秘密の扉 25
数日後、喫茶店にて
凉子は久々に加納礼子と会うべく、喫茶店「虹」の扉を開け、周りを見回して、まだ友人が見えていなかったので、少しばかり早く来すぎたようだわと思った。
マスターが「いらっしゃいませ」
注文は?と言ったので、友人と待ち合わせしているので後でいいわと言い、席に腰掛けた。
十分後扉が開き、なつかしい顔が
「お待たせ」
マスターがテーブルに来て、いらっしゃいませ。注文は何にしましょう
凉子はアイスコーヒー
礼子はアイスミルクティと言った
はい、アイスコーヒーとアイスミルクティですね。ありがとうございます。
加納礼子は突然顔が険しくなり
「涼子、聞いてくれる」
「いいよ」と言い礼子は気持ちが顔に出やすいからわかりやすいと思った
お待たせしました、アイスコーヒーとアイスミルクティです。
ゆっくりくつろいでくださいね
凉子は「ありがとう」とマスターに言い、礼子に発言を促していた
「私、食品工場に勤めていると言ったよね」
「聞いたよ。それで」
「担当部署は様々あって、私の担当部署は魚貝の食材を調理に定められた数量を出す仕事なの」
「それも大変そうだわね」
「そうでもないんだけど」
「そうなの」
「動きが速くなって、同じ仕事量だと一時間早く終わるの」
「それはすごい」
「仕事よりも、人間関係で困っているの」
「どんなこと」
「魚貝準備の部屋と、肉の準備の部屋が一緒で、肉担当がパートが担当しているんだけど、最近そちらの仕事量が若干増えたのよ」
「それも大変ねぇ」
「それでその人は間に合わないと文句を言いながら、仕事しているわ」
礼子に「そんなマイナスの言葉を口に出して作業をすれば、間に合う物も、間に合わないんじゃない」
「そうよねぇ私が早くしろと言っても、アルバイト一人回してくれたらいいのにと言っていて、同じペースで文句を言いながら作業するのアルバイト一人つけたら、仕事が早くなる訳じゃない、それがさ、その分サボろうとするの、こちらまで気が滅入って作業に差し支えるわ、不平不満は誰にもあるんだけど、私は一人でほとんど終わらせているというのに、困った人だわ」
凉子は当然アルバイトを一人つけたら早くなると思いきや、意外な発言に愕然とした。
「礼子、なにそれ、まったく意味ないじゃん」
「そうでしょう。しかし、その人が休みの日に他の人が入って作業をすると、定時には終わるの。その人が手が遅いっていうことだわ」
「そうねぇ」
「さらに困っているのは、その人は何でもかんでも会社の責任、他人の責任にして逃げちゃうのよ
この前、さすがにその人、切れたみたいで仕事が終わって「やってられない」と言っているの」
凉子は「それだったら、会社にいる必要はないんじゃ」
「そうよねえ、私が言いたいわ、あなたのそのイライラで、周りの人が迷惑しているかわかっているの」
「礼子、そんな人が一人でもいれば、職場の調和を乱すことになるよね、それにそんなことでしか自分を表現できないなんてかわいそうだわ」
連鎖
礼子は言った
「この話はまだ続きがあって、今話した事が、私の前日の話」
「その後何かあった」
「おおありよ、嫌なことは続くものだわ、彼氏とデートだというのに気分が滅入って引きずっていたの」
「まだその彼と続いているの、すごいね」
「そうね、出会って三年になるわ」
「午前十一時に三宮で待ち合わせて、食事をしてから花鳥園に行こうと彼と一緒に店に入ったの、入った瞬間座っていた男の人が、大きな声で店員を呼んで文句を言っていたわ、こちらまで気分が悪くなるから、逃げるように店を出て、他の店で食事をしたわ」
「災難ねぇ」
「まだ続きがあるの、ポートアイランド線の三宮駅のホームで、前ふたり並んでいる後ろで待っていたんだけど、後ろから「前に行け」という声が、床の案内線を見ると二列に並ぶようになっているじゃない、余計なおせっかいで、言われる筋合いじゃないと思ったわ、だけど言っても気分が晴れるわけじゃないから、黙って前に行ったわ」
「その後はどうなったの」
「花鳥園でバードショーを見たり、花を見たり、インコにえさをやったりしてずいぶんと穏やかな気分になれたわ」
「それは良かったねぇ」
著者の大東 豊さんに人生相談を申込む
著者の大東 豊さんにメッセージを送る
著者の方だけが読めます