スマートドライブ第一号社員のCDOがデザインに込めている想いとは?
2013年の創業以来、「移動の進化を後押しする」をビジョンにかかげ、さまざまな移動データを利活用したサービスを展開するスマートドライブ。CEOの北川が起業に込めた想いやアイデアを具現化するために採用した第1号社員はデザイナーでした。テクノロジー企業だったら、まずはエンジニアでは...?と思われる方も多いと思います。最終的にお客様の手元で利用されるプロダクトやサービスは、使いやすいく、分かりやすいデザインが重要と考えた結果、初の社員はデザイナーだったとのこと。
創業以来スマートドライブとして世の中に出ているアウトプットは、すべてこのデザイナーが携わったものです。今後のさらなる事業の拡大に向けても不可欠なデザインへの想いを、最高デザイン責任者(CDO)のロックウッド ガナーに聞きました。
「ポジティブ フィードバック ループ」はスマートドライブのDNA
アプリのUI、営業や展示会で使う印刷物、お客様が使うIoTデバイスetc...スマートドライブのデザインは対象が幅広いですが、心がけていることはありますか?
デザインを通じてどのようにコミュニケーションするか、常に2層構造で考えています。まず、第1の層となっているのは、スマートドライブのブランドのコアとなる部分です。これは私たちスマートドライブがコミュニケーションに用いることすべてに適用されます。
コアの外側に存在する2番目の層は、より具体的な言葉と視覚的なメッセージを制作物に適用している部分です。コアとなるバリューを取り入れつつ、コミュニケーションの対象のお客様や、製品・サービスに合わせて柔軟に調整しながら適用してます。
たとえば、私たちスマートドライブのコアとなっている要素の1つに、モビリティに関わる社会をより良くする基盤作りに携わっていることがあげられます。スマートドライブのDNAと言ってもいい「ポジティブ フィードバック ループ」という考え方があるのですが、具体的に、車両管理サービスであるSmartDrive Fleetでどのように使われているかを見てみましょう。
SmartDrive Fleetは車両管理のサービスで、スマートフォンやPCを通じて、急ハンドルや急加速・急減速などを可視化し、運転の質を改善するのに役立つフィードバックを提供しています。各走行毎にスコアが付与され、スコアを見ながら改善活動を行うことができますので、ドライバーと管理者は、運転履歴を見ながら安全運転がどのように変化するかを確認できます。
重要なのは、ユーザーの方々が「尊重されている」と心から感じてもらうことだと思っています。ですので、必要な情報はすぐに入手可能な状態にしておこうと心がけています。多くの方々は忙しく、すでに仕事上でストレスを抱えているでしょうから、サービス利用者にさらにストレスがかからないようなデザインにしたいと思っています。ストレスの代わりに、「自分は尊重されている」と感じられるような、使いやすくて分かりやすいデザインで運転の質を可視化して、適切にフィードバックすることで「ポジティブ フィードバックループ」を実現したいと考えてます。
スマートドライブのデザイン四原則
お客様の層もBtoB、BtoBtoC、BtoCと幅広いですが、統一された世界観をスマートドライブのウェブサイトや発刊物から感じます。ご苦労をされているのではないですか?
BtoCであろうと、BtoBであろうと、デザインについての考え方が変わるということはないと思ってます。そういう意味では、あまり苦労してないかも知れませんね。私たちは、誰がデザインの対象であろうと同じ原則を適用し、どうしたら一番よく伝わるかということに強いこだわりを持ってます。
スマートドライブには、デザインを考える際のベースとなる基本原則が4つあります。実際には全部しっかり守られるという訳ではなく、場合によっては、そのうちのある1つが他のルールよりも優先されることもあります。4つの原則について紹介します。
統一感
これには二つの意味があります。
最も強調しておきたい一つ目の意味は、すべてのビジュアルコミュニケーションが同じ表現の一部かのように見えるようにすることです。これによりブランドは強化され、認知度は向上し、無駄な努力をしなくても、新しいものを簡単に構築できるようになります。
二番目は、これも一つ目と同様大切なポイントですが、複数の利害関係者のニーズを同時に考えながらデザインに取り組んでいるということです。サービスを利用する人々のニーズ、会社の方向性、ビジネスチームの目標達成、エンジニアリングチームのニーズとのバランス...。こうしたすべてのニーズを考慮にいれながらデザインをしています。もし、いまあげたようなすべてのニーズに対してバランスが取れていれば、デザインはある程度「正しい」ことになります。
ガイド指針
これは、広い意味でユーザビリティをどのように捉えるかという部分になります。 UIデザイン、マーケティングデザイン、さらにはハードウェアデザインまで網羅します。つまり、すべての場面において、ユーザーが初めてわれわれのUIまたはコンテンツを目にする場合を想定していますので、詳細な説明がなくとも簡単に使えて、分かりやすいものしたいと思っています。
これらすべては、実際にUIを使ったり、コンテンツを読む人々を尊重するという考えに強く結びついています。「おもてなし」の考え方に近いかも知れません。
少労力
これも二つの意味があります。ひとつはもちろん「使いやすさ」という意味ですが、もうひとつの意味は、ユーザーに余分な作業をさせたくないということがあげられます。顧客となる会社がわれわれの提供するサービス利用を決めるということは、その会社のユーザーがわれわれのサービスUIを使用するということです。つまり、何らかの形でその人には新しいタスクが課されます。しかしそのタスクを解決するための努力は、ユーザではなく、われわれデザイナー、またエンジニアやプロダクトオーナーが事前にすべきです。結果、画面の向こう側にいるユーザーは、自分のタスクを簡単に完了することができます。
集中
自分たちが創ったデザインを見るとき、特定の要素が本当に必要かどうかも考えるようにしています。本当に理解に役立つのか?という点だったり、マーケティングにおいては、ユーザーが期待していることへの回答になっているか?という点だったりします。要素が目的を果たしていない場合、または目的があまり明確ではない場合は、その要素を削除するか、ノイズを減らします。
理想としては一部の要素を削除した結果、より早く理解できるような明確なメッセージが作られていることです。繰り返しになりますが、人々の時間を無駄にしないことは、彼らを尊重することに繋がっています。
4つの原則について理解できました。ちなみに、アウトプットを生み出す前に気をつけていることはありますか?
