震災が私にもたらした能力《第6話》ー本当の悩みはそこにはないー
本当の悩みはそこにはない
何人もモニターをしているうちに、リーディング能力には自信がついてきた。
そこで潜在意識の書き換えは行わずに、リーディングのみでクライアントさんの相談に乗ることにした。
他人の過去世を見たり、悩みの相談に乗るのは楽しい。
クライアントさんにも
と言ってもらえるようになり、口コミでクライアントさんもどんどん増えていき、お金も取れるようになった。
でも。
私自身はそれで良いとは到底思えなかった。
今抱えている悩みが解消されても、また同じことが繰り返される。
悩みの核に触れていない。
今の悩みは、核に残っているわだかまりが一時的に表面に出てきたにすぎない。
核を取り除かなければ、何度も何度も同じようなことで悩み、苦しみ続けるだろう。
そういう漠然とした不安と言うか、確信があった。
このままでは駄目だ。
どうすればいいんだろう。
どうやってそこに到達できるだろう。
物理的に人を援助したり、耳障りの良い言葉で相手を安心させることはとても簡単だ。
近視眼的なものの見方をすれば、それが一番手っ取り早いし、相手もすぐに楽になれる。
けれど、援助されることに慣れさせてしまったら、それはその人にとってどうだろう。
やはり大切なのは、自分自身で立ち上がり前へ進むこと。
そして立ち上がるために、不安と恐怖に打ち勝つ心を手に入れることが大切だ。
この二つがなければ、たとえ今誰かの援助を受けて立ち上がれたとしても、またなにかあった時にすぐに倒れてしまう。
本当の意味で人を助けたいと思ったなら、するべきことは中途半端に人を依存させることではなく、2度とカウンセリングなど受けなくても済む、強く優しい心を手に入れる方法を互いに見つけていくことが必要なのではないか。
そのためにもっと出来ることがあるはず。
それを見つけることを諦めてはいけない。
そんなある日。
一人のOLさんがカウンセリングにやってきた。
特にこれといった相談内容はなく、なんとなくリーディングして欲しいということだったので、全体的に必要なメッセージを読み解くことにした。
リーディングと言っても、具体的に過去に何が起こったのかとか、今の部屋の状態がどうのとかそういうものが見える訳ではない。過去の感情記憶がイメージとして現れるのだ。私の場合。
そこで、気づいたことがあったのでそのことをいくつか彼女に話した。
すると、驚いたことに彼女は大粒の涙をボロボロと流し始めたのだ。
初めてクライアントさんの核に触れた瞬間だった。
彼女は30代の独身OLで、良い大学を出ていまのところ安定した収入もある。
表面的はとくに問題があるようには見えなかった。
ただ、過去にとても重い感情を引きずっていたことがあり、その感情を今も引きずっているのがとても気になった。
私の言葉に、彼女は自分の過去についてポツリポツリと話し始めた。
中学生の頃からつい最近まで重いアトピー性皮膚炎をわずらっていたこと。
父や母が自分に対して無関心だったこと。
不倫の恋をしていること。
話を聞いているうちに、いろいろなことが視えて来た。
彼女は両親の関心を引くために、無意識のうちにアトピー性皮膚炎という状態を自ら作り出していた。
愛されたい
自分に関心を持って欲しい
思春期の頃は、満たされない欲求を疾患という形で表面上に現していた。
そして成長してから彼女は不倫の恋に走る。その恋について彼女は
「彼は私じゃなくても誰でもいいんです」
と言った。
そのひと言がとても気にかかった。
彼が彼女に対してそういった訳ではない。これはあくまでも彼女の言葉だ。
では、なぜ彼女がそのような言葉を使ったのか。
それは、愛されない自分を肯定してあげたかったから。
彼女は、これまで「自分は愛されない」という思いを抱えながら生きてきたのだ。
愛されたくても、愛されなかった。
それでも頑張ってここまで生きてきた。
愛されなくても私はちゃんと生きてるよ。
彼女は誰ともなく、ひっそりと自分にそうやって告げながら生きてきたのだ。
だから、本気で愛されない恋愛を、本気で愛してくれない人を選んできた。
だって、愛されることを許してしまったら、いままで愛されなくても一生懸命に生きてきた自分が可哀想だもの。
でも、そばに誰かにいて欲しい。
結婚している人ならば、本気で愛してもらえない言い訳ができる。
「だって、相手は結婚しているんだもの。本気で愛されなくてもしょうがないよね」
って。
そうやって自分を納得させて、愛されなくても今まで一生懸命生きてきた自分を、自分なりの方法で精一杯慈しんで生きてきたのだ。
愛されたことがないから、愛されていると感じたことがないから、
愛されるということが分からず、愛されることが怖かったのだ。
未知の世界へ足を踏み入れるのを怖がるように、
彼女は愛されることを恐れていたのだ。
そのことに気づいて、彼女はさめざめと泣いた。
そんな彼女に
「自分にいつも“愛されてもいいんだよ”って言ってあげてください」
とだけアドバイスした。
それ以上のアドバイスはなにも必要がないのだ。
彼女は私のアドバイスに従って、毎日ぶつぶつとその言葉をつぶやき続け始めた。
それから数週間後、彼女から「彼とはもう会わないことにしました」と連絡があり、人間関係も改善されたととても嬉しそうなに報告してくれた。
この時、なんとなく自分のするべきことのきっかけがつかめたような気がして、私は次のステップに進むことにした。
彼女も私と同じように次のステップに進んでくれていることを望みながら・・・。
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