オトンの話。

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オトンは4年前に死んだ

わたしはオトンと喧嘩していた
何でかは忘れたけど何日も口をきいていなかった
わたしはオトンを避けていた

当時高校生のわたし
思春期によくあるそれだと思う


オトンのことは嫌いだった
頑固ですぐ怒鳴る怖いオトン


その夜わたしは家でテレビを見ていた
当時のバイト先がファミレスでテレビでそのファミレスの情報が流れていたことも憶えてる
わたしはテレビの情報に口を出しながらなんでもない普通の平日の夜を過ごしてたんだ



電話がなった



丁度お風呂から出たオカンが電話にでた


電話を切ったオカン
「パパが病院運ばれたらしいから行ってくる」


心配そうだった


けど、気はしっかりしていた


オトンは糖尿病持ちで何度か入院していた

だからわたしは今回もその程度だと思って気にしてなかった

病院に向かったオカンとお姉をよそに
わたしは部屋に引きこもって携帯いじり

しばらくしていきなり部屋のドアがあいた

お兄だった

「オトンが死んだ」
そう言った

言葉が出なかった
何も言えなかった

家族でオトンが待つ病院へ向かった

オトンの会社の人が既にいた
挨拶をする余裕もなかった

病院の入り口には先に病院に向かったお姉がいた

わたし達を見て無言で歩きだす
わたし達はそれに無言でついていく

お姉の目は散々泣いた後だった

オトンのいる部屋についた
オトンの眠るベッドが見えた
わかってるけどそこで眠るのがオトンじゃないことをまだどこかで期待してた
見るのが怖かった
受け入れる準備なんてできてなかった

それでも勇気をだしてベッドに近づく

オトンだった
寝てるみたいだった

オカンがオトンの頭抱きしめながら泣いてた

そしてわたし達に気づいて
「パパ死んじゃった」
泣きながらそう言った

オカンもお姉もお兄も私も妹もおばあちゃんも家族みんなで泣いた

わたし達よりはやく来ていた病院のそばに住む叔父さん(オトンの兄さん)と従兄弟も泣いた


みんなでひたすら泣いた

死因は不整脈?なんかそんな感じ

46歳
気の弱いオカンに子供4人残して
はやすぎだろって怒ってやりたかった
妹まだ中学生
娘の花嫁姿も孫の顔も楽しみ全部残して逝ってしまった

それからオトンの葬式が終わるまでわたしは一切眠れずずっとオトンを見てた
気持ちは落ち着いたつもりでも顔を見ると涙がでる
もうすぐこの顔も体もなくなるんだって思ったら目に焼き付けておきたかった

「一番喧嘩してたのにね」
オカンに笑われた

わたしは後悔していた
オトンに優しくできなかったことに

「あんたはオトンと同んなじで頑固で短気だから喧嘩になるんや。似たもの同士」
お姉にも笑われた

顔はオカン似のわたし
性格は完全オトン

短気で頑固で喧嘩っ早くて
オトンとの喧嘩はなかなか派手だった

葬式も終わりオトンの荷物整理
オカンから
「これ、オトン持ち歩いてたんやで」

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