単純なことですが、ビジュアル化する対象について、背景も含め深く理解するように気をつけています。何が最も重要な情報やメッセージなのかを理解して、それをしっかりと強調することはもちろんですが、どのデザインに対しても「どんな手順を踏んで欲しいのか?」「その手順を踏むには、どのように誘導すればいいのか?」「人々がそれぞれの場面で目標達成するのに役立つものは何か?」「これで何を達成しようとしているのか?」といった質問を繰り返します。
これらの問いに対しての答えを導くことで、価値のあるデザインを作るための道筋が明確になり、後になってから修正が入ることが減ります。
会社もデザインも変化し成長する
初期メンバーとしてスマートドライブで働いていて、変わったなと思うことや、変わらないと思うことを教えてください。
スマートドライブは東京大学の近くの小さなアパートでスタートしましたが、渋谷のオフィスに移転してから沢山の方々が事業に関わるようになりました。現在は社員も増えてきたので、それぞれの役割が明確になってきて、会社として安定し始めました。 弊社の事業ドメインは幅広いため、変化のスピードが早く、変更が必要なデザインも多いので、仕事は昔と変わらずに今でもずっとエキサイティングです。
企業の成長によって、デザインの考え方にも変化はありましたか?
最初の2年間くらいはデザインのガイドラインが明確に定義されていなかったので、しょっちゅう変化していました。デザインの方向性を定めるためのプロジェクトを立ち上げ、過去のデザインを振り返えることで、成功要因を特定することができました。そして、このプロジェクトでの経験は上述した四つの原則を導くのにも役立ちました。
スマートドライブの成長に合わせて、デザインの原則も成長していくでしょうし、デザイナーとして変化していくことを楽しんでいます。
モビリティの分野において、デザインの役割はどうあるべきと考えますか?
モビリティの分野における特定の課題や独自のニーズがあったとしても、デザインの原則は変わらないと思っています。しかし、モビリティ業界は大きな変化の波が急速にやってきています。全く新しい体験となるモノやサービスを作る際は、人々が不慣れであることを強く意識し、実際のユーザーに寄り添うことが必要です。これは、先に述べた "導く"という原則を使う場面ですし、その体験自体を定義する良い機会とも言えます。例えば、SmartDrive Fleetの安全運転診断や、安全運転の結果から得られるポイント、またリアルタイムな車両の位置などは、人々が将来的に同様のサービスを利用する際の期待値を明確にする役割があると思っています。
どのようにして、様々なアウトプットを生み出し続けているのでしょうか?
限られた時間とリソースであっても様々なアウトプットを生み出すことが出来たのは、チームメンバーのおかげだと思っています。才能があり、クオリティの高い作品を作ることにコミットしてくれるメンバーに出会えたことはラッキーだったと思いますし、時間をかけて探して良かったです。
デザイナー同士がチームで働く際に大切なことは、しっかりとした共通のビジョンを持つことだと思います。また交通事故を削減するという共通の目標に沿って、われわれに対して何らかの期待を寄せてくれている方々のためにサービスを作っていますので、デザイナーとして良い作品を作りたいというエゴと、会社のビジョンを照らし合わせ、折り合いを付けることも時には必要です。
なるほど。しかし、デザイナーとしてせっかく作ったデザインに対して「変更してほしい」と言われると嫌な気持ちになりませんか?
元々あったデザインへの変更依頼は、今後の改善に向けた良い機会になると考えていいます。デザインの変更依頼があったからといって、わざわざ時間をかけて反省会を行ったりしません。デザイナーは言われたものをただ作るのではなく、ビジネスチームが一丸となって目標達成に向けて働いていけるように、エンジニアがよりよいプロダクトの開発に取り組んでいるように、デザイナーも会社の目指すべき方向に向かってみんなと一緒に仕事をしている、といように考えるようにしています。実際、スマートドライブのポジティブな姿勢は、デザインチームだけではなく、会社全体に広がっています。スマートドライブには、デザインの大切にするDNAが最初から会社に組み込まれているので、クリエイティブを大切にする環境が自然とできていますし、デザインが“きれいなビジュアル”以上の価値を提供できると理解してくれている仲間がいるのは本当にありがたいですね!
本日は貴重なお話、ありがとうございました。これからも素晴らしいデザインを生み出してください!
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