏、コロナ禍の影響もまだまだ大きい中、白熊堂は堅調に売上をあげ、同年秋に約5坪の区画に正式に出店。

 その後も、創作性溢れるメニューと丁寧なサービスで、行列の絶えない人気店へと成長し、2023年11月には、同施設内にて約19坪の区画へ移転リニューアルオープン。

 インフルエンサーや話題の飲食店等とコラボレーションを実施するなど、常に新しいことへの挑戦を行っており、目的来店のお客様やリピーターも多いラ チッタデッラの代表的な店舗の一つとなりました。

 旬を大切にした季節ごとのかき氷だけでなく、企画に沿ったオリジナルメニューを開発し、お客様に新たな味覚のご提供をしています。

食べることで心と体が健康になれる。天然氷と旬の食材を使ったかき氷専門店「白熊堂」


 白熊堂の店名は、店主の辻本さんの前職時代のあだな「白熊」に由来しているのだとか。そんな店長の辻本さんに、かき氷へのこだわりや開店秘話について伺いました。


――日光にある蔵元、松月氷室さんの天然氷で作ったかき氷が人気を集めている「白熊堂」。他のかき氷ではあまり見られないユニークな食材を使った限定品も魅力です。あらためて、その特徴やこだわりポイントをご紹介いただけますか?


 まずは天然氷そのものに特徴があります。比較する氷によって差異はありますが、基本的に天然氷は密度が高く硬いため、薄く削れるんですね。そのため、かき氷にしたときの口当たりがやわらかになります。


 また、やさしい風味を味わえるのも天然氷ならでは。白熊堂では、そんな天然氷の良さを引き出すため、削る刃の交換頻度、氷を抑える強さ、削る際の氷の温度にこだわっています。


――氷に合わす食材についてはいかがでしょうか。


 美味しいことはもちろん、体にやさしいものを使うようにしています。召し上がったお客様の血糖値が急激に上がることを防ぐため、お砂糖はてんさい糖や和三盆を使用。クリームは植物性のものを使用し、軽い口当たりになるようイメージしています。


 健康を害してしまうと、甘いものは制限されてしまうことがありますよね。私自身も甘味が好きなひとりとして、いつまでもお客様に美味しく食べていただきたいと思っているんです。食と健康の知識を高めるため、「医食同源」や「薬膳」についても勉強し続けています。


 以前、糖尿病になってしまって当店に来られなくなってしまったお客様がいたんです。それがすごく悲しくて。治療後に来店された際、「砂糖はダメだけれど、果汁100%であれば甘いものを食べられる」とお聞きし、そういったメニュー作りにも取り組んでいます。あとはヴィーガン。需要が増しているため、対応したメニューを作りたいと考えているところです。


――旬の食材を使ったメニューも、健康への考えがあって提供されているのでしょうか。


 そうですね。「暑い夏には夏野菜を食べる」など、その季節の旬の食材を食べようという考えは、その時期に特に美味しいからというだけではなく、健康に役立つから育まれてきたものだと考えています。そのときの体に必要だからこそ、「食べたい」と欲するのではないかなと。


  食材の旬は、「はしり」「さかり」「なごり」と3つの時期に分かれて考えるのが基本です。それぞれ10日ずつの1ヵ月が「旬」。その考えにならい、白熊堂の期間限定メニューは1ヵ月を提供期間としています。



ここまでは「栄養面」の旬の話なのですが、ここに加えて「心で食事する」という考え方も「食の旬」に含まれるようになっていったのだと思っています。「昔、家族で食べた懐かしの味」や、落語にある「千両みかん」のような味わい難い希少性に対する食欲などですね。栄養面、精神面の2つの面で満たされることが人にとって大切なのだと思っています。



ちなみに、白熊堂でお出ししている「黒糖珈琲みるく」は、私にとっての幼いころの思い出の味を再現したものなんですよ。当時の我が家には、マグカップに入れたコーヒー牛乳を冷凍庫で凍らせたものをつついて食べるのがブームだったんです。



白熊堂で大切にしている考え「であいもん」とは?


――辻本さんは「であいもん(であいもの)」という考え方も大切にされているそうですが、これはどういった考え方なのでしょうか。


 異なる食材が組み合わさって、より良い食味を生み出すこと、その組み合わせのことを指す言葉です。言葉的に関西地方で生まれた言葉なのかなと思っています。京都は和食の最高峰のイメージが根強い地域ですしね。


 例えば、かつお出汁と昆布出汁を合わせることも「であいもん」ですし、鰻にきゅうり、鱧に梅もそうです。日本だけではなく、ハワイには「サーフアンドターフ」という海と山の幸を合わせる食べ方もあるんですよ。


 メニューを考えるときは、香りや味の相性を考え、異なる食材を組み合わせるようにしています。会心作は「ハスカップジャスミンミルク」と「香がらしのホットなチャイかき氷」、先ほどお話した「黒糖珈琲みるく」ですね。


 「ハスカップジャスミンミルク」は、ハスカップの生産地である北海道東町のJAさんから認知を上げたいとお声がけいただき考案したもの。ジャスミンと香りが合うとひらめきました。酸味だけだと物足りないので、ミルクを足してコクを加えています。私のメニュー作りは、このひらめきがほとんどで、常に次のアイディアが頭にあふれているんですよ。



