車いすテニスに出会って感激して、このスポーツを報道したいと思っていたら念願が叶って、気付けば世間に追い抜かれてた話 最終章:“有識者の方”

前話: 車いすテニスに出会って感激して、このスポーツを報道したいと思っていたら念願が叶って、気付けば世間に追い抜かれてた話 第11章:涙の再会

怒○○党で名前が

3度目の金メダルの瞬間も見られたし、家族で家族旅行もできたし、確かに満足感はあったけれど、ほとんど収入につながらなくて消化不良というか……。でも、ずっと追いかけてきた選手が本当にビッグになって、全国的にも世界的にも名前を知られるようになって、私の仕事ってきっともう終わりなんだなーなんて思いながら過ごしていた。

そんなころに友人たちから連絡があった。某テレビ局の某番組関係者が、私と連絡をとりたがっていると言う。そんな番組、見たことも聞いたこともなくて、事情がよく分からなかったのだが、連絡先を伝えてもらうことにした。そして、その後関係者から電話が入った。

用件は「怒○○党という番組の、新三大○○というコーナーでK選手について取り上げたいのだが、その際にアドバイスがほしい」というようなことだった。

その番組自体全く知らなかったので、まず番組について調べた。さらに新三大○○というのがなんのことが全くイメージできなかったので、それもいろいろと調べてなんとなく把握した。最初に連絡をくれた方は、下調べをされる専門の方らしく、数日後番組のディレクター(?)の方から改めて連絡が入った。

K選手のVTRを3本用意しようとしているのだが、2本分は用意できたがもう1本、何かネタはないだろうか、という相談だった。過去の試合のことなどを話したのだが、どうやら映像が手に入らないらしい。番組制作の方がふたりで我が家に来て、映像を見せてもらいながらいろいろとお話させていただいた。

その放送を見た方もいらっしゃると思うけれど、結局もう1本の映像を用意することができず、2本のVTRで放映された。3本用意したかったのに、こんなにすごい選手なのに映像がない! これでいいのか!? という問題提起をするためにも、あえて2本で放映しようという結論に達したようだ。

なぜ私のところに連絡が来たのか。K選手について詳しい方を探していたらしいのだけれど、K選手について少し文章を書かれた方などに話を聞いても、K選手の人となりがすごいという話で終わってしまう。車いすテニスの技術面のすごさについて話をできる人を探していて、それで私にたどり着いたということだった。思わず「よく私にたどり着きましたね」と言ってしまった。逆に言えば、それだけ車いすテニスに関して詳しいメディア関係者がいないということなのだなーと、内心ニヤニヤしていたのだった。

さらに、我が家で打ち合わせをしているときに、ディレクターさんのひとりの方の電話が鳴った。その方が電話に出て「今、有識者の方と打ち合わせ中なので……」。有識者の方だって。それって私のこと? ぐふふっ。なんか、それだけで今までやってきたことが報われたかも〜なんてまたニヤついていた。

私はテレビ業界のことはよく分からないけれど、私の話を聞いて、そのうえで映像を編集したりするのかと思ったら、もうほぼシナリオも映像もできあがっていて、それに対する確認のような感じだった。ナレーションも時間に限りがあるため、「うーん、そうじゃなくて、こうなんだよねー」と思うような点もかなりあったけれど、「万人が見て理解できる範囲でまとめる」感じらしく、本当に知っている者としてはちょっと表現が気になるところもないこともなかった。ただ、確かに、そんなマニアックな技術うんぬん言われても、テニスにそれほど詳しくない視聴者には必要ないのだろうなと思った。

そんなわけで、2013年の4月のある日、私の名前(旧姓だけど)は全国区で放映されたのだった。名前だけなのに、小っ恥ずかしくてなんだか直視できなかったなあ。


有識者になれた

私、テレビなどで「○○に詳しい□□さん」というフレーズにすごく憧れていた。何か事があると、どこで探してくるのか、「○○に詳しい□□さん」が紹介されて解説していたりする。どんな分野でもいから、「○○に詳しい□□さん」なれたらいいなあ、なんて子供心に思っていたのだけど、今回の新三大○○のおかげで、私も「○○に詳しい□□さん」の仲間入りになれたかな、と思った。

10年見続けていたものは、少しずつ私の中に蓄積されていたんだなと改めて感じさせてくれた。

ただ、その後もK選手はいろんな番組に出演されていたり、各局で特集の番組が放送されたりして、私がライター業から離れて子供たちを戯れている間に、世の中は私を追い抜いていったんだな、と感じることも増えていった。

テレビ等でK選手が取り上げられるのは、とてもうれしいことなのなだけど、でもね、でも、K選手や車いすテニスという競技の本当のすごさは、実はテレビだけでは伝わらないじゃないかと思っている。某テレビ局のディレクターの方々も、さんざんK選手の映像を見てきていたはずなのに、例えば「車いすテニスって、ブレーキはどうしてるんですか?」「ラケット持ちながら、車いす漕いでるんですよね? どうやって持ってるんですか?」とか、そういうレベルの疑問を持っていらっしゃった。ねー? 不思議でしょー? 気になるでしょー? 私が以前テニス誌で特集したK選手の連続写真を見せたら、本当に驚かれていた。

動いている映像はインパクトもあるし、映像でしか伝えられないことも確実にある。だけど、私としては、紙媒体で、もっとじっくり、もっとマニアックにK選手のすごさを徹底解明したものが世に出てきてほしいと思う。それを私がやれたら、最高だけど!!


最後に

ここまで書くのにずいぶん時間をかけてしまったけれど、最後まで読んでいただきありがとうございました。

ご迷惑がかかるといけないので、選手名は伏せましたけどきっとバレバレですね! 明日からUS OPENです。みなさんもぜひぜひ応援お願いします。ちなみに、車いすテニスの女子も、現在日本人選手が世界ランキング1位の座に就いています。こちらの選手も要チェックですよ〜。

著者のSakai Tomokoさんに人生相談を申込む

著者のSakai Tomokoさんにメッセージを送る

メッセージを送る

著者の方だけが読めます

みんなの読んで良かった!

STORYS.JPは、人生のヒントが得られる ライフストーリー共有プラットホームです。