 香がらしは香りの強い唐辛子の仲間で、これも声をかけてもらって知ったものです。いずれ唐辛子でかき氷を作りたいと思っていたんですよね。でも、激辛系ではなく美味しいものにしたかったんです。辛さではなく香りで戦っている唐辛子があると知り、チャイ風に仕上げてみました。ぜひ召し上がってみてほしいです。



――かき氷には合わせづらそうな食材も使っているんですね。


 そうかもしれませんが、どれも美味しいんですよ。生産者さんの顔が見える食材を使いたいと思っていまして、この他にも縁あってつながった生産者さんがたくさんいます。生産者さんだけではなく、イラストレーターさんなど、クリエイターの方ともご縁があり、グッズをコラボメニューに付けたり、店内で作品を販売していたりもしています。これからもご縁を大事に活動していきたいです。









「いつか天然氷という食材を扱いたい」。ご縁が広がり、キッチンカーから独立開業の夢を実現


――辻本さんが白熊堂を開くまでについても伺いたいです。元々は和食やイタリアンなど、料理の世界で働いていたそうですね。そこからなぜ、かき氷専門店を開こうと思うようになったのでしょうか。


 まず自分の中にあったのは、「10年という節目で独立開業しよう」という思いでした。あとは、「いつか天然氷を食材として扱いたい」という思いですね。


全国各地を仕事で巡るなかで、お造りのお皿やお酒などに天然氷が使われていること、天然氷で作ったかき氷があることを知り、食材として魅力を感じていたんです。ただ、天然氷は簡単に取り扱えるものではないんですよ。


――なぜですか?


 天然氷は冬場に自然に凍らせたものですから、生産量に限りがあるんです。多くの蔵元がすでに長年付き合いのある取引先で注文が埋まっている状態なんですよ。


 そうしたなか、前職時代に知り合った氷業者さんが一緒に動いてくださったこともあり、3年ほどのアプローチ期間を経て、今の蔵元さんとお取引いただけるご縁を得ました。その蔵元さんには、かき氷作りの基礎知識も教えていただいたんですよ。天然氷の知識の浅さを痛感しましたね。一方で、シロップに関してはこれまで自分が和食やイタリアンの世界で経験してきたソース作りが活かせそうだと思いました。



――かき氷は季節性の高い甘味ですが、専門店として開業することに不安はなかったのでしょうか。


 かき氷専門店としての不安はなかったですね。独立自体、「なるようになるかな」と楽観視していました。これは「時間が空いたら手伝ってほしい」という仕事のお誘いの声が多かったからでもあると思います。気持ちの面で「ダメでも食べてはいけるだろう」という保険があったんですよね。


 ただ、独立開業を目指した時期がちょうどコロナ禍と重なったため、周りからは独立すること自体に心配の声をいただいていました。そうしたなかでも独立の夢を実現できたのは、ひとえに良いご縁に恵まれたからなんです。


 白熊堂の最初の一歩は、前職時代にお取引のあった方が営業しているコーヒー屋さんからの「試しにうちでやってみたら?」という間借りのお誘いでした。それが2021年3月の春分の日のことです。5月には、コロナ禍の情勢を考え、店舗ではなくキッチンカーで白熊堂をオープン。このキッチンカーは、前職時代に競合だった会社の方が応援してくださったご縁で得られたものなんです。


 そして、ここラ チッタデッラに店を構えることになったのもご縁なんですよ。キッチンカーに食べにきてくださった館長さんが「うちに出店してくれませんか」とスカウトしてくださったのがきっかけなんです。


――あまりの人気ぶりに、今の場所に移転することになりましたね。


ええ。最初はイートイン5席の5坪の店舗からスタートしたのですが、もっと多くの方に店内で召し上がっていただけるよう、今の場所に落ち着きました。ちなみに、最初の5坪の店を始める前には、コロナ禍で営業が厳しかった別のお店を間借りさせていただいていた時期もあったんですよ。



「ここにきたら誰かと誰かがつながるお店」へ。白熊堂の今後の展望。


――白熊堂の今後の展望についてお聞かせください。


 これまでと変わらず「長く愛される店づくり」「初心を忘れない」ことにこだわり続けたいですね。初心を忘れないために、店の中に2000円を飾っているんです。これは白熊堂の初売上で、お客様から「あれ何?」と尋ねられ、お話するたびに自然と原点に立ち返られるんですよ。ありがたいことに、店を開けてからお客様がゼロだった日が1日もないんです。



お客様、生産者の方たち、クリエイターさん、応援してくださっている方々など、ご縁のおかげでここまでやってこられました。そんな皆さんに、ずっと笑顔でいていただきたいというのが私の願いです。


「ここにきたら誰かと誰かがつながる」お店にしていけたらいいなと思いますね。他のかき氷屋さんともつながって、何かコラボができたらいいなとも思っています。そうした輪を広げていって、かき氷を日本の文化「KAKIGORI」として発信していきたいです。


おわりに 

ラ チッタデッラについて

 2002年に開業したイタリアのヒルタウン(丘の上の街)をモチーフに作られた「ラ チッタデッラ」は、首都圏最大級のシネコン「チネチッタ」と大型ライブホール「クラブチッタ」を中心に、ショップ&レストランや、美容・ウェルネス、ウェディングなどのサービスが集まる、楽しみいっぱいのエンタテイメントの街です。

 ラ チッタデッラでは、各テナントとのリレーションシップを大切に、お店も従業員も輝けるあり方を追求し続けています。また今後も、地域に根差した商業施設として、お客様に心地のよい空間と様々なエンタテイメント、グルメやサービスをご提供いたします。





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